電話の比喩表現の例文 一覧

網でバシャンと掬（すく）うみたいに受話器を取り上げる

重い錨でも置くように受話器を置く

酸欠の金魚のように口を動かして、通話のふりをする

線香花火のような雑音をずっと鳴らし続けている

まだ話していたい気持ちに軽くピリオドを打つように受話器を置く

飛びつくようにして受話器を取る

息をひそめ、（鳴っている）電話機をじっと見ていた。黒板に書かれた長く難解な数式の手がかりを求めて、少し離れたところから細部を検分する人のように。

僕はひびの入ったダチョウの卵を温めるみたいな格好で（固定）電話機を胸に抱えてベッドに腰を下ろした

電話というのは置き去りにされた時限爆弾みたいに思える

電話は利用されるのを待つばかりで、自分自身でコミュニケーションを取れないことに苛立っているようにも見える

ものすごく遠くの方で女が喋っている声が聞こえた。長い廊下の向こうの端から聞こえてくるような声だった。小さくて乾いていて、妙な響き方をした。内容までは聞き取れなかったが、それはとても辛そうな声に聞こえた。辛そうに、途切れ途切れにその声は話し続けていた。@略@まるで死人が語りかけているみたいだな、と僕は思った。長い廊下の端の方から死人が話しかけている。死んでいるというのが、どれほど辛いことなのかについて。

コール音が深い底無しの虚無の中におもりを垂らすようにいつまでもいつまでも鳴り響いていた

電話機の前に座っただけで僕の心はどうしようもなく震え混乱した。強い横風を受けたときのように、僕の体は揺らぎ、息をすることさえ困難になった。@略@僕は何度もダイヤルを回し間違えた。何度やっても正確な数字の配列を辿ることができなかった。そして五回目か六回目で僕は受話器を床に放り投げた。

真夜中に電話をかけてくるのはお願いだからやめてほしいと、はっきり頼んだ。収穫前にイナゴの群れを畑に送りつけないでくれと、神さまにお願いする農夫のように。

轟音に聞こえた。トンネルを抜けていく特急列車に乗っているみたいだ。

ふかえりは電話口でしばらく黙っていた。何かを手近の棚に載せてじっと眺めているような沈黙だった。好印象と胸のかたちの関係について、考えを巡らせているのかもしれない。

手の中に残された死んだ受話器を、しばらく黙って見つめた。農夫が日照りの季節に、ひからびた野菜を拾い上げて眺めるみたいに。

まるで鉈（なた）をふるって吊り橋を落とすみたいに

小松からかかってきた電話はなんとなくそれとわかる。ベルがせわしなく神経質な鳴り方をするのだ。まるで指先で机の表面をとんとんと執拗に叩き続けているみたいに。

そう言うと、間を置かずにふかえりは電話を切った。会話は一瞬にして消滅した。誰かが研ぎ澄まされた鉈（なた）を振り下ろして、電話線を断ち切ったみたいに。

受話器を耳に当てると風の吹く音が聞こえた。流れに身を屈めて透明な水を飲む、美しい鹿たちの毛を軽く逆立てながら、狭い谷間を吹き抜けていく気まぐれな一陣の風だ。しかしそれは風の音ではなかった。機械を通して誇張された誰かの息づかいだ。

黒い小さい機械（電話）が、いきばって身を震わせ、喚（わめ）き立てているように感じた。

夕方、ホテルの電話機のベルが短かく鳴った。仏壇の鉦を叩いたように、余韻がしばらく残った。

身を伏せている黒い小さな獣のように、彼の眼に映った。

電話はもう一度生物のように鳴り始めた。

三日ぶりに開いたのに着信もメールもゼロだった。@略@だるまさんがころんだで鬼になって、かなりもったいぶって、だ～る～まさ～んがこ～ろ～んだっ！　とやったのに振り向いたらだれもいなかった、みたいな心境だ。

「くっそう、このボロ携帯。とっとと鳴らないと塩漬けにするわよ」 　忠実な犬が主人の恫喝に怯え従うように、美咲の手の中で、携帯が震えた。

誰も電話には出ない。電話は死を予感した象のように何度か狂おしく鳴き叫び（32回というのが僕の数えた最高だ）、そして死んだ。

「もしもし」別れた妻の声は、透明なガラスに氷が当たる音を思わせた。

電話のベルが鳴った。ベルの音が頭の中に進入してきて、緑色のギザギザした光を放つ。