春の雲が西山の入陽をうけて、 茜色 に染まっている。

夕日を照りかえしてどこまでも続く山脈

町はすでに青い影の中にすっぽりと飲み込まれていて、でも湖だけがぽっかりと空の赤を映している。あちこちの斜面に、ピンク色の夕もやが湧き立ちつつある。人家からは夕餉の煙が何本も狼煙のように、細く高くたなびいている。町の上空を舞うスズメが、放課後の埃みたいにランダムにきらきらと輝いている。

（西日に照らされる）広田さんの顔も金と銀が混じったようなその光に照らされていた。

数キロ先まで広がる開発地の建造中の建物一つ一つに目を這わす。朝と夕、日光がかすかな赤味を帯びているとき、それらの輪郭は遥か遠くの山々の稜線と重なり、神々しく映るのだ。

空を見上げると赤と紫が妙に美しく混ざり、この空とおなじような色のビー玉を子供のころに持っていたことを思い出した。

品川へ向かうのは二度目であるのに、日が沈んだ後だからか、まるで知らない土地を走っているよう

墨汁みたいな夜が、私たちを飲み込みそうになっていた。

繻子（しゅす）のように光って濡れている夜

そらのてっぺんなんかつめたくてつめたくてまるでカチカチのやきをかけた鋼（はがね）です。 　そして星（ほし）がいっぱいです。