囚われの縄を解かれたような（すがすがしく濁りのない顔）

何か希望を持ちだしたように顔の表情まで生々して来た

動物的な生気を放って黒々と輝くドングリ眼（まなこ）

眉の辺りに元気を深く含んだ顔

娘の顔は、さしかける古い森林の深いどす青い陰を弾ね返すほど生気に充（み）ちていた。

胸に密かな恋心を秘めている青年の苦しさというような顔

誰にも代えがたい人

気触れる

新芽の匂うような本能的なざわめき

（開けてはいけないと感じる不吉なガラスビンを前にして起こる恐怖と好奇心の葛藤）息を詰めたまま金属製のねじ蓋に手をかける。蓋は強く締まっている。このおかしな感じ、まるでガラス壜ではない何かをこじ開けて、口で言えないほど不吉なものを解き放とうとしているような感じはどこからくるのだろう？ 　フレテハイケナイ――カンガエテハイケナイ――。 　声がまた聞こえる。頭のなかではなく、天井のあたりから降ってくる気がする。キョトキョトと周囲を見回す。部屋の空気が重く脈打っている。ベッドも衣類も壁もどくんどくんと脈打っている。蓋にかけた手が震える。震えが背筋を伝い、正座したまま上半身が他愛なく揺れる。《…略…》頭のなかにも部屋のなかにも動悸が響き渡る。嵐のようなその音のほか何も聞こえなくなる。まるで自分自身の心臓の内部にいるみたいだ。視界全体が拍動する。どくんどくんと叫ぶ。イケナイ、イケナイ、イケナイ、イケナイと叫ぶ。頭が割れる！　壜から手を離し、両側から強く 頭蓋 を挟みつける。

大げさに目を開けて驚いたふりをする

京子の顔には、犬のような恐怖と驚愕だけがあった。

彼の顔は全くの無表情であった。あるいは少なくとも表情をする顔の筋肉を奪い去られてしまったもののようであった。

復讐的な冷笑

晴れやかな、充足した顔