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健康・体調・病気の比喩を使った文章の一覧(203件)
ねっとりと布が傷に張りついているような気持である
井伏鱒二 / 黒い雨 amazon
雨にうたれた猿のように疲れている
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
倦怠の色が全身を薄雲のようにつつむ
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
彼の寝ている姿は深手を負った小動物を思わせた。横向きにぐったりと寝そべり、点滴の針のささった左腕をだらんとのばしたまま身動きひとつしなかった。やせた小柄な男だったが、これからもっとやせてもっと小さくなりそうだという印象を見るものに与えていた。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
この男はもうすぐ死ぬのだということが理解できた。彼の体には生命力というものが殆ど見うけられなかった。そこにあるものはひとつの生命の弱々しい微かな痕跡だった。それは家具やら建具やらを全部運び出されて解体されるのを待っているだけの古びた家屋のようなものだった。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
地球を頭に支えたように頭が重い
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
鍋でもかぶったように頭が重い
新田 次郎 / 芙蓉の人 amazon
鼻緒ずれの痕がひどい霜焼けの痕のように残る
川端 康成 / 掌の小説 amazon
身体が油の切れかかった車同様にさびつく
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
病人が暗がりの中で、灰色の石のように横たわっている
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
冷えれば、しもやけはじりじりと凍ってきて、重く刺すように痛む
幸田 文 / おとうと amazon
神秘な生命力を流し込まれるかのように、見る見る元気になる
川端 康成 / 掌の小説 amazon
頭から肩にかけて、岩のような頑固な力がこもる
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
海老のように赤い手足が、しもやけでまるまるとふくれている
壷井 栄 / 大根の葉・暦 (1980年) amazon
心労と塵労が全身にかさぶたのようにかぶさる
開高 健 / 地球はグラスのふちを回る amazon
跳躍台に登っただけでよろめくにちがいないほど衰弱しきる
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
もぐらが天日にさらされたように体が衰弱する
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
病が薄紙を剥ぐように快復に向かう
柴田 錬三郎 / 南国群狼伝 amazon
疲れが、じくじく水を吸うよう海綿のように僕の内部でふくらむ
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
腐った茄子のようにブシ色に腫れ上がった顔
藤枝 静男 / 或る年の冬 或る年の夏 amazon
朝から真夜中まで、からだがコンニャクのようになるほど駆けずり回る
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon
病気以来、自分の身体を爆薬のように怖れる
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
ぬれた綿のように重くぐったりした躰
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
眠り草のように身体が萎える
円地 文子 / 渦 amazon
ひからびて黒ずんだ枯れ木のような肉体
坂口 安吾 / オモチャ箱・狂人遺書 amazon
身体が濡れ雑巾のようにクタクタ
高橋 三千綱 / 涙 amazon
突然樹木が倒れるように、病に倒れる
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
病勢が機関車のように驀進する
高村 光太郎 / 智恵子抄 amazon
硬直した木ぎれのようなからだを、木ぎれを投げるようにしてフトンの上に放りだす
小島 信夫 / アメリカン・スクール amazon
足首にかたくゴム輪をはめたような傷痕が刻みつけられる
吉村 昭 / 魚影の群れ amazon
乾からびた茸のような疲労を覚える
北 杜夫 / マンボウ響躁曲―地中海・南太平洋の旅 amazon
筋肉がしこっていて、燃え残しの根株のように熱っぽい
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
首筋が銅線でもはめこまれたように硬く突っ張る
小林久三 / わが子は殺人者 amazon
牢獄を出たばかりのようなみすぼらしい疲れ
川端 康成 / 掌の小説 amazon
洪水のように疲れが躰(からだ)の中へ流れこむ
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
独楽のようにいつも全速力で廻っていなければ倒れてしまう
中島 敦 / 牛人 amazon
鼻が石榴(ざくろ)のように赤く裂ける
真継 伸彦 / 鮫 amazon
水を流すような悪寒が走る
川端 康成 / 掌の小説 amazon
氷のような寒気が背から胸へつらぬいていく
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
背筋を蛇の肌で撫でられたような悪寒を覚える
阿刀田 高 / ナポレオン狂 amazon
五十キロの荷物をしょって山登りでもしたように、首筋から背中いっぱいに重いしこりがひろがる
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
ひどく疲れた顔をしていた。息が乱れ、肩が不規則に上下していた。まるで溺れかけたところを助けあげられたばかりの人のように見えた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
まるで月光の滴りでも落してやるかのように病人の口の中へその水の滴を落してやった。
横光 利一 / 時間 amazon
私は遁(のが)れた獣のようにその傷口を舐めた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
押し寄せて来た心臓麻痺に、彼女は、浪打ち際に落ち散ってる、木の葉のように浚(さら)われて行った。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
時間にして十秒ほどのその鮮明な映像は、前触れもなしにやってくる。予兆もなければ、猶予もない。ノックの音もない。@略@無音の津波のように圧倒的に押し寄せてくる。気がついたとき、それはもう彼の目の前に立ちはだかり、手足はすっかり痺れている。時間の流れがいったん止まる。まわりの空気が希薄になり、うまく呼吸ができなくなる。まわりの人々や事物が、すべて自分とは無縁のものと化してしまう。その液体の壁は彼の全身を呑み込んでいく。世界が暗く閉ざされていく感覚があるものの、意識が薄れるわけではない。レールのポイントが切り替えられるだけだ。意識は部分的にはむしろ鋭敏になる。恐怖はない。しかし目を開けていることはできない。まぶたは固く閉じられる。まわりの物音も遠のいていく。そしてそのお馴染みの映像が何度も意識のスクリーンに映し出される。身体のいたるところから汗がふきだしてくる。シャツの脇の下が湿っていくのがわかる。全身が細かく震え始める。鼓動が速く、大きくなる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
発作は長く続いた。天吾(人名)は目を閉じ、いつものようにハンカチを口にあて、しっかり噛みしめていた。どれくらいそれが続いたのかわからない。すべてが終わってしまってから、身体のくたびれ方で見当をつけるしかない。身体はひどく消耗していた。こんなに疲れたのは初めてだ。まぶたを開くことができるようになるまでに時間がかかった。意識は一刻も早い覚醒を求めていたが、筋肉や内臓のシステムがそれに抵抗していた。季節を間違えて、予定より早く目を覚ましてしまった冬眠動物のように。@略@天吾はようやく目を開け、焦点をあわせ、テーブルの縁を握っている自分の右手を眺めた。世界が分解されることなく存在し、自分がまだ自分としてそこにあることを確認した。しびれは少し残っているが、そこにあるのはたしかに自分の右手だった。汗の匂いもした。動物園の何かの動物の艦の前で嗅ぐような、奇妙に荒々しい匂いだ。しかしそれは疑いの余地なく、彼自身の発する匂いだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
エネルギーの備蓄をすべて使い果たしたように、老婦人は椅子の中に深く身を沈めた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
(2年ぶりに認知症の父を訪ね、窓際に座る小さくなった父を見て)離れたところから見ると、人間というよりは、ネズミやリスの類に近い生き物のように見えた。あまり清潔とは言えないが、それなりにしたたかな知恵を具えた生き物だ。@略@父親だった。あるいは父親の残骸とでも言うべきものだった。二年の歳月が彼の身体から多くのものを持ち去っていた。まるで収税吏(しゅうぜいり)が、貧しい家から情け容赦もなく家財道具を奪っていくみたいに。@略@今目の前にいるのは、ただの抜け殻に過ぎない。温かみを残らず奪われてしまった空き屋に過ぎない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
自らの内側で徐々に広がっていく空白と共存することを余儀なくされている。今はまだ空白と記憶がせめぎあっている。しかしやがては空白が、本人がそれを望もうと望むまいと、残されている記憶を完全に呑み込んでしまうことだろう。それは時間の問題でしかない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
月の満ち欠けみたいに几帳面に
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
シラフでいることはおれにとって異様な体験なのだ。すがるもの、杖とするものがない不安。おれは重度の近視なのでわかるのだが、この不安な感じは、極度の近視の人間がメガネを失くしてしまったときのあせりによく似ている。メガネを探さねばならないのに、メガネがないからうまく探せない。入り組んで出口のない不安だ。アルコールが抜けたときのこの心もとなさは、メガネを失くした不安を何十倍か強烈にした感じだ。おれはずっと酩酊がもたらす、膜を一枚かぶったような非現実の中で暮らしてきた。酔いがもたらす「鈍さ」が現実をやわらげていたのだ。それがいま、尖端恐怖症の人間に突きつけられたエンピツの先にも似た、裸で生の世界が鋭角的に迫ってくる。メガネを失くしたのとは逆で、くっきりと鮮明な現実が、アル中の濁った五感を威圧するのだ。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
老婦人は顔を伏せてちぢこまっているが、別にしょんぼりしている様子でもない。四十年も五十年もこの調子でどなりつけられてきて、何も感じなくなっているのだろう。@略@
(婆さんが言う)「すみませんねえ。うるさい、きたない年寄りで……」 テーブルの下の棚から、やっと「突き匙」が出てきたときには、吉田老は怒り過ぎたのか、いささかぐったりとしていた。姿勢をしゃんと正さず、半分起きた状態で果物を口に運ぶために、喉仏から鎖骨のあたりに果汁がぼたぼたこぼれ落ちる。婆さんはそれを見て、またしきりに〝きたない〟〝きたない〟と繰り返すのだった。 最初のうち、おれはこの老夫婦の会話をほほえましく聞いていたのだ。昔ながらの封建的だが駄々っ子のような亭主と忍従型の老妻とのやりとりとして。 誤算だった。 婆さんの顔は、押さえきれない喜びに輝いていた。 婆さんは、いまやじっくりと復讐を楽しんでいるのだった。愚鈍を装って、傲慢な夫の神経に、一本一本細い針を突き立てている。ののしられ、婢(はしため)あつかいされ続けたこの半世紀の間、婆さんはじっとこの日を待ち続けて耐えてきたのだろう。いまや、吉田老に残された武器は、どなり慣れた口だけだ。それも所詮は空砲だ。婆さんはいま、案山子の正体を知ったカラスになって、じわじわと一本足の吉田老に近づいていくのだった。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
ぱっくり開いた(顔の)傷口のようすは、たとえば地底旅行をしているようなもので、普段見慣れたおのれの顔の下にひそんでいる異界の光景だ。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
「あんたの肝臓を一番うまく言いあらわすとするなら、陶器の壺だな@略@それも、ちゃんとした壺じゃない。一回床に上から落としてバラバラになった奴を、ジグソーパズルみたいにもう一回はめ合わせて元の形にもどした壺だ。接着剤を使わずに、凸凹のはまり込み具合だけで復元した壺だ。一見すると、ちゃんとした壺に見えるだろう。@略@近くに寄って見ると、無数の亀裂がはいってるんだ。@略@一度割れた壺は、二度と元の壺にはもどらない、ということだ。ほんの少しの力(アルコール)で押しただけで、こいつはもとの破片にもどってしまう。」
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
首から背中にかけて物凄く痛いらしく、歩き方がガチョウのよう。
さくら ももこ / もものかんづめ amazon
血液がビールになって流れているような気がした。
さくら ももこ / もものかんづめ amazon
アレルギー性鼻炎の人間が、仕事に支障をきたすから、とスプレー薬を使うのと同じ
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
近頃、不意に背後から左の肩にずっしりと乗っかってくる目に見えない漬物石に悩まされている。
三浦 哲郎 / 拳銃と十五の短篇 amazon
赤ぎれとひびと霜焼けが、塵芥と油に固められて、海老の甲羅のようないたましい手を作り上げているのだ。
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
不良の酒のように絶えざる車体の微動につれて人を酔わす。
永井荷風 / あめりか物語 amazon
棒杭のように身体を投げ出し
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
背中一面、隙間がないほど赤黒いみみずばれが、鯰(なまず)のように這っている
木山 捷平 / 長春五馬路 amazon
肉のひきつりはカンナの葩(はなびら)のような形をしていた。
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
身体が疲れて、肉の上に板でも張ってあるような心持
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
長い長い不愉快な旅の後、漸く自家に帰って来た旅人の疲れにも似た疲れだった。
志賀 直哉 / 和解 amazon
兵隊の脇腹に銃創があり、そこだけ萎んだ花弁のような形で、周りの皮膚より黒ずんで厚ぼったく変色している
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
疲れが濡れて重い外套(がいとう)のように躰を包む
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
蚊に喰われ、手や顔や足がツベルクリン反応をしたようになって
群 ようこ / 無印良女 amazon
塩菜のようにぐったりしていた。
野間 宏 / 真空地帯 amazon
雪に嚙まれて、素足の指先が赤い芽生薑(めしょうが)のようになり
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
松毛虫をつまんだようにぞっと背すじへ走る
森田 たま / もめん随筆 amazon
大きな、まるで暗い不思議な花のような病竃(びょうそう)
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
傷の癒り方まで、獣のように快調だった。
田村 泰次郎 / 肉体の門 amazon
手術台の上で俎(まないた)へ乗せられた魚のように、おとなしく我慢している
夏目 漱石 / 明暗 amazon
鼻の穴に酸素吸入や胃袋につながる管をつっこまれ、胸には何本もの心電図のコード@略@体じゅうに種々様々の管や紐がまるで大きな蜘蛛の巣のように纏りついている。
安岡 章太郎 / 酒屋へ三里、豆腐屋へ二里 amazon
泥のように疲れて眠っている。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
エジプトのミイラのように、両脚に厚い繃帯を施されて、身動きもできない
獅子文六 / 沙羅乙女
ばばあを椅子のうえに押しあげようとしました。まるで象を椅子に乗せるような苦労でした。
倉橋 由美子 / 蠍たち amazon
血膿(ちうみ)に汚れて重そうに垂れ下るガーゼを、そばでも食うような手つきで引っぱり上げる
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
まるで蛭(ひる)の巣だよ。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
ゴルフのつかれが吸いとられるように消えていく。
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
病は苦悩の多く強いものではなかったが、美しい花の日に瓶中(へいちゅう)に萎れゆくがごとく、清らかな瓜(うり)の筐裏(きょうり)に護られながらようやく玉の艶を失って行くように、次第次第衰え弱った。
幸田 露伴 / 連環記 amazon
歌はすこぶる悠長なもので、夏分の水飴のように、だらしがないが
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
首のつけ根のうすい筋肉はひどくこっていて、燃え残しの根株のように熱っぽかった。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
マクロのようにのびてしまう。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
くたくたに疲れて、空気を抜かれたような軀を、ぶらぶらと無意識に駅へ運んでいる。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
喉は破れた笛のように悲鳴をあげる。
芝木 好子 / 隅田川暮色 amazon
死んだようにぐったり
林 芙美子 / 浮雲 amazon
彼はだんだん衰えて行った。ちょうど昔スウイフトの見た、木末(こずえ)から枯れて来る立ち木のように。
芥川 龍之介 / 或阿呆の一生「河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)」に収録 amazon
間から初日の出のようにあざやかにあらわれ
太宰 治 / 瘤取り「お伽草紙 (新潮文庫)」に収録 amazon
鈍角が強引に引き裂いて行った傷は、石榴(ざくろ)のように赤い肉をはみ出していた。
島木健作 / 生活の探求 amazon
体の芯がなにか媾後のようにぐったり疲れて
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
ひどい疲労から小石のように眠りに落ちた。
堀 辰雄 / 恢復期 amazon
何か懸案の大仕事をなし遂げた時のような快い疲労
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
眼が小石でも填(う)められたように疲労して
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
耳の下で水枕がプカンプカンと音を立てている。@略@頭を動かすたびに、なまぬくい水がふなべりを叩く波のように鼓膜に伝わってくる。
向田 邦子 / 耳「思い出トランプ (新潮文庫)」に収録 amazon
古草履のように疲れ果てた我等
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
自分の体が、キルク(=コルク)が水に浮いているようで
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
疲労から、やどかりのようにとじこもって殼のなかでぐったりしてヘンリー・ミラアを読んでいた。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
軀の工合が袋をかぶっているようにはっきりしないのだ。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
両足が霜腫(しもば)れして人蔘のように赤くなって痒くてたまらなかった
井伏 鱒二 / 丹下氏邸 amazon
ここまで書いてきて、婆やは、九段坂を車を曳いて上った人のように、草臥れた。
獅子 文六 / 胡椒息子 (1953年) amazon
彼らの姿はたしかに墓場に集まってくる幽霊を信太郎にも連想させた。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
親が子を生むように思っているが、親なんてものは、ほんの仮の宿だよ。
山本 有三 / 波 amazon
煮られたあとのようにくたくたな気持で
岡本 かの子 / 落城後の女「岡本かの子全集 (第3巻)」に収録 amazon
体は重たい泥のように弾力なく崩折(くずお)れてゆくのだった。
阿部 知二 / 冬の宿 (1948年) amazon
晴れた日や曇った日の不規則な交代のように、その周期の不規則なためらいに
三島 由紀夫 / 美徳のよろめき amazon
干された雑巾のようにくたびれる
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
悪寒がする。ねっとりと湿ったヘビのような悪意が、自分の足を伝い、体内に侵入してくるような不気味さに覆われる。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
叔父は三年後に腸の癌を患い、体中をずたずたに切り裂かれ、体の入口と出口にプラスチックのパイプを詰め込まれたまま苦しみ抜いて死んだ。最後に会った時、彼はまるで狡猾な猿のようにひどく赤茶けて縮んでいた。
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
三日ばかり風邪で休んだおかげで仕事は山のようにたまっていた。口の中はザラザラするし、体じゅうに紙やすりをかけられたような気分だ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
煙草は湿った新聞紙を丸めてガスバーナーで火をつけたような味がした。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
白い糸屑のような細い傷跡が七ミリばかり残っていた
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
天地を創造した神さまにも匹敵するくらいのエネルギーを使いました。
綿矢 りさ / 自然に、とてもスムーズに「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
その写真を見せられた時、凍りついた夜空に降る雨のようだと思った。@略@夜空は深く清らかな黒色で、じっと見続けているとめまいがしそうだった。雨ははかない霧のように空を漂っていた。そしてその霧の中に、ぽっかりそらまめ型の空洞が浮かんでいた。@略@そらまめ型の空洞に目を凝らした。夜を濡らす霧雨の音が聞こえてきそうだった。その空洞のくびれた隅にひっかかっているのが赤ん坊だった。それはもろい影の塊で、風がふくと夜の底へはらはら舞い落ちていきそうだった。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
つわりはずぶ濡れのブラウスのように、じっとり彼女に貼りついている。@略@彼女は今、神経もホルモンも感情もバラバラになっているのだ。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
彼女の神経的な病気は少しも良くなっていないように思う。彼女の病気は常に、海に浮かんだ海藻のように波打っている。決して穏やかな砂地に舞い降りることはない。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
重病人のようにベッドでぐったりして
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
生理になるのは卵子が受精しなかったからで、ほんまは受け止めて育てるために準備されてたクッションみたいなものが血と一緒に流れるから。
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
患者の手足はかたくこわばり、木づくりの人形のようだった
北社夫 / 夜と霧の隅で amazon
皮膚が油紙の一枚のようにめくれている
井伏鱒二 / 黒い雨 amazon
わき腹に銃創があり、そこだけ萎んだ花びらのような形で、周りの皮膚より黒ずんで厚ぼったく変色している
大江健三郎 / 死者の奢り amazon
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