腕組みをして考え込む。

ああ、わかりかけた、いや、まだ、……などと頭脳に走馬燈がくるくる廻っていた

最高速度で頭を回転させる

窓から月明かりが四角く映るベッドの中でそれを聞きながら、私は私なりに考えていた。 　目が 冴えていた。心も冴えていた。 　私の思考は暗やみと月明かりの粒子に混じって、このように繰り返されていた。

頭が痛くなるほど考えたけれど、わからなくてやめた。

唇を噛み考えを巡らせる。

アメリカをなくしたコロンブスみたいにドッカリとそこへ座ると、茫然自失のアンポンタン状態に陥ったまま、永久に口が利けなくなってしまったのだ。

（運命を決める気まぐれな条件の）幅広い背を見たように思った。

俺はすとんとそう思う。りんごが地上に落ちるみたいにほとんど普遍的に自動的に、そう思う。

自分は自分の自由を享楽していることであろう。伸子には、夫をつれて来て、この悦びや鮮やかな自然の印象を分ちたい気持が起らなかった。彼女の気持は逆であった。彼女は、この山々を、この矮樹林を、自分だけで眺められるからこそ、嬉しいのであった。傍から誰にも妨げられず、心全面で眺め、味い、感覚する、この快さこそ、実に彼女に、久しく失っていた自由の蘇生を感じさせるものなのであった。