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音の響きの比喩を使った文章の一覧(559件)
遠くの方で犬の鳴く声が聞こえた。まるで別の世界の入口から聞こえてくるような小さなかすんだ鳴き声だった。
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
ロックを初めて聴く老人の気分だ。ただただうるさい。
せきしろ / 去年ルノアールで 完全版 amazon
ギターを弾くのって好きよ。小さくて、シンプルで、やさしくて・・・まるで小さなあたたかい部屋みたい
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
まるで広い草原に雨がやさしく降っているような曲
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
葦の葉のそよぎのような尺八楽
萩原 朔太郎 / 帰郷者 amazon
沼辺の葦のように、集まれば互いにただざわざわと騒ぐだけの村人
長塚 節 / 土 amazon
足音が、びろうどの上でも踏むように、軽くしとしとと地面に落ちる
谷崎 潤一郎 / 痴人の愛 amazon
湖水に降る雨の音のように、魂に道行く人々の足音が降り注ぐ
川端 康成 / 掌の小説 amazon
風の向きでときどき耳に立つ遠くの町の群衆の足音が、潮でも寄せて来るよう
徳田 秋声 / あらくれ amazon
乱軍のような足音が甲板に沸き立つ
本庄 陸男 / 石狩川 amazon
木製の人形が歩いているような足音
原田 康子 / 挽歌 amazon
機銃掃射が空間に穴をあけながら過ぎる
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
バリバリと油紙を破くような激しい雨音
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
こもるともなき雨の音が、部屋の内にこもっている
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
雨音の底を嘗(な)めるようにサンダルの音が近づいてくる
連城 三紀彦 / 棚の隅 amazon
糸を繰る座繰りの音が、驟雨のようにあちらこちらからにぎやかに聞こえる
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
雨の降る音に似たせせらぎの音が、涼しい風とともに頬に当たる
伊集院静 / 皐月 amazon
夜空が溶け落ちるように、雨が凄まじい響きを立てている
芥川 龍之介 / 地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇 amazon
雨の傘に落ちる音が、遠くの海を渡っていく女たちの啜(すす)り泣きのように耳に届く
高橋 三千綱 / 涙 amazon
傘をうつ雨の音が、遠くの地鳴りのよう
宮本 輝 / 星々の悲しみ amazon
帽子の縁にたまった雨水が滝のような音で落ちる
川端 康成 / 掌の小説 amazon
耳の中にまで雨水が流れ込んで気がするほど、雨の音が大きくなる
中沢 けい / 野ぶどうを摘む amazon
山上から矢を雨のごとく注ぐ
中島 敦 / 李陵 amazon
日照りで乾いた大地が雨を吸い込むように、声が胸にヒタヒタとしみこむ
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
アルミの鍋蓋を重ねるような雑音
永井 龍男 / 青梅雨 amazon
聞かれたくないことばかりにピンと反応するアンテナの感度といったら、スパイ衛星並みの耳
宮部 みゆき / 我らが隣人の犯罪 amazon
喘息患者の息づかいのような電気ストーブの小さな音
丸谷 才一 / 年の残り amazon
葉に雨がぶつかり、小石を屋根に散らしたような音があちこちから聞こえる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
静寂が泉のように胸の中に溢れて来る
福永 武彦 / 草の花 amazon
クレーンが動きはじめると、犬のうなるような低い音が聞こえてくる
灰谷 健次郎 / 太陽の子 amazon
地面の底から聞こえてくるようないやな音
長崎 源之助 / ゲンのいた谷 amazon
海底の牛が啼くような鈍い汽笛
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
貨物船の霧笛が、群れをはぐれた仔牛のような鋭い悲鳴を上げ始める。霧笛はそれぞれの音階に短く長く闇を貫き、山の方向へ飛ぶ。
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
ストーブが獣のうなり声みたいにウーウーと鳴る
石森 延男 / コタンの口笛 第2部 amazon
永遠のありかたを静かに示しているように、波の音が単調に反覆を繰り返す
芝木 好子 / 女ひとり amazon
母親がわが子を抱えるようなあたたかい伴奏
石森 延男 / コタンの口笛 第2部 amazon
看板が転んだような大きな音
伊集院 静 / 三年坂 amazon
ちょっとした炊き出し現場のような騒ぎ
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
オモチャ箱をひっくり返したようなドンチャン騒ぎ
坂口 安吾 / 母の上京 amazon
大風の海のような凄まじい物音が、河原の石さえ走らせそうにどっと沸き返る
芥川 龍之介 / 邪宗門 (1977年) amazon
ざわざわという音が、平らな煙みたいに目の高さを漂う
村上春樹 / めくらやなぎと眠る女 amazon
濁った音が彗星の尾のようにぼうと耳朶(みみたぶ)にしばらく響く
夏目 漱石 / 門 amazon
音が耳の中に入り込んで苔のように張りつく
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
甘美な、生への誘惑のような音の波が、ホールの中をきらきらと光りながら走り抜ける
福永 武彦 / 草の花 amazon
髪が逆立つほど哀しく重い音
中島 みゆき / 泣かないで・女歌(おんなうた) amazon
獣が角を打ちつけているような底知れない重さがある音
高樹 のぶ子 / その細き道 (文春文庫 amazon
クラクションがかすれて錆びついたような音を出す
泉 優二 / さよならと言ってくれ amazon
地虫の鳴くようなスチームの音
日野 啓三 / 抱擁 amazon
豆を炒るような小銃を発散する音
今 東光 / 東光金蘭帖 amazon
壁に反響するピアノの音色の強弱が、深い井戸に落ち込んでいるような澄んだものを胸に訴える
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
歯軋りのような空調の音
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
腹の中を電流のように走り抜ける嫌な音
長崎 源之助 / ゲンのいた谷 amazon
腹にある力を根こそぎさらって行くような威嚇的な音
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
重量のある声が、巻かれた分厚い敷物をほどきひろげるように皆の胸に圧する
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
音楽は人間の内面を映す鏡みたいなもの
五木 寛之 / 海を見ていたジョニー amazon
脳天をトンカチで叩くような感じの音楽
干刈 あがた / ゆっくり東京女子マラソン amazon
青蛙が鳴くみたいに金庫の錠前がギイギイと音を立てる
ジュール・ルナール / にんじん amazon
ホテルの廊下や広間の床が、秋の淡い雲が写る鏡のように静か
川端 康成 / 掌の小説 amazon
宿に着いた修学旅行の生徒のようにひとしきりザワつく
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon
音のあいまいな霧がひろがるように、遠い汽笛がおぼろげに伝わってくる
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
ひび割れた穴にさまざまな風が吹き入って、異様な音を立てて歌を歌う
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
吹き下ろし舞い上がる風の手がシートを叩く
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
巨獣が吼えるごとくごうごうと哮(たけ)って吹きあたる風の音
長与 善郎 / 青銅の基督 amazon
敵意を含んだ風がびゅうびゅうと空に鳴る
福永 武彦 / 草の花 amazon
風の音が笑い声のようにたえまなく鳴る
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
締め出しを食った犬みたいに鼻を鳴らしている風
ジュール・ルナール / にんじん amazon
積み上げた杉材の隙間から隙間を、笛に似たやわらかな音を立てて風が抜けていく
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
吹き込んでくる風の音がピッチ感の悪いリコーダーのようで耳につく
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
スチール机の硬さを音にしたような靴音
中沢 けい / 野ぶどうを摘む amazon
低音は重いハンマーで叩くように、高音は猫の足が歩くように、音と音とが絡み合いもつれあう
五木 寛之 / 海を見ていたジョニー amazon
特大の包み紙を破くような雷鳴がとどろく
宮部 みゆき / 我らが隣人の犯罪 amazon
髪の毛が落ちる音さえ聞こえそうなほどシンとする
内館 牧子 / あしたがあるから amazon
枕元で雷が落ちたくらいの爆音
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
空を真二つに裂いたかと思われるほどの音を立てて雷が鳴る
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
百雷のような荒々しい軋り音
エドガー・アラン ポー / 落穴と振子 amazon
大きな音が頭を打ち、耳の底が抜けたような空白がやってくる
高樹 のぶ子 / その細き道 (文春文庫 amazon
外の騒ぎが、祭りに興じる見物人たちのどよめきのように聞こえる
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
風に靡いて擦れ合う葉の囀(さえず)りが、樹々が笑っているように聞こえる
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
木偶(でく)のように黙念と聴きいる
真継 伸彦 / 鮫 amazon
敏捷な小動物のように耳を澄ます
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
庇(ひさし)はトタン葺(ぶ)きになっているので、頭のすぐ上でバラバラと機関銃の一斉射撃を受けているような音が続いていた
椎名 誠 / 新橋烏森口青春篇 amazon
汽笛が乳色の朝靄を縫うようにして長々と響きわたる
久間 十義 / ヤポニカ・タペストリー amazon
開けっ放した窓からしばしば汽笛が悪魔のように入ってくる
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
鞭で宙を切るような鋭い汽笛
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
瀕死の野獣の悲鳴のような汽笛が聞こえる
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
礼拝がすんだあとの教会のように静まりかえっている
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
講義をきく教室のような静謐な場所
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
全身に声がぎりぎりと銹(さ)びた錐(きり)のように刺し込んでくる
有吉 佐和子 / 三婆(水と宝石) amazon
反響した声が霧のように舞い下りる
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
言葉が耳に、一本一本鋭く杭を打ち込むのに似て聞こえる
有吉 佐和子 / 華岡青洲の妻 amazon
音が出るところに、尖った釘が一本一本打ち込まれていくような靴音
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
波のとどろきが酔っぱらいの繰り言のようにしつこい
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
靴音が、夜の闇を歩く獣のようにひたひたと低い音で鳴る
中上 健次 / 枯木灘 amazon
ゴム底の靴音が、吸いつくような音をたて
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
粘りつくようなズックの靴音をひきずりながら
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
猛獣のように唸り喚く数十の輪転機
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
チェロの弦をふるわすような、脳髄の底を透明な振動をくぐって行くような響き
野間 宏 / 崩解感覚 amazon
水の底から発せられたもののように重い響きを伝える声
高井 有一 / 北の河 amazon
声がかすかな風のように胸に流れ込んでくる
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
声が投網のようにかぶさる
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
元気なおばさんの声が、グラデーションで沈んでくる
荻野 アンナ / 背負い水 amazon
からみあい、こだましあって、それ自体が魔物のように、声が闇の中をうねる
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
カンツォーネ歌手みたいにビンビン響かせるタイプの声
中島 みゆき / 泣かないで・女歌(おんなうた) amazon
雑然たる声が波のごとく沈んでまた起こる
長塚 節 / 土 amazon
暗い穴の底から響いてくるような声
干刈 あがた / しずかにわたすこがねのゆびわ amazon
氷の詰まった部屋のように冷ややかに静まり返る
高橋 三千綱 / 涙 amazon
ざわめきが一瞬氷の世界に閉ざされたように凍りついて静まり返る
高橋 三千綱 / 涙 amazon
梢の悲鳴が渦巻く白い闇の奥で甲高く鳴る
日野 啓三 / 抱擁 amazon
言葉が耳の中でシンバルの連打のように響く
勝目 梓 / 日蝕の街 amazon
美しい言葉の流れが光のように振ってくる
伊藤 整 / 青春 (1960年) amazon
子供たちの会話は、宝石のようにキラリと光る言葉を、もったいないほど何気なく撒き散らす
干刈 あがた / ゆっくり東京女子マラソン amazon
鼓膜が変になるような静けさ
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
静寂と寒気が身をつつみ、時間も空気も凝結したよう
加賀 乙彦 / フランドルの冬 amazon
タンバリンが、人の神経を逆撫でするようにチリチリと鳴る
森 瑤子 / 傷 amazon
沖から寄せる海嘯(かいしょう)の叫び声
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
線香花火のような雑音をずっと鳴らし続けている
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
ガリガリという、鮫がボートの船底を齧(かじ)るような音
景山 民夫 / 遠い海から来たCOO amazon
追い込まれたばかりの豚小舎のように賑やかに騒々しい
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
戦場のような騒音の広間
加賀 乙彦 / フランドルの冬 amazon
焙烙(ほうろく)で煎られる豆のように騒ぐのみで、実効のある戦ができない
司馬 遼太郎 / 最後の将軍 amazon
植え込みが臆病な動物の群れのようにざわめく
宮部 みゆき / 我らが隣人の犯罪 amazon
ざわざわざわっと林がゆれるようにざわめきが走る
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
つむじ風に襲われたように一座がざわめく
本庄 陸男 / 石狩川 amazon
湯の中の屁のようなざわめき
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
気ままに散歩するようなフレーズ
五木 寛之 / ワルシャワの燕たち amazon
赤城おろしが吹き渡って、寺の裏の森が潮のように鳴る
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
波の響き交わしが、潮のように押し寄せる軍勢に囲まれた城の光景を思い起こさせる
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
潮騒が、海の健康な寝息のように規則正しく寧(やす)らかに聞こえる
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
静かというにはおそろしすぎる底なしの無音の世界
永井 路子 / 朱なる十字架 amazon
部屋の温度ががくっと下がったかのように森閑とする
幸田 文 / おとうと amazon
真空地帯みたいに静かな路地
田辺 聖子 / 休暇は終った amazon
たそがれのような静けさに満ちる
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
生気に満ちた音がすっかり掃き清められたようになっていた。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
雨滴が窓枠にしみこむ音まで聴こえそうなほどの静寂が、重くるしくあたりを支配する
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
空気の音がジーンと地虫のように聞こえる静寂
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
草の芽の伸びる音さえ聞き取れそうにあたりは静か
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
造り花の蓮華にふる日の光の音さえ聞こえるくらいしんと静まり返る
芥川 龍之介 / 邪宗門 (1977年) amazon
蜂の大群がいっせいに巣を飛び立つ寸前のような、ぶっそうな静けさ
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
不気味な静寂が、いまにも破裂しそうな気配をはらんで、風船のようにふくれ上がる
ウィリアム・アイリッシュ / 黒いカーテン amazon
ひそかに時を刻んでいる時限爆弾みたいな静けさ
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
ロビーが一瞬、冷蔵庫と化して、そこにいる人たちを沈黙させる
島田 雅彦 / 未確認尾行物体 amazon
シーンと耳が沁(し)む、耳が痛むような静寂
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
地面の底に沈んでいくようにしんと静かになる
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
しんしんと静寂の中に引っ張り込まれるような無人の気配
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
総ての光彩を消したような閑寂な風景
外村 繁 / 筏 amazon
壁越しに聞く人の呟きのようにひそやかで、しめやかで、親しげな水のせせらぎ
大岡 昇平 / 野火 amazon
担いだ竹が、尻尾のように葉音を鳴らしながらついて来る
伊集院 静 / 三年坂 amazon
ベースの音が地響きのような震動になって身体の芯につきささる
三田 誠広 / 僕って何 amazon
地響きが地の底で大太鼓でも打つ不気味さで、少しずつ少しずつ大きくなり、まっしぐらに接近してくる
杉本 苑子 / 今昔物語ふぁんたじあ amazon
陽照りで乾いた大地が雨に吸いこむように、声が胸にヒタヒタとしみこむ
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
巨大な滝壺の中にでもいるような物凄いノイズ音のシャワー
辻 仁成 / グラスウールの城 amazon
はずみをくらった小さな動物のように、弾倉が軽い音で回転する
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
平手打ちの音が、ロビーのドーム全体がシンバルになったかのように響き渡る
島田 雅彦 / 未確認尾行物体 amazon
声が物語の最後の一行のように、踊り場に吸い込まれていく
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
走らせばひなびた鈴のような音を立てる杼(ひ)
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
雨が雑木林に砂のような音を立てる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
樹々の葉が砂のように乾いた音をたてて鳴る
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
砂時計の無慈悲なしたたりのように心をしめつける音
島尾 敏雄 / 島尾敏雄 amazon
玉を砕くような鋭い音
菊池 寛 / 恩讐の彼方に amazon
小川のせせらぎが、どこか遠くから響いてくるように眠たげ
山本 周五郎 / やぶからし amazon
谷音が天の旋律のように心を魅了する
中河 与一 / 天の夕顔 amazon
緑川は、『ラウンド・ミッドナイト』をためらいがちに弾き始めた。最初のうち、まるで谷川に足を入れて流れの速さや足場を探る人のように、ひとつひとつの和音を彼は丁寧に用心深く弾いた。テーマが終わり、長いアドリブがそれに続いた。時間が経つにつれ、彼の指は水に馴染んだ魚のように、より敏捷に闊達に動き始めた。左手が右手を鼓舞し、右手が左手を刺激した。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
前に立って廊下を歩いていく彼女の歩幅は広く、靴音は誠実な鍛冶屋が早朝から立てる音のように硬く、的確だった。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
その静かなメランコリックな曲は、彼の心を包んでいる不定型な哀しみに、少しずつ輪郭を賦与していくことになる。まるで空中に潜む透明な生き物の表面に、無数の細かい花粉が付着し、その全体の形状が眼前に静かに浮かび上がっていくみたいに。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
ティーン・エイジャーから小銭を巻き上げるためのゴミのような大量消費音楽
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
ドラム缶を金属バットでジャスト・ミートしたような大きな音
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
音はまるで死そのもののように重く、冷たかった
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
何というか、特別な音だった。親密でスイートな音だ。いつも太陽が輝いていて、海の香りがして、となりに綺麗な女の子が寝転んでいるような音だ。唄を聴いているとそういう世界が本当に存在しているような気持ちになった。いつまでもみんなが若く、いつまでも何もかもが輝いているようなそういう神話的世界だよ。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
ソニック・ブームのような激しい音がびりびりと空気を震わせた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
線を切られてしまった電話機のような完璧な沈黙
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
不自然なほど大きく響いた。まるで巨大な耳の中の巨大な増幅器官を叩いたみたいに。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
雨はいろいろな場所で弾ねて様々な違った音を立てる。草と小石と土の上に、吸い込まれるように落ちる雨は、小さな楽器を思わせる音で降る。手の平に乗る程の玩具のピアノみたいなその音は、まだ残るヘロインの余波がたてる耳鳴りに重なる。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
見下ろす水面は、波と波紋が交錯し、ちょうど番組が全て終了した後のテレビそっくりに、雷を反射して光り輝いている
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
柚子の樹に包まれた家々は、ひっそりと静まりかえり、どこからも物音ひとつ聞えない。音という音はすべて、無数の柚子の実が吸いとってしまうのだろうか。
瀬戸内 寂聴 / 私の京都 小説の旅 amazon
風に木立の騒ぐ音が遠く水の流れのように聞えた。
島木 健作 / 第一義
神様が鼻をかむような笛太鼓の音
石坂 洋次郎 / お山「わが日わが夢」に収録 amazon
地から湧き出るような
石坂 洋次郎 / お山「わが日わが夢」に収録 amazon
空気を断ち切るような金属音
梅崎 春生 / 桜島 amazon
家をゆすって遠いかみなりのような地ひびきをさせ、なにかが通っていきました。
松谷 みよ子 / はと「黒い蝶・うさぎのてぶくろ ほか (松谷みよ子全集)」に収録 amazon
教室の中は、蜂の巣をつついたような騒音に満たされていた。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
いろいろの雑音……がすべて彼の睡い耳に溶け合って、さながら子守唄のように聞かれた。
相馬 泰三 / 六月 amazon
曲が終わると再びざわめきが起こったがそれはステージの外のもう一つの楽器のように自然なものだった。
村上 龍 / 恋はいつも未知なもの amazon
雑多なざわめきの音が、閉じ込められた暗い校内に海鳴りのように遠く近く響いていた。
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
風に吹かれる林のようにひしめきざわめいた
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
花嫁を待ちうけている玄関には鳥の一斉に飛立つようなざわめきが起った。
円地 文子 / 女坂 amazon
私は哲生のたてる物音を子守歌のように頼もしく感じて眠りについた。
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
士卒たちが坐りなおすと具足と具足の触れる音がした。それは何となくきな臭いような感じの物音。
井伏 鱒二 / さざなみ軍記 amazon
あたりが寝静まると、家のどこかが微かに軋みはじめる。それが、時には、家の歯ぎしりのようにきこえる。時には、すすり泣きのようにもきこえる。
三浦 哲郎 / みちづれ―短篇集モザイク〈1〉 amazon
まるで廊下で四股を踏まれるような騒々しい足音
宇野浩二 / 蔵の中 amazon
廊下を駈ける足音が雪崩のように響き渡った。
小杉 天外 / 初すがた amazon
家内を歩く足音が水底のように冷めたく心の中へも響いて聞える。
水上 瀧太郎 / 山の手の子「俤 (百年文庫)」に収録 amazon
列車の爆音は電光のようなすさまじい色彩を放った。
檀 一雄 / 花筐「花筐・白雲悠々―檀一雄作品選 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
地軸もろとも引き裂くような爆発音
坂口 安吾 / 白痴 amazon
九六艦爆が三機、すぐそばで唸りつづけるので、脳をやられて、地球を頭にささえたような重ッたいかんじで
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
石臼をひくように遠くから起って来た雷
火野 葦平 / 糞尿譚 (1948年) amazon
続けさまに、稲妻がアセチリン瓦斯(ガス)のように青く光り、すぐ頭の上で凄い雷鳴が轟きわたる。
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊 麦と兵隊 (〈1〉)」に収録 amazon
烈しい笛の音のように、ヒュウヒュウと鳴る風の音
広津 和郎 / やもり「広津和郎全集〈第1巻〉小説 (1973年)」に収録 amazon
武蔵野の寒い風の盛んに吹く日で裏の古樹には潮の鳴るような音が凄じく聞えた。
田山 花袋 / 蒲団 amazon
胸の中をふきぬけるような風の音
梅崎 春生 / 桜島 amazon
窓のそとは絶えず吠えるような風の音が続き
宇野 千代 / 色ざんげ amazon
破れた太鼓を敲くような侘しい音を立てて、雨が天幕の上に落ちて来る。
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)」に収録 amazon
氷を割るようなひどい雨の音が雨戸を叩いた。
林 芙美子 / 牡蠣「清貧の書・牡蠣 (1953年) (新潮文庫〈第536〉)」に収録 amazon
雨がいつか本降りになって、廂(ひさし)に早瀬のような音を立てた。
獅子 文六 / 胡椒息子 (1953年) amazon
間断なく電光がうねり、まるで爆撃機の絨毯爆撃のように凄まじい破裂音がとどろいた。
北 杜夫 / 谿間にて「新潮日本文学 61 北杜夫集―楡家の人びと・他」に収録 amazon
雨音は厚い緞帳(どんちょう)のように戸外をとざしていた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
眠りのうえを、優しい恋人の愛撫のように、微かな雨脚が渡りつづけているのだ。
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
雪の鳴るような静けさが身にしみて
川端 康成 / 雪国 amazon
あんまり静かなので、波の音が腹にはいって来るようだ。
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
綿の棒で大地を撲ったような波の音
梶井 基次郎 / 冬の蠅 amazon
その浪音は、私の耳に、手放しに泣き叫んでいるようにも、また手放しに哄笑しているようにも、かわるがわるに聞えてくるのです。
阿部 知二 / 黒い影 (1950年) amazon
波濤の音は@略@性急に噛みつくように聞えた。
阿部 知二 / 黒い影 (1950年) amazon
太鼓の音のような海鳴り
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
雨の日も天気の日も、まるでホラ貝が鳴っているように殷々(いんいん)と海が鳴っていた。
林 芙美子 / 耳輪のついた馬「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
風雨は激しく、窓外はまるでつなみのような音をたてて樹木が鳴っていた。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
けしゴムみたいに小さな(猫の)足音
松谷 みよ子 / ジャムねこさん amazon
風にながされる花びらのように、クラリネットからながれていく音楽にのって、フワーッとながれていった。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
彼らは沼辺の葦のように集まれば互いにただざわざわと騷ぐ
長塚 節 / 土 amazon
一斉に鳴り出すオルガンみたいだった
中山 義秀 / 醜の花「厚物咲・碑 (1949年) (春陽堂文庫〈第54〉)」に収録 amazon
空気ははっとするほど新鮮で、あたりには静寂が満ちていた。それにあわせて聴覚を調整しなおさなくてはならないほど深い静寂だった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
部屋の中はどこまでもしんとしていた。耳を澄ませると、その静寂にはいくつかの意味あいが含まれているように天吾には感じられた。ただ物音ひとつしないというだけではない。沈黙自体が自らについて何かを語っているようだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
自動車がクラクションを鳴らす音が聞こえた。大型トラック特有の、霧笛のような深い音だ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
ほら、よく聴いて。まず最初に、小さな子供が発するような、はっとする長い叫び声があるの。驚きだか、喜びのほとばしりだか、幸福の訴えだか。それが愉しい吐息になって、美しい水路をくねりながら進んでいって、どこか端正な人知れない場所に、さらりと吸い込まれていくの。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
ピッコロが小鳥のさえずりのような軽快なトリルを演奏していた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
聴き取れるのは自らの心臓の鼓動だけだった。その鼓動を聞いているうちに、自分が卑劣な盗賊になって、夜中に他人の家に忍び込んでいるみたいな気がしてきた。物陰に隠れ、息を殺して、家人が寝静まるのを待っているのだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
雷鳴は続いていた。しかし稲妻は見えない。遠い砲声のような音が轟いているだけだ。戦場はまだ彼方にある。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
雷が大きく空に鳴り響いた。窓ガラスが細かく震えた。しかしまだ雷光はない。雨音も聞こえない。天吾は昔見た潜水艦の映画を思い出した。爆雷が次々に爆発し、艦を激しく揺らせる。しかし人々は真っ暗な鋼鉄の箱の中に閉じこめられ、内側からは何も見えない。そこにあるのは絶え間のない音と振動だけだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
太平洋の荒い波だ。多くの魂が集まって、銘々の物語を囁きあっているような、太く暗い響きがそこにはあった。その集まりは更に多くの魂の参加を求めているようだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
しばらく目を閉じ、やさしく呼吸をしていた。まるで文章の余韻に身を浸しているみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
小松からかかってきた電話はなんとなくそれとわかる。ベルがせわしなく神経質な鳴り方をするのだ。まるで指先で机の表面をとんとんと執拗に叩き続けているみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
意識の半分を空っぽにして休ませ、残りの半分で考え事をした。そしてダヴィッド・オイストラフの演奏するシベリウスの音楽は、主にその空っぽの領域を通り過ぎていった。そよ風のように広く開け放たれた入り口から入り、広く開け放たれた出口から出ていった。音楽の聴き方としてはあまりほめられたものではないかもしれない。@略@音楽を右から左に聴き流しながら、意識の空っぽではない方の半分でとりとめもなく思考を巡らせた。そういうとき、彼は対象を限定することなくものを考えるのが好きだった。犬たちを広大な野原に放つように、意識を自由に駆けめぐらせるのだ。どこでも好きなところに行って、なんでも好きなことをしてくればいいと彼らに言って、あとは放っておく。彼自身は首まで湯につかり、目を細め、音楽を聴くともなく聴きながらぼんやりとしている。犬たちがあてもなくはねまわり、坂道を転げまわり、飽きることなく互いを追いかけ合い、リスをみつけて無益な追跡をし、泥だらけになり草だらけになり、遊び疲れて戻ってくると、牛河はその頭を撫で、また首輪をつける。その頃には音楽も終わっている。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
風が(葉の落ちた)ケヤキの枝のあいだを、鋭い音を立てて抜けていった。絶望を知った人の歯の隙間から出て行く酷薄な息のように。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
昼間のラジオ番組は主婦と高齢者を主なリスナーと設定して作られている。出演している人々は気の抜けた冗談を口にし、意味のない馬鹿笑いをし、月並みで愚かしい意見を述べ、耳を覆いたくなる音楽をかけた。そして誰も欲しがらないような商品を声高に宣伝した。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
ケヤキの枝先が、警告を与える古老の指のようにひからびた音を立てて震えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
、ラジオのチューニングをするときのように、まわりの世界が立てる物音に丁寧に耳を澄ませる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
枝を踏むことになり、それが音を立てた。地面の整体でもするような、ぽきぽきという音は小気味良く
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
道路の流れはまだ滞っていた。苛立ったのか、前方の車からクラクションが鳴った。遠吠えに反応する犬のように、別の車からもクラクションが発せられる。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー 角川文庫 amazon
風のせいなのか、左右に揺れていた。そのたびに葉が音を立てる。巨大な動物が足踏みをして、体毛を震わせるかのようだった。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
長いあいだ動かなかった風見鶏が、風を受けてきしむときのような音
サン=テグジュペリ / 星の王子さま amazon
静かだ。まるで建物が主体で、中の人間達はひっそり生きてるかのように。
中村文則 / 教団X amazon
どん、と破裂するような音がしたのはその時だ。 勢い良く、鉄の杭を壁に打ち込むような、瞬間的ながら激しい響きが、聞こえた。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
夜桜を見る人で山の上は群がった蛾のように賑わった。
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
喧しさは、屠所であばれる豚みたいだ。声まで豚にそっくりだ。
小島 信夫 / 汽車の中「新潮日本文学 54 小島信夫集 小島信夫集 抱擁家族 アメリカン・スクール 吃音学院 他」に収録 amazon
どこかでピアノが鳴り始めた。いい音色で木の葉の舞い落ちて行くような爽やかさ
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
私の首もとでは松籟(しょうらい)のように、古い都のホテルの冷房装置の音が鳴りつづけていた。
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
浦賀のお爺さんの声が響き渡ると家じゅうが滝に打たれるように颯々(さつさつ)として
牧野 信一 / 淡雪 amazon
一晩じゅう、かけっぱなしの扇風機が動力が弱いせいか空缶を引きずるような音をたてて鈍くまわっていた。
林 芙美子 / ボルネオダイヤ「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
その時バイオリンがまた鳴った。今度は高い音(ね)と低い音が二、三度急に続いて響いた。それでぱったり消えてしまった。三四郎はまったく西洋の音楽を知らない。しかし今の音は、けっして、まとまったものの一部分をひいたとは受け取れない。ただ鳴らしただけである。その無作法にただ鳴らしたところが三四郎の情緒によく合った。不意に天から二三粒落ちて来た、でたらめの雹のようである。
夏目 漱石 / 三四郎 amazon
物音もなく、ひっ込むような静寂がじめじめと周りの世界に澱んでいた。
石坂洋次郎 / 若い人 amazon
私は目を閉じ、耳を傾け、みどりの海底にいるようだと思った。
吉本ばなな / 哀しい予感 amazon
ラッパのさきは、朝顔のように口がひらいていた。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
ブランコの軋り音は、たえず歯ぎしりのように、東屋へ昇ってきた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
一時の騒ぎが大嵐の跡のように静まり
正宗 白鳥 / 何処へ「何処へ・入江のほとり (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
唄は淋しく幾度かくりかえされて、蝋燭の灯のもえつきるようにやがてしずかに消えた。
田宮 虎彦 / 足摺岬 amazon
爽やかに、甘く、物哀れに、ちょうど晩春の夕方のような情調をもって
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
肉を刻むような響きのない沈黙。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
普門寺は日だまりに転び寝したような閑寂さの中に古りさびていた。
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
山の流れが爽々と岩の間を流れてくるような、爽快な曲だった。
林 芙美子 / 林芙美子全集〈第15巻〉茶色の目 amazon
眠ったように静か
檀一雄 / 花筐
首をしめられたような町の中
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
静けさがあたりを支配し、あたかも深い水底にでも陥ったような心地
豊島 与志雄 / 理想の女 amazon
黒い小さい機械(電話)が、いきばって身を震わせ、喚(わめ)き立てているように感じた。
吉行 淳之介 / 闇のなかの祝祭 amazon
まるで教室は豆が弾(は)ぜたようだ。
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
ひっそりとして、真空のように閑(しず)か
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
まるで船全体が大鼓ででもあるように響きわたった。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
音色の細緻な階音に、まるで栗色の落葉でもふるような哀愁を感じた。
林 芙美子 / 市立女学校「林芙美子作品集〈第2巻〉清貧の書 (1956年)」に収録 amazon
頭の芯に何千もの針が突き刺さってくるような静けさ
高橋 三千綱 / 九月の空 amazon
茶の間はみじんこが沈むようにぴったりと静まる。
幸田 文 / 流れる amazon
けもののようにきき耳をたてて
野間 宏 / 真空地帯 amazon
それ(微かな悔い)は流れ星のように尾を引いて彼の心から消える
富田 常雄 / 姿三四郎〈上巻〉 amazon
突然それ(=号泣)が夜の沈黙に呑まれたようにフット消えて行く
中島 敦 / 李陵 amazon
不純な呼びかけを霧のような静けさで黙殺した。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
あたりはめりこむように静かである。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
陽気な管絃楽の音が、おさえがたい幸福の吐息のように、休みなく溢れて来るのであった。
芥川龍之介 / 舞踏会 amazon
夕方、ホテルの電話機のベルが短かく鳴った。仏壇の鉦を叩いたように、余韻がしばらく残った。
吉行 淳之介 / 闇のなかの祝祭 amazon
生徒は、がやがや、わやわや、まるで雀のけんかだった。
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
勝恵の答えは、いつも水の流れのように淡々と鈴木の耳にひびいた
永井龍男 / 青電車「朝霧・青電車その他 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
大風(たいふう)のあとのように、ひっそりとした街
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
自転車のタイヤが雪をくわえて鼠の鳴くように、きしんだ
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
まるで妻の声のようなそのやさしく粘り気のある音
筒井 康隆 / 夢の木坂分岐点 amazon
頭脳に針を刺すように響いた。
徳田 秋声 / 黴 amazon
会場は真夜中の墓場のように静まりかえった。
井上 ひさし / ブンとフン amazon
警笛(クラクソン)がジジーと嗄(しわが)れたような音を立てて鳴り始めた。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
始業のベルが鳴った。校舎のまわりの騒ぎは、潮がひくように静まって
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
音律不たしかな切な屁(へ)のような歌
幸田 露伴 / 連環記 amazon
道子は道々勉の喋る地理学的説明を、いつものように音楽でも聞くように聞いていた。
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
大気は死んだように静寂だ
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
波が巌(いわ)に打ちつけるようにしばらく騒いだ。
長塚 節 / 土 amazon
その音も、燈火を思わせるように、すぐに小さくなる。
石原 慎太郎 / 行為と死 (1967年) amazon
半分扉をおろしたようながらんとした静けさである。
佐多 稲子 / くれない amazon
丁度枕元をすり足で人が通るような森閑とした家構えで
林 芙美子 / 耳輪のついた馬「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
非常笛が鳴り響いた。そして引きつけた赤ン坊のように途切れて、また鳴りひびいた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
まるで噴き井戸から無限に溢れる音のように、ラジオはよくお喋りしている。
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
風に木の葉のざわつくように囁きかわしている。
森 鴎外 / 山椒大夫 amazon
楽譜が僕の眼にいぶかしい暗号のように映った。
福永 武彦 / 草の花 amazon
そのピアノの音色には、手帖を見ながら作った不出来なお菓子のような心易さがあり
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
子守唄のようになってかれのたましいをフワフワとねむりの国へさそいだしてくれる
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
おもちゃ箱を引っくりかえしたような賑わい
林 芙美子 / ボルネオダイヤ「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
やかましく鳴っていたラジオのスイッチを急に切りでもしたように、物音や人声がぴたっと止り
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
海のような(ピアノの)音
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
深い井戸に水滴のしたたるような音階で、食堂のピアノがぽつんぽつんと鳴った。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
声が、吹き抜けるように洞内にひびいた。
梅崎 春生 / 桜島 amazon
ふすまを開けて廊下に出た。まるで夢の中で見る日本家屋のようにひっそりしている。
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
大きな釜のようなたいこ
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
波の音かと思われる鼓(つづみ)や太鼓が浜風に伝わった。
徳田 秋声 / 縮図 amazon
大広間は森のように静かになった。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
あの町ですよ。昼寝しているように、いつも静かな
大仏 次郎 / 帰郷 amazon
玩具箱をひっくりかえしたような賑やかな
林 芙美子 / 浮雲 amazon
蒼い顔をした少年がハモニカを吹いていた。それはなにかお詫びでもしてるようなたよりない音色で
石坂 洋次郎 / 暁の合唱 (1954年) amazon
近所で、ラジオがやかましく煎りつくように鳴っている。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
胡弓の音が室内を水のように流れ
小田 岳夫 / 城外「城外・紫禁城の人―他二篇 (1957年) (角川文庫)」に収録 amazon
声は周波数の合わない通信機のように遠くで聞こえた。
長野 まゆみ / 少年アリス amazon
耳を塞がれたかと思うほど静か
竹西 寛子 / 天馬の丘「長城の風」に収録 amazon
まるで魔法のつえでひとなでされたようなしずけさ
小出 正吾 / ジンタの音「小出正吾児童文学全集 (3)」に収録 amazon
サナトリウム全体は死んだようにひっそりとしていた。
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
一台のピアノのフタをとると、歯のようなキイのうえをあたかも平四郎を脅かすふうに弾いてみせた。
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
胸に抱きしめた音楽は耳に聞こえるだけでなく、直接肺や心臓にもひびいてくる。まるで可憐な生物の鼓動のように。
清岡 卓行 / 初冬の大連「アカシヤの大連 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
引き裂くような機銃の音
梅崎 春生 / 桜島 amazon
電話はもう一度生物のように鳴り始めた。
曽野 綾子 / たまゆら amazon
まるで大地の中にめりこんだように、あたりはひっそりと静まりかえっている。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
江戸川の水を往復する通運丸の牛が吼えるような汽笛も身に沁みて
長塚 節 / 土 amazon
客達のささやき声が心地良い耳鳴りのように聞こえてきた。
村上 龍 / 恋はいつも未知なもの amazon
旦那らしきものの声は、水の壁に隔てられているかのように、ぼんやりとしか耳に入ってこない。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
手が震える。必死にイアフォンのコードを引っ張り耳に突っ込む。麻薬中毒がドラッグを求める姿と似ていた。不安感が自分を押し潰す前に、クスリを投与しなくてはいけない。クスリは耳から注入する。ウォークマンの再生ボタンを押した。 病院の名は、「ビートルズ」だ。この場合の薬剤師はきっと、「ジョージ・ハリスン」で、薬の名前は、「HERE COMES THE SUN」だった。 ボリュームを上げ目を閉じ、じっと聴く。「It's All Right」と繰り返される。豊田はそれを自分の中で何度も繰り返した。「大丈夫だ。大丈夫だ。It's All Right」と繰り返し、不安感を取り除いていく。二回同じ曲を聴く。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
どこかで銃声が鳴った気がした。@略@車のバックファイアーの音にも聞こえた。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
三日ぶりに開いたのに着信もメールもゼロだった。@略@だるまさんがころんだで鬼になって、かなりもったいぶって、だ~る~まさ~んがこ~ろ~んだっ! とやったのに振り向いたらだれもいなかった、みたいな心境だ。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
戦争が始まったかのようだった。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
ロックコンサート並みに騒がしい
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
大部屋は老人病棟のように静まり返っていた。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
静かなフロアに小さな声の雨粒が落ち、次第に雨足が強まり、やがては土砂降りの声となっていつも通りの大部屋へと戻っていった。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
「くっそう、このボロ携帯。とっとと鳴らないと塩漬けにするわよ」 忠実な犬が主人の恫喝に怯え従うように、美咲の手の中で、携帯が震えた。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
成績表にずらりとAを並べた女子学生がよくやる笑い方だったが、それは奇妙に長い間僕の心に残った。まるで「不思議の国のアリス」に出てくるチェシャ猫のように、彼女が消えた後もその笑いだけが残っていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
誰も電話には出ない。電話は死を予感した象のように何度か狂おしく鳴き叫び(32回というのが僕の数えた最高だ)、そして死んだ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
カー・ラジオは古い艶歌をがなり立てていた。はね上げ式の方向指示器くらい古くさい歌だった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
心が痛くなるような二オクターヴの音階練習
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
北欧風の小さな白木のベッドだ。二人が乗ると、公園のボートのような軋んだ音を立てる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
ロックという弾丸が鼓膜を突き破りヒロトに刺さった。
水道橋博士「藝人春秋 (文春文庫)」に収録 amazon
一歩一歩足をのせるたびに、木の階段はつぶやくようにみしみし軋んだ。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
夫が雛鳥みたいに騒がしい
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
あくびでもするかのように間の抜けた汽笛をば太く鈍く響かせるばかり
永井荷風 / ふらんす物語 amazon
足音がガランとした室内に楔(くさび)のように響きわたった
村上春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート(タクシーに乗った男) amazon
雨で水かさを増した川音がズシンズシンとまるでだれかに背中をどやされるみたいに響いてくる
三浦哲郎 / ユタと不思議な仲間たち amazon
岩を噛む波の音が嵐のように凄まじく聞こえる
円地文子 / 女坂 amazon
生まれた家では、夜おそくよく汽笛が響いてきた。天井板のこみいった木目に怯えて、寝付かれない子どもの耳に、それが騒音というにはあまりにもか細い、なにか優しい未知の華やかさのように聞こえてきた。ちょうどそれは、おもいがけない遠くでさざめいている都の夜のようなものである。
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
風のように夢のように、かすかな律動でそよぎたつ糸の音
宮本輝 / 蛍川 amazon
川音は賑わい、まるで誰かがしゃべっているよう
萩原葉子 / 蕁麻の家 amazon
ガラスの楽器のような澄んだ音色
阿部昭 / 阿部昭18の短篇(あこがれ) amazon
ガラスのふちを叩くような明るく澄んだ音
阿部昭 / 阿部昭18の短篇(あこがれ) amazon
聴くまいとするのに耳が起きている。時計が兵隊の行進のようだ。
幸田文 / 流れる amazon
喫茶店から甘い、くすぐるような音楽が聞こえてくる
遠藤周作 / 海と毒薬 amazon
汽笛は、---花野のひとひを笛のような音を立てて逃れてゆく秋嵐のように思われた
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
虚空に短い笛のような音で風が唸る
山川方夫 / 海岸公園 amazon
小屋に灯がともるように音楽がはじまる
五木寛之 / 海を見ていたジョニー amazon
ごぼごぼと物の煮えたぎるような音
石坂洋次郎 / 青い山脈 amazon
車窓を擦過する木の枝葉は、あわてものの鳥の翼のような音をさせ
三島由紀夫 / 真夏の死 amazon
たった今土の底から立ち上がったようなくぐもった声
高樹 のぶ子 / その細き道 (文春文庫 amazon
貯水タンクに叩きつける雨の音はまるで太鼓の音のよう
宇野千代 / 色ざんげ amazon
爪も切ってもらったし、耳も掃除してもらったし、髪も洗ってもらったしというような洗練された音楽
村上春樹 / 遠い太鼓 amazon
電話のベルが鳴った。ベルの音が頭の中に進入してきて、緑色のギザギザした光を放つ。
池澤夏樹 / 真昼のプリニウス amazon
遠く高い空の果てから、冷たい風の響きが悲しげに燈多き街の方へと走って行った
永井荷風 / 夢の女 amazon
ドォーン、ドォーン、ドォーンという轟音がまるで艦砲射撃みたいに続き
村上春樹 / 遠い太鼓 amazon
どこかで布団を叩く音が鞭のように聞こえる
高樹のぶ子 / その細き道(遠すぎる友) amazon
夏が自殺するかのような荒々しい雷の足音
川端康成 / 掌の小説 amazon
私の咽喉から鳥の蹄声(なきごえ)が洩れたかのように、尺八が野太い音の一声をひびかせた。
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
バイオリンの音色が人々のざわめきとミックスして古いフランス映画を見ているようだった
田中康夫 / パリ ホテル・ル・ブリストル「昔みたい」に収録 amazon
火は、無数の人間の関節が一斉に鳴るようにメキメキと音を立てる
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
ピアノの調律音が湿度のない青く澄みきった大気のどこかから冴え冴えと響いてくる
本間千枝子 / 外竈・七輪・練炭火鉢「父のいる食卓」に収録 amazon
ピアノ弾きが細い指でカクテルグラスのふちをそっと叩いている。そんな透明な音だ。
竹下文子 / 風町通信(雨が待ってる) amazon
フルートの旋律が鳥のさえずりのように鋭く宙を舞う
竹下文子 / 風町通信(喫茶店) amazon
虫の鳴き声とせせらぎの音が地鳴りのように高まっている
宮本輝 / 蛍川 amazon
山が破裂するのではないかと思われるほど激しい山鳴り
井上靖 / 小磐梯 amazon
乱暴に叩けばひずんで濁った音がするが、幼児のちっちゃな手が無心に触れると、グラスを弾いたような高く澄んだ響きを立てることもあるのだった
阿部昭 / 阿部昭18の短篇(人生の一日) amazon
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