猫が咽頭を鳴らすようなエンジンの音を立てて

（エンジンを切る）鍵を回した。 　車の振動が止み、途端に車内が静かになる。

キイをさしこんでまわしてみると、エンジンはすぐに気持の良い音を立てた。

トラクターのトクトクトクというエンジン音

八つ当たりのようにエンジンを空ぶかしさせる

旧式の電車はゴトンと一つ後方に揺り戻して止まった。

汽車はだんだんしずかになって、いくつかのシグナルとてんてつ器（き）の灯（あかり）を過ぎ、小さな停車場（ていしゃば）にとまりました。

フットブレーキを踏むたびに小型のニワトリを絞め殺しているような悲痛な音がする

信号で停止する大型トラックが、晩年のベン・ウェブスターのテナートーンを思わせる、かすれたエアブレーキの音を立てた。

車が速度を緩める。合流してくる別の車を割り込ませてあげている。

クーラーの送風目盛りを「５」から「３」に下げ

蛍光灯の紐を引っ張る。

台所の電気をぱちんとつければ蛍光灯が台所の隅々を浮かび上がらせ

スイッチを入れると、地の底から湧き上がるような低い唸りが一斉にあたりを被った。背筋が冷たくなるような音だ。そして次に、何万という鳥の群れが翼を広げるようなパタパタパタという音が続いた。《…略…》七十八台のピンボール・マシーンが電気を吸い込み、そしてそのスコアボードに何千個というゼロを叩き出す音だった。音が収まると、あとには蜂の群れのようなブーンという鈍い電気音だけが残った。そして倉庫は七十八台のピンボール・マシーンの束の間の生に満ちた。一台一台がフィールドに様々な原色の光を点滅させ、ボードに精いっぱいのそれぞれの夢を描き出していた。

（エンジンを切る）鍵を回した。 　車の振動が止み、途端に車内が静かになる。

艪は梭（ひ）のように波を切り破って激しく働いた。

前方からジープがさッとそれ自体、一つの光線の束になって躍りかかるように走ってきた

吹き飛ばされるかのように、後ろへ通り過ぎていく建物を目で追いながら

遠くの空に飛行船が浮かんでいた。 　風を押して、ゆっくりと移動してゆく。《…略…》小さなライトを点滅させて、飛行船は、淡い月影のように空をゆくのだった。

奮発してビジネスクラスを取ったので、驚くほど広々とした空間を所有していた。

まるで舐めたくなるようなディスプレイ

アパートのベランダでは何枚かのシャツが置き去りにされた孤児のようにビニールのロープにぐるぐると巻きついてしがみついていた。

お陽様に照らされている縁側の上に、送って来た蒲団を干していると、何故（なぜ）だか父様よ母様よと口に出して唱いたくなってくる。

ジ……と歯を噛（か）むようなミシンの音がしている。

剃刀の刃先が皮膚に食い込んだ瞬間、ピリッとした痛みが走る。首の右側に血の筋ができた。