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室内のようすの比喩を使った文章の一覧(209件)
そこに人の寝ることのない広い畳は、夜明け前の冷気のなかに、はねつけるような肌ざわりをしていた
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
女の身も自分の身も無論室中のものは椅子から、帷(とばり)から、衣服から、何から何までが、油の中へ漬けたように、しっとりとなって、湿った重い匂が、胸の呼吸を抑え付ける。
永井荷風 / ふらんす物語 amazon
窓からは一昔前のポーランド映画みたいにうす暗い光がさしこんでいた
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
棚の半分は空っぽで、雑誌は殆んど全部返品用に紐でくくられていた。最初に見たときより店内はもっとがらんとして寒々しかった。まるで海岸に打ち捨てられた廃船のように見えた。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
糸を繰る座繰りの音が、驟雨のようにあちらこちらからにぎやかに聞こえる
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
喘息患者の息づかいのような電気ストーブの小さな音
丸谷 才一 / 年の残り amazon
部屋の中の空気がなくなりでもしたように、急いで扉を開く
吉行 淳之介 / 砂の上の植物群 amazon
クレーンが動きはじめると、犬のうなるような低い音が聞こえてくる
灰谷 健次郎 / 太陽の子 amazon
暦をめくるように、季節で貌を変える庭木や下草
向田 邦子 / 思い出トランプ amazon
ウナギの寝床のように細長い造りの家
内田 康夫 / 釧路湿原殺人事件 amazon
ストーブが獣のうなり声みたいにウーウーと鳴る
石森 延男 / コタンの口笛 第2部 amazon
絵巻物にでもあるような池泉が、、床から平坦地一面にかけて掘りめぐらされ、鯉が遊弋する
今 日出海 / 天皇の帽子 amazon
陽射しが弾けて、バルコニーが王冠みたいに光る
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
室内自体が音を食べている生き物みたいに、あらゆる音を吸い込んでいく
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
地虫の鳴くようなスチームの音
日野 啓三 / 抱擁 amazon
歯軋りのような空調の音
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
壁に窓用としてくり抜かれた空間にぽっかりと夜が浮かんで、風化した髑髏(どくろ)のよう
中島 みゆき / 泣かないで・女歌(おんなうた) amazon
青蛙が鳴くみたいに金庫の錠前がギイギイと音を立てる
ジュール・ルナール / にんじん amazon
生牡蠣を見るような、すべてが薄青く薄白い半透明さの室内がひっそりと静まり返る
永井 龍男 / 青梅雨 amazon
鍵のあく音が、氷が寒夜にひび割れたように響きわたる
志茂田 景樹 / 月光の大死角 amazon
欠けた歯の洞(ほら)のように我が家の窓だけが暗い中に取り残されている
森村 誠一 / 深海の迷路 amazon
鍋墨をぬったような真っ黒な室内が、古い写真の印画に似て、朦朧と浮かぶ
獅子 文六 / てんやわんや amazon
音を閉じこめるために作った刑務所のような巨大なスタジオ
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
猛獣のように唸り喚く数十の輪転機
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
天井の明かり取りから落ちてくる、淡い木漏れ日のような琥珀色の光
森 瑤子 / 傷 amazon
殺風景な、窓のないコンクリートの棺桶のような部屋
泉 優二 / ブラインドコーナー amazon
劇場の奈落のように、裸の壁が裸の電球に照らされた、殺風景な通路
岩田 豊雄 / 獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 amazon
天井から美しい淡青色の照明が滝のように降ってくる
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
封建社会の遺物らしい城郭めいた真っ黒い門が、おどかすようにのしかかる
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
庭ごしらえが城のように豪華の料理屋
室生 犀星 / 舌を噛み切った女 (1957年) amazon
ホオル全体がどこか水族館じみて、ガラス張り水槽の明るさがある
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
走らせばひなびた鈴のような音を立てる杼(ひ)
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
長く使っていない部屋の空気が、雪の冷たさを閉じ込めておいたように背筋をひんやりさせる
内田 康夫 / 風葬の城 amazon
それでもまだ光は、簡単に消すことのできない古い記憶のように、どこからともなく忍び入ってきた。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
時刻は昼らしく、天井の明かりからまっすぐに日が差し込んでいた。光は何本かの太い柱となって床から直立し、その中で細かな塵が舞っているのが見えた。その光の柱は刃物で切り取られたようにくっきりと鋭角的で、南国の太陽の激しさを部屋の中に送り込んでいた。光のない部分は暗く冷やかだった。そのさまあまりにも対照的だった。まるで海底にいるみたいだな、と僕は思った。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
ベランダの窓を開ける。シャワーの飛沫そっくりの埃が流れ出ていく。朝の町は眩しくて濁って見える。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
家内を歩く足音が水底のように冷めたく心の中へも響いて聞える。
水上 瀧太郎 / 山の手の子「俤 (百年文庫)」に収録 amazon
地下倉のなかに夕暮は微細な霧のようにしのびこんでくる。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
晴れた天気の光の反射が、液体のように、みずみずしい閑寂の空気を室内に湛えている。
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
狭い小屋の空気は黒く悄然として死んだようである。
長塚 節 / 土 amazon
初夏の陽光は@略@金魚の硝子箱を横から照らして、底の玉石と共に水を虫入り水晶のように凝らしている。
岡本 かの子 / 花は勁し amazon
硝子戸はまるでカアテンを吊したように雨で白く煙っている。
林 芙美子 / 女性神髄「林芙美子全集〈第6巻〉女性神髄・女の日記 (1952年)」に収録 amazon
窓枠と、隣の軒とで切り取られた、白っぽい長方形の空が、まるで刑務所の延長のように見えた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
窓には青い空の一片が水のように見えた
藤森成吉 / 雲雀 amazon
西日が燃える焔のように狭い家中へ差し込んで来る
永井 荷風 / すみだ川 amazon
ズボンもプレスがされていて、そこに窓から差しこんだ黄昏の陽が染みのようにあたっていた。
遠藤 周作 / 影法師 amazon
夏の月光が洪水のように蚊帳の中に満ちあふれた。
太宰 治 / 斜陽 amazon
暗い部屋の中に、明るい光が平たい板のような形に射し込んできている。雨戸の隙間から射す朝の光だ。
吉行 淳之介 / 風景の中の関係 amazon
雨戸の隙間が、赤い色ガラスのような光をはなち
安部 公房 / 他人の顔 amazon
重なった花びらの隙間から洩れる光が眼脂(めやに)みたいだ
黒井 千次 / 群棲 amazon
掃除の行きとどいた朝の郵便局の光線は、海の底のように静かで、平和であった。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
窓から流れこむ斜光線の明るい小川
開高 健 / 裸の王様「パニック・裸の王様 (新潮文庫)」に収録 amazon
水のような夕やみが、ひたひたと水車小屋のなかにみちてきた。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
窓枠で四角く区切られたそんな光景はチカチカ光りながら、フィルムの切れかけた映画の一とコマをおもわせた。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
硝子戸越しに見る戸外は、風があって樹木が揺れているのに、いやに静かで、水族館の硝子越しに見る水の中の世界のようでした。
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
狭い庭に雑然と植わっている本は茂り放題に茂って、長いこと床屋に行かない頭のようになった。
小沼 丹 / 枯葉「小沼丹全集〈第3巻〉」に収録 amazon
隧道(トンネル)のような庭樹の間
瀧井 孝作 / 無限抱擁 amazon
暝目した美女のようなあでやかさをもって、黒光りする板の間に神々しく照り輝きながらじっと身を横たえている。
中山 義秀 / 厚物咲 (1948年) amazon
チューリップが虹のようにゆれる庭
松谷 みよ子 / はと「黒い蝶・うさぎのてぶくろ ほか (松谷みよ子全集)」に収録 amazon
荒れた狭い庭の柿の木には霜を置いたような小粒な渋柿がいくつか実っていた。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
細く扉を開け、素早く外に出て、また扉を閉めた。社交ダンスのステップを踏んでいるように。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
庭木も美しく刈り込まれている。あまりにも丁寧に刈り揃えられているせいで、いくつかの樹木はプラスチックの造り物みたいにさえ見えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
四月も半ばだというのに、部屋は冷え冷えしていた。冬のあいだに浸み込んだ冷たさがまだ居座っているようだ。その部屋がそこを訪れる誰をも歓待するまいと堅く心を決めてから、ずいぶん長い歳月が経過したように見えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
装飾というものがない、狭い正方形の部屋だった。申し訳程度の小さな窓が庭に向かって開いている。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
内側からしか鍵のかからない牢獄のようだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
まるでモデルルームだ、と彼女は思った。清潔で統一感があって、必要なものはすべて揃っている。しかし無個性でよそよそしい、ただのはりぼてだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
カーテンの隙間から光がくさびのように差し込んでくる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
店の隅に置かれたゴムの木が目についた。それはいちばん目立たない場所に押しやられ、見捨てられた孤児のようにそこで身をすくませていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
部屋に吹き込んでいた風が急にやみ、カーテンが下に垂れた。作業の途中で何か大事な案件をふと思い出した人のように。それから少しあって、気を取り直したように再びゆっくりと風が吹き始めた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
風の強い冬の夜には、明かりのついた窓は特別な優しい温もりを獲得する。天吾は光の灯った窓をひとつひとつ順番に目で追っていった。小さな漁船から夜の海に浮かんだ豪華な客船を見上げるように。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
ノックの音がひとしきり均質に続いた。管楽器のブレスのような束の間の休止があり、それから再び同じリズムでドアがノックされた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
段を踏みしめる度に、階段の上の橙色の電球は、線香花火の火のように細かく震える。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
重い布がまくれると、朝の光が線となってこぼれ出した。「希望」というものをもし絵に描くのなら、こんなふうになるのではないかと思われるほど、光は薄暗い部屋をまっすぐにつきぬけていった。
林 真理子 / 京都「最終便に間に合えば (文春文庫)」に収録 amazon
脱ぎ捨てては無造作に積み重ねられた服の山があちこちに蟻塚のように林立し、かろうじて人の歩けるケモノ道のようなスペースにも、バッグやら小物やら本やら紙屑やらが散乱して、電話なんぞが鳴った日にゃ障害物レースのように、モノを飛び越えて走らねばならん。そして女王様は不器用なので、たいていモノに蹴躓き、蟻塚を倒し、本や紙屑を踏み散らすワケで、結果、家の中はますます乱雑を極める一方なのであった。
中村 うさぎ / 浪費バカ一代ショッピングの女王2: 2 amazon
雪の頂から星がひとつ下がったように、入相の座敷に電灯がつく。
泉 鏡花 / 眉かくしの霊「高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫)」に収録 amazon
ホール全体が水族館じみて、ガラス張り水槽の明るさがある
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
綺麗な満月だ。じっと見つめていると、いかにもこの病室へ優しい使者たちによる迎えが来そうに思えるほどだった。
羽田 圭介 / スクラップ・アンド・ビルド amazon
居間の壁には大きな棚が取り付けられていて、まるでバッグ屋のショーウィンドウのように鞄が並んでいる。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー 角川文庫 amazon
風で揺れるカーテンが、室内を舐める舌のように、はためいている。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
微かに青色を帯びた砂利が敷き詰められ、所々飛び石がある。神社みたいだ
中村文則 / 教団X amazon
ホテル『Publikum』のロビー。巨大なシャンデリアが高い天井から降りている。地震が来たら落ちるんじゃないか? あの無数のガラスはよく割れ、よく刺さりそうだ。危険を不機嫌に溜めこんでいる。
中村文則 / 教団X amazon
銀色のドアが、自分を不機嫌に迎え入れるように開いている。
中村文則 / 教団X amazon
自動扉が、鼻息を吐き出すかのような音とともに開いた。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
新幹線は止まったが、なかなか扉は開かず、水中で息を止め、吐き出すのを我慢するかのような、間がある。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
扉が静かに、素早く開く様は、昔、映画で観た宇宙船の内部を思わせた。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
二号車の扉が開いた。威勢の良い溜め息とでもいうような、噴射音が響く。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
私の首もとでは松籟(しょうらい)のように、古い都のホテルの冷房装置の音が鳴りつづけていた。
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
赤茶けた畳には煮しめたような汚点(しみ)がついている
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
一晩じゅう、かけっぱなしの扇風機が動力が弱いせいか空缶を引きずるような音をたてて鈍くまわっていた。
林 芙美子 / ボルネオダイヤ「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
トンネルのような廊下
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
洗面台の水栓が急に息をついたようにがうっと風を吸っている。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
その家は鰻の寝床のように奥深い構えで
林 芙美子 / 風琴と魚の町/清貧の書 amazon
工場の一隅(いちぐう)の、鳩の巣のように出来ている吊り二階
宮地嘉六 / 煤煙の臭い
薄暗い玄関が水の中のように感じられる。
黒井 千次 / 群棲 amazon
脳細胞のように襖(ふすま)で仕切られた座敷
筒井 康隆 / 夢の木坂分岐点 amazon
腫物のようにぶわぶわした畳の上に
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
六畳の部屋が三つ、鳥の箱のように並んでいる。
林 芙美子 / 清貧の書 amazon
時代のついたその畳には、彼の背中を蒸すような黄色い古びが心まで透っていた。
夏目 漱石 / 道草 amazon
瓦斯(がす)の反射で、鏡のように光る廊下
小杉 天外 / 初すがた amazon
部屋自体が、それこそうどんの茹(ゆで)釜ではないかと思われるほど暑い地下室の従業員食堂
曽野 綾子 / 遠来の客たち amazon
風も凪いで、広庭の中は風景画のように森としていた。
林 芙美子 / 山中歌合「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
別荘番の爺やがいても、主人も主婦もいない家の中は、要(かなめ)の弛(ゆる)んだ扇のようなものだった。
獅子 文六 / 胡椒息子 (1953年) amazon
わが家の黒門は、固くしまって扉に打った鉄鋲(てつびょう)が魔物のように睨んでいた。
水上 瀧太郎 / 山の手の子「俤 (百年文庫)」に収録 amazon
四囲は水族館の水槽の底のように暗く沈んでいった
林 芙美子 / 女性神髄 (1949年) amazon
ビールの缶やらインスタント食品の空箱やらあたりかまわずつっこんだ煙草の吸殻やら、そんなものが部屋じゅうにまるで吹きだまりか何かみたいにちらばっていて
村上 春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート amazon
桝(ます)の底のような営庭
立野 信之 / 軍隊病「軍隊病―兵士と農民に関する短篇集 (昭和4年) (日本プロレタリア作家叢書〈第5篇〉)」に収録 amazon
まわりは分厚いコンクリートの壁にかこまれているために、なかに坐るとまるで塔か煙突の中にいるようだ。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
まるで妻の声のようなそのやさしく粘り気のある音
筒井 康隆 / 夢の木坂分岐点 amazon
この地階はいったい地下何階にあたるのだろうか。少なくとも四階や五階ではない。もっと深い谷底の如き階だ。
筒井 康隆 / 夢の木坂分岐点 amazon
家の中に若い美しい女が居る事は、いつもストオブに火が燃えているとおなじように、心が和んでよいものだ
森田 たま / もめん随筆 amazon
師匠の家の古い紙箱のような屋根裏
川端康成 / 雪国 amazon
未熟な少女のように@略@光沢なく点っている。
葛西 善蔵 / 悪魔「葛西善蔵全集〈第1巻〉 (1974年)」に収録 amazon
谷間のようにくらいへこんだ部屋
野間 宏 / 真空地帯 amazon
トーチカのように作られた円形の小部屋
長谷川 四郎 / 鶴 amazon
中央には岩のようなシュミネがあり
林 芙美子 / 浮雲 amazon
沈みかけている秋の日を斜めに受けてその一部分が網の目のように透いていた。
伊藤 整 / 氾濫 amazon
座敷は雨戸がなく直接冷やされていた体(てい)で、室内は冷蔵庫であった。
瀧井孝作 / 積雪
まるで噴き井戸から無限に溢れる音のように、ラジオはよくお喋りしている。
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
百姓家らしい古畳の二階@略@狐狸の棲家のようであった。
川端康成 / 雪国 amazon
太い欅(けやき)の柱が蛍火(ほたるび)のように肌を光らせている
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
洗い流したように古びた畳の色
林 芙美子 / 魚の序文「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
だだっ広い家の踏めばぶよぶよと海のように思われる室々(へやへや)の畳
水上 瀧太郎 / 山の手の子「俤 (百年文庫)」に収録 amazon
日はうららかに川面を射て、八畳の座敷は燃えるように照った。
谷崎 潤一郎 / 刺青「刺青・秘密 (新潮文庫)」に収録 amazon
家も豚小屋のように手狭なものであった。
徳田 秋声 / 縮図 amazon
牢屋のような押入れの中でひとり寂しく息をひきとるのは御免だ。
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
まるで鶏小屋みたいですもの
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
近所で、ラジオがやかましく煎りつくように鳴っている。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
玄関のしきり障子は引手から下があらめみたいに裂けて
幸田 文 / 流れる amazon
電球の球は堅い蕾のように@略@光沢なく点っている。
葛西 善蔵 / 悪魔「葛西善蔵全集〈第1巻〉 (1974年)」に収録 amazon
白熱瓦斯の下に、真白に塗り立てた娘が、石膏の化物のように坐っていた
夏目 漱石 / 三四郎 amazon
真夏の海岸のように陽にさらされた窓辺
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
貝殻のようにぴたりとかたく蓋をした御門
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
鍵のように折れ曲った廊下
平林 たい子 / 施療室にて「こういう女・施療室にて (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
襖をたてると昼間でも黄昏のように暗い部屋だった。
林 芙美子 / 河沙魚「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
タア子を、火薬が導火線を逃げるように@略@室の外に出し、障子をピシャンと閉める
伊藤 整 / 火の鳥 (1958年) amazon
しばらくすると窓がするすると開いた。人の口のようにかっきりと穴があいた。
平出 修 / 逆徒 amazon
動物の檻のように並んだ個室
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
寄宿舎のように長い廊下が一本、横に貫いていて
林 芙美子 / 清貧の書 amazon
家そのものが一つの押入れのようで、戸を開けて入って来たとたん、黴臭い匂いがむっと立ちこめている。
上林 暁 / 聖ヨハネ病院にて amazon
高い天窓からの光が水槽を霧のように白く光らせ
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
電気の円い硝子笠が、雲の中に浮いた月のように見えた。
林 芙美子 / 晩菊 amazon
畳の目も、傷んだところは藺草(いぐさ)が切腹して、なかから、キビガラの芯みたいなのがはみ出していた。
向田 邦子 / 耳「思い出トランプ (新潮文庫)」に収録 amazon
車両の自動ドアが開くところだった。ぷしゅう、と空気が漏れる音がする。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
ニの部屋はものが少なくきちんと片付いている。おしゃれなインテリアは皆無で、では無機質な部屋かといえばそうではなくて、たとえるなら妻に先立たれて一人でなんでもできるようになったおじいちゃんの部屋、もしくは入所十年目の模範囚の部屋といった感じだ。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
妙に丁寧に、旅館の女将がふすまを閉めるときみたいに両手で窓を閉めた。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
お菓子のパッケージって、ものすごくカラフルなのだ。赤、黄、青、緑、色分けされずらりと棚に並べられたポテトチップスは、肉眼ではただ並んでいるだけなのに、写真のバックになると、オモチャの王国の城壁みたいに、チャチでけばけばしくて、おもしろい。オモチャの城でVサインをしているあたしと綾菜。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
高い窓からルーベンスの絵のように差しこんだ日の光が、テーブルのまん中にくっきりと明と暗の境界線を引いている。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
ドアをノックすると、驚くほどよく響いた。所詮は突貫工事、建物全体が大きな太鼓のようになっている。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
壁は暖かい色の明かりのせいで、うすく焼き色のついたバターみたいな色をしている。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
診察室をのぞくことができた。先生も看護婦もいなかった。そこは放課後の理科室のように薄暗かった。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
この家のブザーを聞くのは初めてだったので、わたしはひどくびっくりしてしまった。それは動物の悲鳴のように、乱暴に響きわたったのだった。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
丸い円盤のような電灯
中島 京子「小さいおうち (文春文庫)」に収録 amazon
四角い光を切り取って据えた様な縁側の明るさ
高樹のぶ子 / その細き道(遠すぎる友) amazon
四角い光を切り取って据えたような縁側の明るさ
高樹のぶ子 / その細き道(遠すぎる友) amazon
畳の上を歩くとバリバリバリとニカワをはがすような音がする程、膏(あぶら)足
長与善郎 / 竹沢先生と云う人 amazon
どこかで布団を叩く音が鞭のように聞こえる
高樹のぶ子 / その細き道(遠すぎる友) amazon
ミラーボールの幾筋もの光が埃と煙に白んだ宙を、明るく透かす矢となって突き抜ける
松本侑子 / 植物性恋愛 amazon
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