日本語表現インフォ > 比喩表現の一覧 > 感情の比喩 > 恐怖・不安の比喩表現
恐怖・不安の比喩を使った文章の一覧(527件)
胃袋のまうしろに神経が弓でもひっぱるようにびーんびーんと痛くて
井上光晴 / 地の群れ amazon
弓のようにまがった背骨をミチミチと音をたててのばし
開高健 / 流亡記 amazon
一九七三年の秋には、何かしら底意地の悪いものが秘められているようでもあった。まるで靴の中の小石のように鼠(人名)にははっきりとそれを感じ取ることができた。
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
心に少しの憂いがある時は、月の前を横ぎる薄雲ほどの微かな陰翳(かげ)が美しい顔にかかる
中島 敦 / 悟浄出世 amazon
心の中の拭い切れぬ影が雨雲のようにひろがる
石川 達三 / 花のない季節 amazon
不吉な悪魔の仕業でもあるように嫌な予感にゆすぶられる
檀 一雄 / リツ子その愛・その死 amazon
悪魔の背に乗っているように、いつ振り落とされるかわからない
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
麻痺した心に悪夢のような恐怖がふくれ上がる
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
地獄の針の山を歩くように足が竦(すく)む
川端 康成 / 掌の小説 amazon
汗が額からまぶたに流れ落ち、真珠のようにぶらさがる
中上 健次 / 枯木灘 amazon
乱れた髪の毛ごとに伝いて落ちるかと思うように、汗が玉をなして垂れる
長塚 節 / 土 amazon
汗が背中をなめくじになって滑り落ちる
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
ポロシャツの裏の胸をくすぐって、幾匹もの汗の虫が気持ち悪く這い下りる
黒井 千次 / 群棲 amazon
空気に溺れる魚のように不快な汗をかく
大原 まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
包み紙の中でべたべたになる林檎糖のように汗をかく
ジュール・ルナール / にんじん amazon
裸体がしとどの汗に濡れ、水をかけられたよう
黒岩 重吾 / 背徳のメス amazon
何百トンもあろうかという水を全身で浴びているような重圧
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
裸の肌に藪蚊(やぶか)が群がってきたみたいに、わっとプレッシャーに襲われる
高橋 三千綱 / 涙 amazon
試合後のボクサーみたいに髪も顔も汗でぐっしょり
七尾 与史 / 死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) amazon
上空五千メートルから下界を眺めるスカイダイビング初体験者のようだ。ハッチにしがみついて飛び出そうにも決心がつかない。
七尾 与史 / 死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) amazon
あやめの切り花のように、花を養う水が根から上がって来ないので、水分が不足したような顔つき
石川 達三 / 独りきりの世界 amazon
無数のソーダの泡粒のようなものが、全身の皮膚を逆撫でに走り抜け、戦慄させる
藤枝 静男 / 或る年の冬 或る年の夏 amazon
鮑(あわび)の身のように体じゅうを引き締めて硬くなる
谷崎 潤一郎 / 猫と庄造と二人のおんな amazon
胃袋が炭火でチリチリ焼け縮まってゆくような感覚
吉行 淳之介 / 夕暮まで amazon
鉛が底に溜まっているように重たく感じられる胃
高橋 三千綱 / 涙 amazon
肉塊を鼻先で見るように切迫した息苦しさ
伊藤 整 / 青春 (1960年) amazon
飯粒のなかに小石を噛みこんだようで、ためらいがある
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
意識が朦朧としてきて、抛(ほう)り出された手鞴(てふいご)のようにしぼむ
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
段々消えて行く、狭霧のような取り止めもない意識
菊池 寛 / 極楽 amazon
肉体を貫いて電光のように駆ける不安な戦慄に似た息苦しさ
伊藤 整 / 青春 amazon
犬のように、荒々しく体を慄(ふる)わせて水を払う
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
毒液でも注射されたように見る見る陰気な顔色になる
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
小太刀の先を当たられたように緊張して身動きもできない
有吉 佐和子 / 華岡青洲の妻 amazon
兎の眼のようにおじけづいた心配そうな眼
小島 信夫 / アメリカン・スクール amazon
軀(からだ)の底に小さな点のように生じた疑念が、しだいに大きくなってゆく
村松 友視 / 由比正雪〈上〉 amazon
それからそれへと、同じ幹から疑いの蔓が伸びて、際限がなくなる
岩田 豊雄 / 獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 amazon
得体の知れない雲のようなものの上を歩くのに似ている疑問
鷺沢 萠 / 葉桜の日 amazon
タールのように粘つく疑念の海に放り出される
荻野 アンナ / 背負い水 amazon
疑問が、沼に浮かんでくるどす汚い水泡のように、意識に浮かび上がってくる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
黒い疑惑が胸の中にむらくものように湧く
胡桃沢 耕史 / ごきぶり商事痛快譚 (1) amazon
心がひとつの疑問に向かってぐいと傾斜する
小林久三 / わが子は殺人者 amazon
マスタードの種粒ほどの疑い
ロナルド・マンソン / ファン・メイル (上) amazon
手が木枯らしの中の落ち葉のように顫(ふる)えやまない
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
頭も身体も麻痺してしまった人間が堆積した無知の砂漠が広がる
島田 雅彦 / 未確認尾行物体 amazon
おおいようもない終末感が暗い夕闇のように胸にしずみこむ
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
乱れた髪がべったりと海藻のように、汗の滲んだ額にへばりつく
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
青く湿った能面のような顔
黒岩 重吾 / 背徳のメス amazon
青ざめて石膏のような顔は別人のよう
深沢 七郎 / 千秋楽 amazon
顔色が壁のように青褪(ざ)める
獅子 文六 / てんやわんや amazon
顔色がなえた草の葉のように色褪める
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
急に歳をとってしまったかのように、顔色がひどく濁る
黒井 千次 / 群棲 amazon
デスマスクを思わせる生気を失った顔
勝目 梓 / 日蝕の街 amazon
毒液でも注射されたように見る見る陰気な顔色になる
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
判決でも待つような心細げな顔つき
三田 誠広 / 僕って何 amazon
飴をなくしてむずかっている子供を持て余しているような顔つき
安部 公房 / 砂の女 amazon
あらゆる人間の苦労を一身に集めたような、悲しげな困惑しきった面持ち
テネシー・ウィリアムズ / 欲望という名の電車 amazon
心に少しの憂いがあるときは、月の前を過ぎる薄雲ほどの微かな陰翳が美しい顔にかかる
中島 敦 / 悟浄出世 amazon
心の中の拭き切れぬ影が雨雲のようにひろがる
石川 達三 / 花のない季節 amazon
亀の子のように怯えた顔
坂口 安吾 / オモチャ箱・狂人遺書(水鳥亭由来) amazon
眼前に黒い幕がおりるように見えなくなる
萩原 葉子 / 蕁麻の家 amazon
写真機のシャッターがおりるように急に闇になる
向田 邦子 / 思い出トランプ amazon
蝙蝠(こうもり)のように首をすくめる
水上 勉 / 越前竹人形 amazon
夕暮れのような暗さが顔一面に広がる
獅子 文六 / てんやわんや amazon
焔のような警戒心を消さない
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
心がハリネズミのように警戒心の棘を張る
阿刀田 高 / ナポレオン狂 amazon
無言の声が、見えない矢のように体のそここに突き刺さる
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
額から黒い脂汗がコールタールのように流れる
木山 捷平 / 苦いお茶 amazon
身に、眼には見えないこわばりの波が走る
黒井 千次 / 春の道標 amazon
緊張にしめ上げられて、全身の筋肉が古革のようにこわばり、首を動かしただけでも、ぎしぎし音を立てそうなほど
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
心の中に柵を設けて、真実を寄せつけまいとする
マイ・シューヴァル / バルコニーの男 amazon
水を流すような悪寒が走る
川端 康成 / 掌の小説 amazon
氷のような寒気が背から胸へつらぬいていく
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
背筋を蛇の肌で撫でられたような悪寒を覚える
阿刀田 高 / ナポレオン狂 amazon
病名を確かめたいくせに、はっきりと診断を下されることを恐れる患者のように、ぐずぐずと時間を稼ぐ
落合 恵子 / センチメンタル・シティ amazon
実際には数秒足らずの時間が、長い時が音を立てて流れつづけたように感じられる
小林久三 / わが子は殺人者 amazon
ほとんどまばたきするほどの時間だったが、停止したフィルムの場面の中にいるような気がする
灰谷 健次郎 / 太陽の子 amazon
黒い染みのような不審な思いを抱く
森 瑤子 / 風物語 (1984年) amazon
叩かれた犬のような眼をして後ずさりする
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
眉間に刀傷ほどもある皺を寄せる
島田 雅彦 / 未確認尾行物体 amazon
急性にアイスとコーヒーの間を往復すると、後で胃に砂袋を詰めたような嫌な感じが残る
荻野 アンナ / 背負い水 amazon
歯磨きのペーストが固まってこびりついているような、そんな感じのこわばり
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
彼女の目は一瞬凍りついたように見えた。瞳がふっとその色を失い、静かな水面に木の葉が落ちた時のように表情が微かに揺れた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
胃の中にはたいしたものは入っていなかった。吐くべきものもろくになかった。どろりとした(先ほど食べた)チョコレートの茶色い液を吐いてしまうと、あとは胃液か空気くらいしか出てこなかった。いちばん苦しい吐き方だ。体が痙攣するだけで、何も出てこない。体がしぼりあげられているような気がする。胃がこぶしくらいの大きさに縮んでしまうように感じられる。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
頭に溜まった吐気がまたスーッと降りていく時に、射精そっくりの快感があるのに気付いた
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
ジャマイカの土人達が好む皿と油で煮つめたスープのようなものが喉の奥に詰まっていて、それを吐き出したいと思う
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
水の中から引き上げられた犬か何かのように身をふるわせるばかり
野間 宏 / 真空地帯 amazon
数式の世界に逃げ込むことによって、現実というやっかいな檻を抜け出すことができた。頭の中のスイッチをオンにさえすれば、自分がそちらの世界に苦もなく移行できるという事実に、小さい頃から気づいていた。そしてその限りのない整合性の領域を探索し、歩きまわっているかぎり、彼はどこまでも自由だった。彼は巨大な建物の曲がりくねった廊下を進み、番号のふられたドアを次々に開けていった。新しい光景が眼前に開けるたびに、現実の世界に残してきた醜い痕跡は薄れ、あっさりと消え去っていった。数式の司る世界は、彼にとっての合法的な、そしてどこまでも安全な隠れ場所だった。天吾はその世界の地理を誰よりも正確に理解していたし、的確に正しいルートを選ぶことができた。誰もあとを追いかけてくることはできなかった。そちらの世界にいるあいだは、現実の世界が押しつけてくる規則や重荷をきれいに忘れ、無視することができた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
不吉な予感が暗い雲のように地平線に姿を見せていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
滝の直前まで来たら、小松はひとりで手近にある岩場にすっと飛び移ってしまうのではないだろうか。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
リトル・ピープルという言葉には不吉な響きが含まれていた。青豆の耳はその微かな響きを、遠くの雷鳴を聞くときのように感知することができた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
顔は透き通るほど白く、唇は霜が降りた花のようだった。
瀬名 秀明 / パラサイト・イヴ amazon
嘔吐感が、港一の荒くれ者の船に乗った時の五倍
又吉 直樹 / 火花 amazon
オーケストラの演奏が終わった時、誰もが息を呑み、場内が静まり返る。一呼吸置いてから、いっせいに喝采の拍手が鳴る。まさにそれと同じように、周囲はしんとして、それから悲鳴が鳴った。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
鈴木は肚をくくり、自らの内側で勇気という名の兵士達が蜂起するのを感じる。今こそ、立ち上がる時だ、と。@略@(その後ためらう)それ以上先に進んだら崖から落ちる、と無意識ながらに自分が察知しているかのようだった。威風を漂わす敵を前に、勇気の兵士達が足を止めた。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
あたかも胃に螺子のようなものがついていて、それをぎりぎりと締め上げられているかのような、痛みだった。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
行動の躊躇。重く沈んでいく日々の中に、留まっていたい感覚。そんな日々は不快であるのに、その不快さを味わっていたくなる。日々の倦怠は自分の血肉のようで、離れることがない。
中村文則 / 教団X amazon
頭の中では、困惑と疑問が竜巻のようになって、ぐるぐる回っているに
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
悲鳴はすぐには出ない。人々の無言が、透明の、無音の爆発を起こすかのようだ。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
皮膚がめくれ、焦げはじめるかのような恐怖を感じた。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
高所での綱渡りで、足を踏み外したかのような、寒気があった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
自分の幸運を、得体の知れない不運の怪物がかぶりつき、食い散らかしていく恐怖
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
物の怪に襲われたように首をちぢめて
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
雨のようにきりなく叩いてすぎる戦慄への予感
石原 慎太郎 / 行為と死 (1967年) amazon
刻々水位を増しはじめた不安の洪水
安部 公房 / 他人の顔 amazon
落ちつかない不安が、創口の血のように滲み出して来た。
林 芙美子 / 耳輪のついた馬「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
うそ寒いような怯気(おじけ)がすうっと彼の胸をかすめた
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
真昼の砂漠を歩いている獣にふいの暗黒と羽ばたきと猛禽の爪がおそいかかったような息苦しい不安
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
心臓は波のような動悸をうち
坂口 安吾 / 白痴 amazon
目が殺気立っていて、そのくせネズミみたいな臆病な光をこもらせていた。
古井 由吉 / 弟「古井由吉自撰作品 2 水/櫛の火 (古井由吉自撰作品【全8巻】)」に収録 amazon
氷を胸に当てられたようにヒヤリとした
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
鼠が物を引くように、おずおずと膝の前に散っている銀貨を拾った。
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
海老のように身を縮めて
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
貧困の脅威は曇天のように信輔の心を圧しはじめた。
近代作家用語研究会 / 作家用語索引 芥川龍之介 amazon
後から冷水のかかるのを待つ様な不安に襲われながら
正木不如丘 / 行路難
二人の眼は犬のようにお互いを見ることを、警戒し合ったのだ
伊藤 整 / 氾濫 amazon
小刻みの波のように戦(おのの)きが走った。
伊藤 整 / 氾濫 amazon
スーッと、神経が、一つところに凝結したような気味悪さを感じた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
世界中にたった一人置いてけぼりにされたように
森田 たま / もめん随筆 amazon
疑惑が鳥影のように須賀の頭を掠めた。
円地 文子 / 女坂 amazon
毀れた泥人形のように、つやを失った
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
すっかり固くなり、兵隊のように、「はあ、はあ」と返事しているだけであった。
伊藤 整 / 氾濫 amazon
膝のあたりに水をかけられるような不気味さ
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
血色のすぐれない雪解けのような顔
林 芙美子 / 市立女学校「林芙美子作品集〈第2巻〉清貧の書 (1956年)」に収録 amazon
お互いに傷ついた犬の哀れさで寄り合っていた。
佐多 稲子 / くれない amazon
松毛虫をつまんだようにぞっと背すじへ走る
森田 たま / もめん随筆 amazon
藪ん中の蛇みたいに油断のならぬ奴
鶏飼いのコムミュニスト「全集・現代文学の発見〈第6巻〉黒いユーモア (1976年)」に収録 amazon
宙に浮いているような心もとない気分
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
時計の針がとまったように一向に夜が更けぬ。
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
汗は澱粉(でんぷん)をまぶしたようにさらさらしていた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
熱情は、その瞬間に灰をかぶったように暗澹となり
佐多 稲子 / くれない amazon
額から流れおちる滝のような汗
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
玻璃(がらす)細工のような瞳でアリスを見ている。
長野 まゆみ / 少年アリス amazon
ふと、秋の冷気に似たものが晉作の背筋を走った。思想と名づけるには、あまりに形のなさすぎる、だが感情と呼ぶには、厚味のありすぎる、強いて例えれば、眼にみえない手によって白刃を胸もとにつきつけられたような戦慄感であった。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
修羅のように青ざめて
梅崎 春生 / 日の果て amazon
全身がひきつるように痙攣する。まるで氷の中にいるようだ。間断なく戦慄がおこり、がちがちと歯と歯がぶつかりあう。
北 杜夫 / 谿間にて「新潮日本文学 61 北杜夫集―楡家の人びと・他」に収録 amazon
汗が体いちめんをゴム膜のようにおおっているのを感じていた。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
高利貸にでも飛び込まれた様に不安な顔付をして
夏目 漱石 / 吾輩は猫である amazon
胎児のように身をちぢめなければならぬ
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
下腹に風を入れられたような恐怖とも驚愕とも説明のできぬ気持
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
私は仔犬のようにまろくなって座敷の隅にちぢかまっていた。
森田 たま / もめん随筆 amazon
夜明けの寒気が彼の全身を感覚のない石のようにかたまらせていた。
坂口 安吾 / 白痴 amazon
二つのおびえた顔が鼠のようにのぞいていた。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
まるで猫の眼に射すくめられた鼠のように、心を屈ませて、青春のよろこびさえもなく、おどおどしながら、一生をすりへらしてしまったおみね。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
眉間に蜘蛛の巣状の皺を寄せ
島田 雅彦 / ドンナ・アンナ amazon
ねばっこい油のような汗
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
顔色の悪いことといったらまるで死人のようなのですもの。
長与善郎 / 陸奥直次郎 amazon
犬ころのように丸くなっている彼の背
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
ふいっとラムネの玉が咽喉(のど)につかえたように、そして身体中がかたくこわばって
吉屋 信子 / 妻も恋す「女の暦・妻も恋す (1951年) (傑作長編小説全集〈第6〉)」に収録 amazon
絹針のように細く鋭い女の叫喚(さけび)
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
闘志を失った犬のように、吉良常は首をすくませた。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
動悸が激しく鳴る。かくれんぼをする時の子供のような胸さわぎだ。
林 芙美子 / うず潮 (1964年) amazon
自分の不安な心を見るようにランプの揺れる芯を凝視して
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
その報告は聞く者の心に白刃を突き通されたような戦慄をあたえた。
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
彼は白ペンキのように青ざめて
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
全身に冷水を浴びせられたように悸然(ぎょっ)とした。
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
咽(のど)をしめつけられるような恐怖が私を襲ってきた。
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
ビールの汗で、私は湿ったオブラートに包まれたようにベトベトしていた。
葉山 嘉樹 / 淫売婦 amazon
疑いが、蛇のように私の胸の中で頭をもたげた。
伊藤 整 / 火の鳥 (1958年) amazon
すっぽんのように背を曲げて
林 芙美子 / 牛肉「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
胸の折れてゆくような不安
佐多 稲子 / くれない amazon
紙のように青ざめて、呆然としている。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに (1954年) amazon
息ぐるしい。まるで生きながら、棺桶の蓋をされ、墓穴に吊り降されたようだ。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
胸に苦しい浪が打ち寄せ
太宰 治 / 斜陽 amazon
時はあぶらの垂れるゆるやかさで過ぎた。
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
片山の顔がまた青くなった。信号並みによく色が変わるのだ。
赤川 次郎 / 三毛猫ホームズの推理 amazon
酔いが兄の気持の中でシーソーのようになっていた二つのもののうち、一方に重みをかけた。
庄野 潤三 / 相客「新潮日本文学 55 庄野潤三集 浮き燈台 愛撫 舞踏 プールサイド小景 机 相客 蟹 静物 二つの家族 道 雷鳴 冬枯 他」に収録 amazon
棒のように佇(た)ち竦(すく)んだ。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
京子の顔には、犬のような恐怖と驚愕だけがあった。
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
大理石の彫像の足元を蝕(むしば)み出したしみのように、初めは曇りに似て、やがては石の影とも違いはっきりと眼に映るしみのように拡がる焦だちと、おびえ
石原 慎太郎 / 行為と死 (1967年) amazon
水から上った鳥のように身震いして
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
亀の子のように首を縮こめて
嘉村 礒多 / 業苦 amazon
塩をまかれたナメクジのように萎縮するばかりであった。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
不自然な姿勢を動かすこともできず、背中は氷の板のように冷たく硬ばっていた。
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
ひよこのようにきょうだい三人よりあって
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
濃霧に塞がれた森の中へ踏み込むような一種の不安
長塚 節 / 土 amazon
雌豹(めひょう)の群に襲われた驢馬(ろば)のようにおどおどして
中 勘助 / 銀の匙 amazon
希望と闘志が影のようにうすれて行った。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
こう思いつくと、まるでそれまで思い設けなかった火の玉のような不安が、身をかわすひまもない速さで、降りかかって来た。
里見 トン / 河豚「初舞台・彼岸花 里見トン作品選 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
奈落の底へでも落ちたように心細かった。
久保田 万太郎 / 春泥 amazon
恐怖と不安とが、まるで突然天からまいおりてくる鳥のように、ひょいと彼のうちにやってくる
野間 宏 / 真空地帯 amazon
不安はあおられて焰のように広がる。
島尾 敏雄 / 死の棘 amazon
ことばの通じない外国へでもきたような心細さ
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
繃帯の隙間を、ねばねばした汗が、虫のように這いずりはじめる。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
大きな汗がにじんで、頬の方に玉のように流れ落ちていた。
阿部 知二 / 冬の宿 amazon
びしょ濡れの犬みたいに、激しく身震いをして
安部 公房 / 他人の顔 amazon
泥沼の水面にのぼってくる穢(きた)ない泡のように、胸にこみあげるその疑惑
遠藤 周作 / 影法師 amazon
不安は深まった。霧の中の船が、不断に汽笛を鳴らすように、町子も手を束ねてはいられなかった。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
崖縁に足を踏み出すような怖しさ
伊藤 整 / 火の鳥 (1958年) amazon
どぶ鼠のように、おずおずした眼つき
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
まるで、果てしのない沙漠へでも出発するかのように私をひどく不安がらせた。
林 芙美子 / 清貧の書 amazon
富豪の邸宅の留守中に上り込んでいるような不安で空虚なものが心にかげって来る。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
彼は停電したようにプッツリ意識を失なった。
島田 雅彦 / 聖アカヒト伝「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
膝が金具のようにがくがく鳴って
平林 たい子 / こういう女・施療室にて amazon
心細さが、みんなの胸の中にだんだん、重石のようにしずんでゆく。
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
一瞬血の逆流するような恐怖
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
疑惑が渦になってわき上って
島尾 敏雄 / 死の棘 amazon
君は、ともすると古木の皮のように固まってしまおうとする私を真向から叩き壊し
鈴木 藤太郎 / 子供記 amazon
目つきはよく言えば鋭く、悪く言えば常に疑わしげで、爬虫類のようにギョロギョロと動く。背中が丸まっているせいで、人の顔を見る時はどうしても下から窺うようになり、初対面の人には十中八九不快な印象を与える。
暗い眼差しは、底の見えない壺に広がる空洞のようだった。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
悪寒がする。ねっとりと湿ったヘビのような悪意が、自分の足を伝い、体内に侵入してくるような不気味さに覆われる。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
靴の裏が梯子から滑る。心臓がそのまま下に落ちたのではないか、それくらい驚いた。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
恐ろしい高さだった。内臓がすべて風に晒されたかのような、恐怖に襲われる。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
手が震える。必死にイアフォンのコードを引っ張り耳に突っ込む。麻薬中毒がドラッグを求める姿と似ていた。不安感が自分を押し潰す前に、クスリを投与しなくてはいけない。クスリは耳から注入する。ウォークマンの再生ボタンを押した。 病院の名は、「ビートルズ」だ。この場合の薬剤師はきっと、「ジョージ・ハリスン」で、薬の名前は、「HERE COMES THE SUN」だった。 ボリュームを上げ目を閉じ、じっと聴く。「It's All Right」と繰り返される。豊田はそれを自分の中で何度も繰り返した。「大丈夫だ。大丈夫だ。It's All Right」と繰り返し、不安感を取り除いていく。二回同じ曲を聴く。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
カーティスの顔はまるで砂絵の砂が風に吹き飛ばされるように輪郭を失い、気づいた時、翔は薄暗い店内にいた。
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
鉛のように重苦しい集計時間が過ぎていく。
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
Tシャツの胸の辺りは汗染みで赤ん坊の涎掛けのよう
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
生理痛とは違う、ちくちく鋭い痛みが胃のあたりでしていた。一寸法師をのみこんだ鬼のつらさが、理解できる。そんな痛みだ。@略@針の剣で胃の粘膜を突き刺されているような痛みが止まらない。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
生まれて初めて心の底から恐怖が這い上がってくる。黒々と光る地底の虫のような恐怖だった。彼らは目を持たず、憐みを持たなかった。そして鼠を彼らと同じ地の底にひきずり込もうとしていた。鼠は彼らのぬめりを体中に感じる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
まるで蠟燭を吹き消した後に立ちのぼる一筋の白い煙のように、彼の心の中の何かが闇をしばらくの間漂いそして消えた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
まっくらな海でおぼれ、息ができなくなり、暗やみに溶け込んでしまいそうで。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
二人は傷ついた小鳥のように寄り添い
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
彼の目つきは、精神科医というよりも患者のように怯えていた。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
汗だけが小さな生き物のように皮膚の上をじりじりと移動をする。これの感触はかゆみに近しいな。
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
胸に立ちのぼってくる煙のようなおそろしさを止めることができなくなっていた。
川上 未映子 / あなたたちの恋愛は瀕死「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
顔面が真っ青で幽霊が飛び込んできたかと思ったほど
木山捷平 / 大安の日「白兎・苦いお茶・無門庵」に収録 amazon
半年の断食を終えたドラキュラ伯爵みたいな形相
大原まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
普段は晴れた日の澄んだ水面のように照り輝いている中宮の顔に恐れとも悲しみとも見える影が広がって
円地文子 / なまみこ物語 amazon
虫を詳細に眺めやがて泣き出す子供のような確実に恐怖に変わる感動
三島由紀夫 / 美徳のよろめき amazon
雌ヒョウの群れに襲われたロバにようにおどおどする
中勘助 / 銀の匙 amazon
その他の感情を表す比喩表現
比喩表現のカテゴリ