心のアルバムを開く

胸の中に抱いていた写真を破いて捨てる

（思い出になる）新しいことが始まっていた。いつのまにパパとママを思い出の霧の中に置き去りにして。

過去が華々しいロマンスのいくつかで飾られる

（いく度と回想されることになる運命の人との最初の出会い）この出会いの長い夜は、特別なものとして、この後、何度となく回想されることとなったからだった。 　最後に名残惜しく交わした眼差しが、殊に「繊細で、感じやすい」記憶として残った。それは、絶え間なく過去の下流へと向かう時の早瀬のただ中で、静かに孤独な光を放っていた。彼方には、海のように広がる忘却！　その手前で、二人は未来に傷つく度に、繰り返し、この夜の闇に抱かれながら、見つめ合うことになる。

（記憶の混乱）どれが伝聞で、何が本当に自分の経験なのか、まったく区別がつかないんです。想像しただけの場面を、現実だと思い込んでいるんじゃないか。反対に、実際に目にしたはずのことを、錯覚と勘違いしているのかもしれないって

（ラジオから子供のころ聞いていた曲流れてきたが）懐かしいとはまったく思わなかった。むしろ不快な思いが胸の中にこみあげてきた。それらの曲が彼女に思い出させるのは、思い出したくもない種類のものごとばかりだった。

卑劣な行為の感触がいまでも両手にしっかり染み付いている。どれだけ洗っても落ちない。死ぬまで落ちない。もう耐えられない。

彼は右肘をテーブルにつき、頬を触る。ずっと昔の思い出から、つい先日の記憶までをもう一度、確かめるような横顔だった。

真っ白な新聞を見るように、昨日という一日が、きれいに記憶のなかからかき消える