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顔の比喩を使った文章の一覧(363件)
両の頬が老婆の乳房のように垂れさがっている
井伏鱒二 / さざなみ軍記 amazon
ゴム鞠(まり)のようにふくらんでいた頬は内側からすっかり肉をえぐりとられたように凹んで
安岡章太郎 / 海辺の光景 amazon
子供の時分喧嘩をして、餓鬼大将の為めに頸筋(くびすじ)を捉まえられて、うんと精一杯土塀へ圧(お)し付けられた時の顔が四十年後の今日迄、因果をなして居りはせぬかと怪しまるる位平坦な顔
夏目漱石 / 吾輩は猫である amazon
鷹揚な暢気さの中にもどこか寂しげな、意志の強そうな中にも涙もろそうな、人のいい顔。此方(こちら)が真心を以ってうちあけて出れば、鉦(かね)を敲(たた)くが如く、向こうからも直ちに真心を以って打ちとけてくれそうな顔。
長与善郎 / 竹沢先生と云う人 amazon
生まれてこのかた一度も傷ついたことのない十三か十四の女の子みたいな顔
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
大きな黒い瞳が、何かとてつもない大きなことでも夢見ているようなあどけなさを持っている娘
井上 靖 / 風林火山 amazon
顔一面に刷毛(はけ)ではいたようにへばりついている脂
宮本 輝 / 夢見通りの人々 amazon
ベールを透かして見るような何か怪しい美しさのある顔
三浦 綾子 / 続 氷点 amazon
あやめの切り花のように、花を養う水が根から上がって来ないので、水分が不足したような顔つき
石川 達三 / 独りきりの世界 amazon
顔付きが石に彫ったように冷たく美しく見える
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
毒液でも注射されたように見る見る陰気な顔色になる
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
ゲゲゲの鬼太郎に出てくる石臼のお化けそっくりの顔
荻野 アンナ / 背負い水 amazon
美しさが燃えているような顔
中河 与一 / 天の夕顔 amazon
ヨーロッパの街角に立つ中性の彫刻のような美を湛える女性の顔
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
顔に、火花が散るような動物的な美しさがひらめく
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
仄(ほの)明るさが顔を静物のように彫る
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
男のようにひきしまった大柄な眼鼻立ち
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
眼が深くくぼみ、頬はこけて、頭蓋骨に直接、皮膚をかぶせたように見える男
三浦 朱門 / 犠牲 amazon
更衣室を覗かれた少年のように、かすかに顔を赤らめる
小池 真理子 / やさしい夜の殺意 amazon
明かりにくまどられた女の顔が、ほの暗い中で老婆を思わせる
勝目 梓 / 日蝕の街 amazon
重荷を背負わされた老婆のように顔を皺寄せる
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
眉をおとし、古い内裏雛のような顔立ち、色つやのもの静かな人
里見 トン / 極楽とんぼ―他一篇 amazon
安い雛人形みたいな顔した女の子
向田 邦子 / 思い出トランプ amazon
重荷を背負わされた老婆のように顔を皺寄せる
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
穴ぐらの中で酒盛りをしている山賊みたいにたけだけしい顔つき
大庭 みな子 / 三匹の蟹 amazon
小鳩のようなあどけない顔
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
彫刻家がノミで丹念に刻んだような美しい貌(かお)
森 瑤子 / 傷 amazon
目の綺麗に澄んだ透きとおるような顔立ち
中河 与一 / 天の夕顔 amazon
浮世絵にでもありそうな細長い鼻つきをした瓜実顔
谷崎 潤一郎 / 痴人の愛 amazon
青く湿った能面のような顔
黒岩 重吾 / 背徳のメス amazon
目を閉じると狐面に似かよい、眼をひらくと般若面を想わせる顔
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
青ざめて石膏のような顔は別人のよう
深沢 七郎 / 千秋楽 amazon
顔色が壁のように青褪(ざ)める
獅子 文六 / てんやわんや amazon
顔色がなえた草の葉のように色褪める
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
急に歳をとってしまったかのように、顔色がひどく濁る
黒井 千次 / 群棲 amazon
デスマスクを思わせる生気を失った顔
勝目 梓 / 日蝕の街 amazon
顔が燃えるように血の色をのぼせている
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
頬の血色がよくて、痣(あざ)と見違えるほどに赤い
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
紙のように光のない顔
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
艶を失ったボール紙のような顔色
高井 有一 / 夜の蟻 amazon
黒っぽいコートが薄暗がりにとけて、白い顔だけが夢の世界の人物のように浮いている
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
肌理の荒い、一つ一つの毛穴に油が溜まっているような顔
志賀 直哉 / 志賀直哉短篇集(剃刀) amazon
毒液でも注射されたように見る見る陰気な顔色になる
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
額や頬の筋肉が蟹の甲羅のような顔
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
マージャンの牌みたいな顔
岡田 なおこ / 薫ing(イング) amazon
目のまわりの暈が不気味なほど濃くて、死苦に悩んでいる女の顔のよう
中村 真一郎 / 夜半楽 (1959年) amazon
顔が暗い電灯の下で黄色い果実のように見える
野間 宏 / 真空地帯 amazon
いつもほこりをかぶっているかのように、すすけて見える顔色
野間 宏 / 真空地帯 amazon
秋の風のように吹きさらしの面がまえ
福永 武彦 / 風のかたみ amazon
つい今しがた兵隊から帰ってきたみたいに精悍な面構え
久間 十義 / ヤポニカ・タペストリー amazon
鷲のような肉食鳥のタイプの顔
萩原 朔太郎 / 帰郷者 amazon
怯えた鼠のように小さな顔
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
顔付きが石を掘ったように冷たく美しく見える
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
罅(ひび)の入った陶器のように冷たい顔
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
白い磁器のように美しい淑(しと)やかさに占められている顔
円地 文子 / 渦 amazon
干し柿のようにしなびて黒い、面長な顔
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
一日中光らしい光にあたらぬため蒼黒くむくんだ顔が、意志のない人形のよう
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
牙彫(けぼり)の人形のような顔
森 鴎外 / 山椒大夫 amazon
白い百合の花のように優婉(ゆうえん)な顔
海音寺 潮五郎 / 武道伝来記 amazon
ニスを塗ったナマコのように、顔がてらてらと光る
小池 真理子 / やさしい夜の殺意 amazon
顔が富有柿のように丸く平べったい
山本 有三 / 波 amazon
はんぺんのようにぺーっとした顔
岡田 なおこ / 薫ing(イング) amazon
虫も殺さぬ上品な顔立ち
今 日出海 / 天皇の帽子 amazon
顔付きはまんまるで、田舎道のお地蔵さんに眉墨をひき口紅をつけさせたよう
井上 ひさし / イサムよりよろしく amazon
きつく眉を寄せた興福寺の少年阿修羅のような顔
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
剽軽(ひょうきん)な羅漢のような顔
夏目 漱石 / 門 amazon
人間製造に厭(あ)き厭きした造物主が居眠りしながら附けたような目鼻
川端 康成 / 掌の小説 amazon
ずんぐりむっくりした体の上に、アンパンみたいな顔が載っている
宮本 輝 / 星々の悲しみ amazon
満月のように円く白い顔
獅子 文六 / てんやわんや amazon
眉の迫った、眼の涼しい、心もち口もとに癖のある、女のような顔立ち
芥川 龍之介 / 邪宗門 (1977年) amazon
少女のように影が豊かな顔の輪郭
大仏 次郎 / 冬の紳士 amazon
春霞のかかった満月のような、おぼろに白い顔
宮部 みゆき / とり残されて amazon
鋼のように固い、しっかりした表情
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon
顔が切り子細工のように怪しくきらめく
今 日出海 / 天皇の帽子 amazon
ずんぐりむっくりした体の上に、アンパンみたいな顔が載っている
宮本 輝 / 星々の悲しみ amazon
木の肌のような小皺が寄る
開高 健 / 地球はグラスのふちを回る amazon
花キャベツみたいな顔
ジュール・ルナール / にんじん amazon
死者の生なましく白く、草のような額
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
しわがいっそう深くなって、無数の濃い隈取のようになる
日野 啓三 / 抱擁 amazon
蛍光塗料を塗りたくったような派手な化粧
小池 真理子 / 小池真理子のミスティ―小池真理子短篇ミステリ傑作集〈1〉 amazon
三色版の夕焼け空のような頬化粧
獅子 文六 / てんやわんや amazon
ペンキの白と赤を塗ったような凄い化粧
獅子 文六 / てんやわんや amazon
四角い下駄のような顔
灰谷 健次郎 / きみはダックス先生がきらいか amazon
高慢そうな鼻をツンと立ててひとを寄せつけないような顔をした女
安岡 章太郎 / 青葉しげれる amazon
開きかかった薔薇のような笑みが、唇の上に開きかかっている死に顔
佐藤 春夫 / 佐藤春夫 amazon
顔に苦痛を耐え忍ぶシワが鬼面のように盛り上がる
深沢 七郎 / 深沢七郎コレクション 流 amazon
縦皺は女を夜叉のように見せる
森 瑤子 / 傷 amazon
彼女の寝顔はすばらしく綺麗だった。何かしら非現実的な材料で作った精密な彫像みたいに美しかった。誰かが強く突くと壊れてしまいそうに見えた。そういう種類の美しさだった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
七三分けで頬がテカテカ光った腹話術人形のような顔立ち
横山 秀夫 / 半落ち amazon
悪戯を見つけられた少女のように、顔を赧くしながら
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
筋骨はひきしまって痩せ、秀麗な額を持ち、白樺のようにすっきりしていた。
山田克郎 / 壮士行
彼はまだ六十四歳だったが、それよりはずっと年老いて見えた。誰かがうっかり間違えて、その男の人生のフィルムを先の方まで回してしまったみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
顔は透き通るほど白く、唇は霜が降りた花のようだった。
瀬名 秀明 / パラサイト・イヴ amazon
頬は少しふっくらとしており、そのふくれ具合が、不満を抱える指導者のようにも見え
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
丸顔に髭を生やしている。樽の中に入り、剣で刺される玩具を髣髴とさせる外見だった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
丸顔で額が広く、岩のような顔立ち
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
たくましい毬栗坊主で、叡山の悪僧というべき面構え
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
白壁のように白粉を塗っていた。
森田草平 / 初恋 amazon
鉛筆を嘗(な)め嘗めしながら描いたような思い切ってハッキリした目鼻立ち
石坂 洋次郎 / 嘱託医と孤児「石坂洋次郎文庫〈第1〉 (1967年)」に収録 amazon
まるで粉桶から飛び出したようだ。
徳田 秋声 / 足迹 amazon
文楽のお人形のような妙にすべすべしたお顔
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (1974年) (井上靖小説全集〈1〉)」に収録 amazon
火薬に煤けて真っ黒な鳥のような顔
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
君の寝顔は憂鬱な白薔薇のようで素敵だよ。
島田 雅彦 / 観光客「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
バスケットボールのような顔
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
両頬が深い穴のように落ち凹(こ)け
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
焼けぼっくいのようにたやすく赤面した。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
動物のような獰猛な顔をした医者
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
鑿(のみ)で一えぐりして出来たかのような滑らかなしまった頬
若い人「日本文学全集〈第25〉石坂洋次郎集 若い人(1966年)」に収録 amazon
毀れた泥人形のように、つやを失った
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
鷲みたいなこわい鼻をした、強そうな顔
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
濃い白粉の上に、クッキリと赤い唇紅、黒い眼鏡-まるで、新しいトランプのように、鮮かな顔だ。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
痩せた婆さんで、引込んだ眼や、こけた頬や、それが謙作に目刺(めざし)を想わせた。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
舞台化粧を施すと、お面をかぶったような感じで
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
埴輪のようにシンプルなつくりの次郎の丸い顔
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
血色のすぐれない雪解けのような顔
林 芙美子 / 市立女学校「林芙美子作品集〈第2巻〉清貧の書 (1956年)」に収録 amazon
どこか、白いきつねの感じであった。
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
薄化粧した女の姿は浮いたように美しかった。
火野 葦平 / 糞尿譚 amazon
修羅のように青ざめて
梅崎 春生 / 日の果て amazon
将棋の駒のような角ばった顔
福永 武彦 / 草の花 amazon
白粉の匂いが周吉の鼻に新しい蚊帳のように匂った。
林 芙美子 / 牡蠣「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
胡粉(ごふん)のように真白に塗りつけたおしろい
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
両頬に紅い丸を描いた孔雀のような女
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
意地のかたまりのような角ばったいかつい顔
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
整い過ぎた顔立は、彫刻した人形のように取澄した感じで
大仏 次郎 / 宗方姉妹 (1954年) amazon
顔は折り畳んだような深い皺で刻まれ
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
顔色の悪いことといったらまるで死人のようなのですもの。
長与善郎 / 陸奥直次郎 amazon
少女ながらもきりっとした彫りの深い横顔は、きびしい寒さの中で燃えているひとすじの焔(ほのお)といった感じであった。
清岡 卓行 / アカシヤの大連 amazon
咽喉もとに七面鳥のようなこまかい皺のよった勝基老人
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
ブルドッグそっくりの頬のたるみ
曽野 綾子 / 遠来の客たち amazon
ドギついドーラン化粧をおとすと、ゆで卵をむいたような、つるつるの@略@眉も何もないその顔
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
顔なども古い巾着のように皺が寄って膨らんでいるお婆さん
岩本 素白 / 生憎
彼は白ペンキのように青ざめて
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
石像のように気高く見えた。
徳田 秋声 / 黴 amazon
紙のように青ざめて、呆然としている。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに (1954年) amazon
片山の顔がまた青くなった。信号並みによく色が変わるのだ。
赤川 次郎 / 三毛猫ホームズの推理 amazon
杏子の顔を見ていると、乾いた(テニスの)球の音が感じられた。
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
彼の顔は縦よりも横に広い茶釜みたいな形
中山 義秀 / 碑「厚物咲・碑―他六篇 (1956年) (角川文庫)」に収録 amazon
瓜実顔の古風の人形か能面のような美しい顔立ち
坂口 安吾 / 白痴 amazon
お白粉を施けたとこはまるで炭団(たどん)へ霜が降ッたようでございます
二葉亭 四迷 / 浮雲 amazon
半さんは痩せ形で、顔は三角に近い。見る人によっては秋の野原で頻繁に出くわすかまきりの面を思い起す。
猟師と兎と賭と「現代日本文学大系〈92〉現代名作集 (1973年)」に収録 amazon
どの顔も、あせと土ぼこりで、まるでぶちのドラネコのようになっていた。
小出 正吾 / ジンタの音「小出正吾児童文学全集 (3)」に収録 amazon
お嫁さんは白く丸くつきたてのお餅のような顔をしていて
森田 たま / もめん随筆 amazon
頬は滑り落ちるようにこけて
夏目 漱石 / 道草 amazon
顔が平べったくて、おまけに雀斑(そばかす)が附いていて胡麻のくっついた煎餅にたいへんよく似ている。
小沼 丹 / 村のエトランジェ amazon
露出している肉体のあらゆる部分へ濃い白粉を塗っているのだが、それでいて、やっぱりその皮膚の底に澱んでいる暗色を消すことができない。ちょうど清冽な水の底にある汚物が、高い所から見下ろすとよく分るように、それが分る。
谷崎 潤一郎 / 陰翳礼讃 amazon
一種岩石のように頑固そうな顔つき
上林 暁 / 薔薇盗人「昭和文学全集〈14〉」に収録 amazon
女子学生は、非常に老けた、疲れきった表情をしていて、それは病気の鳥のような感じだった。
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
白粉や口紅をおとした女の疲れた青白い顔は、洗いさらした布のように、力のないざらざらとしたすさんだ肌のいろで
田宮 虎彦 / 菊坂「菊坂―他六篇 (1955年) (角川文庫)」に収録 amazon
私の顔は、ほどほどに平凡である。祖父ゆずりの丸い鼻は低く、祖母ゆずりの唇はよく見ると厚いが、肌の白さも手伝って全体的にはのっぺりとした印象で、自分でも鏡を見ながら、葉書のようだなあと思うことがある。その上、右目は二重で左目が三重という具合に、統一感もない。@略@結婚して化粧をする機会が減った今は、ますます葉書感が増してきた気もする。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
私は思わず大きな声をあげていた。 旦那の目鼻が顔の下のほうにずり下がっていたのだ。 瞬間、私の声に反応するかのように、目鼻は慌ててささっと動き、そして何事もなかったように元の位置へ戻った。私は息を吞んだ。@略@よくよく注意してみると、旦那の顔は、臨機応変に変化しているのだった。人といる時は、体裁を保ってきちんと旦那の顔をしているのだが、私と二人だけになると気が緩むらしく、目や鼻の位置がなんだか適当に置かれたようになる。一ミリや二ミリの誤差なので、よほど旦那に興味がなければ、気が付く者はいないだろう。似顔絵の輪郭が、水に溶けてぼやっとにじむような、曖昧模糊とした変化なのだ。 本人にも気付かせようと、顔が適当になっている時に、「ねえ、ヒゲが伸びてる。」とか、「鼻のところ確認したほうがいいよ。」などとあれこれ理由をつけて、鏡に向き合わせてみた。すると鏡に向き合った瞬間、なんとなくここら辺だろうと、いい加減に置かれていた目鼻が、ピタッと整列するように本来の位置に収まる。@略@旦那の顔がいちばん雑になるのは、ハイボール片手にバラエティ番組を観ている時だということは確かだった。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
彼女の寝顔は、私の寝顔みたいに、熟睡するとあったまったプリンみたいに横に広がって目鼻立ちがのっぺり見えるようなこともなく利発そうだ。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
顔の輪郭は顎にかけてしゅんと細くなり、まるで狐のよう
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
表情は、三日三晩荒野を彷徨った旅人のように荒んで
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
顔は猿のように赤かった
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
ひどく瘦せているくせに、褐色の肌をした易者は、ファラオの墓からよみがえったばかりのミイラのようで、どこか神秘的な雰囲気がした。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
化粧を落としたなんともいえん植物のような顔
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
寝不足がなによりも避けるべきもので、眠っていないと肌の調子が悪くなるからではなくて、目のほうに問題が出て、どれだけ丁寧にアイラインをひいても皮膚のきめを飛び出して見えるし、醜い恐竜の爪のような顔に見える
川上 未映子 / あなたたちの恋愛は瀕死「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
今咲いたばかりの花のような生き生きとした美しさ
宇野千代 / 色ざんげ amazon
瓜実顔の古風な人形か能面のような美しい顔立ち
坂口安吾 / 白痴 amazon
顔は南蛮鉄の刀の鍔(つば)の様な輪郭を有して居る
夏目漱石 / 吾輩は猫である amazon
顔面が真っ青で幽霊が飛び込んできたかと思ったほど
木山捷平 / 大安の日「白兎・苦いお茶・無門庵」に収録 amazon
昨日嫁入りした人のように赤くなる
川端康成 / 掌の小説 amazon
血色のいい金時みたいな横顔
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
熟した柿のように張り切って血色のいい顔を、興奮にますます赤くする
大江健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
年をとった顔には人知れず黙し殺して来た愛憎や意欲が深い皺に畳まれたり
円地文子 / 円地文子集(老桜) amazon
トランプの王様みたいなクラシックな美貌の横顔
宮地 嘉六 / 煤煙の臭い「宮地嘉六著作集〈第1巻〉 (1984年)」に収録 amazon
長い人生の労苦に唯々うちひしがれて、今にも吹き散りそうな弱々しい顔
円地文子 / 円地文子集(老桜) amazon
年齢の腐食作用を受けない一個の剛毅なブロンズの仮面のように見える。
三島由紀夫 / 遠乗会 amazon
半年の断食を終えたドラキュラ伯爵みたいな形相
大原まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
頬骨の出ている女の顔は、遠い街燈の光を斜に受けて、妖怪じみて見える
椎名麟三 / 永遠なる序章 amazon
その他の人物を表す比喩表現
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