乗り物の比喩表現の例文 一覧

前につんのめるようにして急ブレーキをかける

溜め息をつくようにエンジンが止まる

ほんの少しだけ欠けた白い月が目の前に浮かんでいた。右手には新宿の街の光が、左手には池袋の街の光が見えた。車のヘッドライトが鮮やかな川の流れとなって、街から街へと流れていた。様々な音がまじりあったやわらかなうなりが、まるで雲みたいぼおっと街の上に浮かんでいた。

闇をつんざきつつ、五台の自動車が、無言のまま物の怪に憑かれたように疾走する

二本の飛行機雲が電車の線路みたいに平行にまっすぐ西に進んでいくのが見えた

船首が、恍惚とした薄い顎のような形に仰向く

棺桶みたいな電車

油のような粘りを持った大きな波浪がゆったりと襲ってきては、船を山から谷へ谷から山へと運ぶ

イカダが矢がすりの模様のように、三つが互い違いにつなぎ合わせてある

車がゆるやかな流れに吸い込まれるイカダのように右に寄って行く

水が板のような堅い感じを船底にぶつけ、そのたびに船が浮かび上がる

クレーンが動きはじめると、犬のうなるような低い音が聞こえてくる

手おいの猪のような、（客が）こぼれそうな鈴なりの汽車

カタツムリのように進む

鮫が獲物をひと呑みするような派手な動きで車が走り出す

船がすうっと流れるように動き出す

船が滑るように動き出す

列車が滑るように動き出す

海底の牛が啼くような鈍い汽笛

貨物船の霧笛が、群れをはぐれた仔牛のような鋭い悲鳴を上げ始める。霧笛はそれぞれの音階に短く長く闇を貫き、山の方向へ飛ぶ。

風のように馬を飛ばす

車のエンジン音が風のように過ぎる

地団太を踏むように、エンジンの唸り声が荒々しく響く

猫が咽頭を鳴らすようなエンジンの音を立てて

八つ当たりのようにエンジンを空ぶかしさせる

呻くようにエンジンの響きを上げて坂を登るトラック

赤ん坊が口唇で遊ぶときのプリプリと鳴らすようなエンジン音

煙を吐いたヘリコプターが安定を失いながら木の葉が舞うように落下してくる

バイクが宙を飛ぶようにグイグイと近づいてくる

オートバイが、猛禽類に似た鋭い叫びを残して通り過ぎる

地鳴りのようなバイクの音

山のような大波が船の背後から覆い被さる

自動車がフィルムの影のように音もなく走り去る

クラクションがかすれて錆びついたような音を出す

巨大な斧の断面のような船腹

線路の上に重しのようにずしりと止まる機関車

艦艇が小さく小さく、玩具のように海上に置かれている

飛行機が一瞬、水中から波の上浮かび上がった泳ぎてのように、ほっと一いきつくように白い腹を見せる

船が見る見る巨大な音楽のようにふくれ上がる

ボートが、広い海の上に蚊のように小さく、ところどころに浮いている

黒い貝殻のように光る自動車の窓

埠頭に並んでいる巨大なガントリーグレーンの列も、夢の地平線上に立ったまま死んだキリンの骸骨の列のようだ。

パトカーのサイレンの音が、獲物を追いつめていく勢子の掛け声のように響く

猛牛のように駆けめぐる装甲車

音のあいまいな霧がひろがるように、遠い汽笛がおぼろげに伝わってくる

坂道を風のように一気に駆けのぼるジープ

鉄の塊のようなぼろい車

錨が、錨穴のところに大きな黒い鉄いろの蟹のようにとりつく

兜（かぶと）虫のように見える装甲車

自動車が、カブトムシの背中のように光った尻を見せながら泥水をはねあげて行く

乗用車が一台、起き上がれない甲虫のように腹を見せたまま放置される

高速道路を走る車の音が、河の流れのように聞こえる

道路が車のヘッドライトで光の川のよう

わが子のように可愛がっている愛車

マストより高い灰色の絶壁になって波が押し寄せてくる

鉄のライオンのような機関車

機関車が、真っ黒な大きな獣のよう

機銃掃射のような爆発音を轟かすスーパーカー

汽笛が乳色の朝靄を縫うようにして長々と響きわたる

開けっ放した窓からしばしば汽笛が悪魔のように入ってくる

鞭で宙を切るような鋭い汽笛

瀕死の野獣の悲鳴のような汽笛が聞こえる

鳥のように速く、岩のように頑丈な楠の刳り船

口ばしのように突き出た船首

先を走っている車の尾灯の赤い連なりが、ルビーの首飾りのように曲がりながらのびる

たくさんの車が黒い河のように流れている

車の列が光の河になって夜を流れる

自動車のヘッドライトが僕の身体を洗うように次々に走り抜ける

車の音が、潮騒のように風に乗って聞こえる

自動車の音が、大きな昆虫の羽音のように聞こえる

年老いた女の吐息に似た音をたてて走る車

飴でからめられたような車の群れ

クラクションが悲鳴のような音を上げる

漕いでゆく艫（ろ）の音が、獣の子の乳をもとめる声のよう

トラックが獣のような底深い唸りをあげて出発を待っている

犬の鳴くようなサイレンの音

家族の死を告げる妖精の泣き声のような、長く尾をひくパトカーのサイレン

日本中のパトカーが集まってきたのではと思われるほど、凄まじいサイレンの音が夜空にこだまする

パトカーのサイレンが赤くとがったような音をあげて、あたりの闇を切り裂く

パトカーのサイレンの音が、四方八方から湧き上がって、波のように押し寄せる

船が竿を弓のように張って流れを遡（さかのぼ）って行く

見えない翼で音もなくすべてゆくように、自転車のペダルを踏む足をとめて、静かに坂道を下って行く

犇々（ひしひし）と上げくる秋の汐（しお）が、廂（ひさし）のない屋根舟を木の葉のように軽くあおる

地獄の苦しみとも言うべき船酔い

ヘッドライトが地獄の業火のように目の前で燃えさかる

青空に白い綿のように尾を引いているジェット機

トラックが馬の尻尾のように跳ね上がりながら突進する

船が大きく揺れて、水しぶきが雨のように飛び込んでくる

沖に黒い染みのような船が見える

ライトバンがロデオの馬のようにお尻を跳ね上げながら走る

飛行機の翼に塗った銀の色が、水銀のようにこぼれそうに鮮やかに翻（ひるがえ）る

こまかい錫（すず）の破片を浮かべたように日にキラめく爆撃機の機影

渋滞が堰を切ったように流れ出す

ホイールは鋳造されたばかりの銀貨みたいにまぶしく光っていた

カヤックが、大きなミズスマシのように音もなく通り過ぎる

ひどく重い物を積んだ長距離トラックが崩壊し始めた氷山のような不吉な音を立てて高速道路を走り抜けていった。

メルセデスはききわけの良い巨大な魚のように、音もなく夜の闇に消えていった

７４７が銀色の楔（くさび）のように激しい角度で空にのめりこんでいく

敏感でアグレッシブな車だった。反応が鋭く、パワフルだった。アクセルをちょっと踏むと月まで飛んでいってしまいそうだった。 「そんなに頑張らなくていいんだよ。気楽にやろう」と僕はダッシュボードをとんとんと叩き、マセラティに言いきかせた。

急な坂道で車の息も荒くなる

ヤゴのような形をした自衛隊の対潜哨戒機

彼はしばらくあてもなく車を走らせた。五反田君のギア・チェンジはスムーズで正確だった。車はかたりとも震えなかった。加速は優しく、ブレーキは静かだった。街の騒音が切り立った谷のように我々のまわりにそびえていた。

車体は鳥肌のような雨粒がつき、重くなった水玉が冬の虫みたいにゆっくりと下に垂れていく

ヘッドライトに浮かび上がる雨は銀色の針に見える

巨大な水鳥の叫び声そっくりの音で追い抜いていくトラック

鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える（ヘッドライトに照らされた雨の）曲がりくねった道路

飛行機は空中に静止しているように見える。デパートの天井からワイヤーで下げられた玩具のように。

電車は蛇がのたくるようなスピードでゆっくりと通り過ぎる

赤色灯の赤い斑模様を病院の壁面にぐるりと投げかけ、サイレンだけがやんだ。直後、晴れた空から静寂が降りてきて、スポットライトのように救急車の回りに無音の空間を作りあげた。

市中を馳（はし）る電車の響きは岸打つ波のごとくに消えつ起りつ

漁船を曳航する発動機船の爆音が、口の中にふくんだようなやわらかい連続音を港の眠った空気の中に響かせた。

列車の爆音は電光のようなすさまじい色彩を放った。

馬車が鈴をならしてとおるごとに白い砂ほこりが砲煙のように舞いあがる。

馬車のなかは、水のような風がすいすい吹き通った。

窓ガラスが滝をながしたようになって、景色もなにも見えない。

白羽のような波を蹴って進む自分の船

舷を乗り越して奔馬のような波頭がつぎつぎにすり抜けて行く。

神話の中の恐竜のように舌を吐き爪をならして小舟におそいかかる波頭

大きな波のうねりにマストがゆれて、星座のたてごとを、かき鳴らしているようであった。

飛行機の黒い大きい影が疾風のように地面をかすめ去った。

古ぼけた汽車は明るい殼をトンネルに脱ぎ落して来たかのように

舟が進むにつれて、飛魚が、まるで人が叢（くさむら）を進むときにバッタが飛び散るように、ついついと水の面すれすれに

自動車のヘッドライトに明るく照し出された道の方へ、紙片を散らしたように、白い蛾が群れだって寄って来た。

脇腹には病人のかさぶたのように貝殻がびっしりとこびりついている。

麗子は警部のジャガーに乗ったことが一度もない。勧められるたび拒否してきたのだ。理由は自分でもよく判らないが、ただなんとなく、本当になんとなくなのだが、この銀色のジャガーはオスのような気がして仕方がないのだ。それも発情したオス。

中年の運転手は、まるで舳先（へさき）に立って不吉な潮目を読む老練な漁師のように、前方に途切れなく並んだ車の列を、ただ口を閉ざして見つめていた。

午後の太陽の光を受けて、フロントグラスがミラーグラスのようにまぶしく光っていた。

レールの立てる単調な音に耳を澄ませていた。中央線はまるで地図に定規で一本の線を引いたように、どこまでもまっすぐ延びている。@略@電車は目的地に向けて一直線にひた走っていくだけだ。

電車が間もなく発車するという早口の簡単なアナウンスがあり、やがて旧弊な大型動物が目覚めて身震いするみたいに、ぶるぶるという大げさな音を立てて車両のドアが閉まった。

タクシーというよりは遊園地の乗り物に乗っているみたいだった。

バイクのエンジン音が、拷問機械のうなりを部屋に響かせ

自動車がクラクションを鳴らす音が聞こえた。大型トラック特有の、霧笛のような深い音だ。

雨はもうすっかりあがっていたが、車はまるで水の中をくぐり抜けてきたみたいに全身から水滴をしたたらせていた。

かたつむりが這うように渋谷に向かう

多くの輸送トラックのあいだに、まるで無骨なサイの群れに紛れ込んでしまったしなやかなレイヨウのように、銀色のメルセデス・ベンツ・クーペが一台混じっていた。

川の流れのような車の途切れない騒音

二人のまわりを夜の街が、夜光虫に彩られた海流のように流れ過ぎていった。

そよ風の妖精みたいに颯爽とマウンテンバイクを走らせる

豚の鳴くようなホーンが響く

スピードの出しすぎで、羽もないのに車体が宙に浮く

軽自動車が急勾配でゼイゼイ言う

私は爽快で、ひどく晴ればれとしていた。透明な、自分がからっぽになったような澄んだ気分のまま、私は、まるで一箇の荷物のようにバスの振動に揺られていた。

急ブレーキがかかるたびに、まるで骨がない動物のようにぐらりと体を大きく揺らせて、横にいる乗客にもたれかかる

空車のタクシーが何台も連なって走っていた。一台一台が僕の横に来ると様子を窺うように徐行する。それは僕を喰おうと物色する何か巨大な生き物のようにも見えた。

道路の流れはまだ滞っていた。苛立ったのか、前方の車からクラクションが鳴った。遠吠えに反応する犬のように、別の車からもクラクションが発せられる。

そしてさらにそのＲＶ車は、生きていることを誇示するかのように、身体を震わせていた。エンジンがかかったままなのだ。

勢い良く通っていく。　川の堰が切れて濁流が流れていくような、騒々しさだった。激流が、目前を通過していく。

けたたましいサイレンとともに近寄ってきたパトカーが、我に返ったかのように音を止め、停車する。赤色灯が、逮捕劇を盛り上げる照明装置に見えた。

七尾は以前、一度だけ参加したことのあるカジノのルーレットのことを思い浮かべていた。どこに球が落ちるのか、それをもったいつけるかのようなゆっくりとした動きでルーレットは止まるが、新幹線もそれと似た雰囲気を見せた。駅で待つどの乗客の前で車両が止まるのかを選ぶように、どこにしようかなあのねのね、と焦らすかのような様子で、速度を落とし、そして、乗客の前に止まった。

新幹線は止まったが、なかなか扉は開かず、水中で息を止め、吐き出すのを我慢するかのような、間がある。

扉が静かに、素早く開く様は、昔、映画で観た宇宙船の内部を思わせた。

連結部の上に立つ。重なる床板のようなものが、生き物の関節じみた動き方をする。

その時、自分たちの座っている場所とは反対側の窓に、すれ違う新幹線が見えた。一瞬のことではあるが、激しい音を立てて、後方へと走り抜けて行く。穏やかに疾駆することは許さないぞ、刺激があってこその人生だ、とお互いを揺らし合うかのようだった。

二号車の扉が開いた。威勢の良い溜め息とでもいうような、噴射音が響く。

建物や地面がびゅんびゅんと後方に投げ捨てられていく。

吹き飛ばされるかのように、後ろへ通り過ぎていく建物を目で追いながら

デッキは、轟々と流れる川の奔流さながらに騒がしかった

車両と車両の連結部は、うねうねと、爬虫類の動きを模すように左右に揺れる。

トンネルに入る。暗いトンネル内は、水中に潜り、息を止めている気分になる。外の景色が出現すると、一瞬の息継ぎが許されたような開放感を得られる。

唐突に新幹線が揺れた。ほんの短い間だったが、獣が毛に付着した水を払うために、ぶるっと胴を震わせるかのような、そういう揺れだった。

新幹線の揺れは単調ではなく、生き物にも似た不規則な動きを見せるが、時折、下から突き上げられ、ふわりと身体が浮く。

車両の揺れが、相変わらず、木村を小突くようだ。忍耐の鎖を破るように唆してくる。

トンネルに入り、振動音が変わった。周囲が急に暗くなる。水の中に潜ったかのような圧迫感が車内を覆う。

走行する響きは鼓動に似ている。巨大な鉄の血管の上に載っているのではないか。そんな気持ちになった。

新幹線が速度を落としはじめ、走行音も変わる。つかんでいた線路をゆっくりと手放すかのように、響きが軽くなる。

乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。

巨大な昆虫のうずくまったように、緑のペンキで塗ったトラック

三保の松原を走らせた天の羽車のような静かさで、一台の車が通って行った。

舟はみえずに（櫓（ろ）の）音だけがなにかの鳥の鳴くように、獣の仔の乳をもとめる声のようにきこえる。

昌樹の横を車のエンジン音が風のように過ぎた。

五台の自動車が、フィルムの影のように音もなく走り去るのを見た。

頭上と横とを流れるヘッドライトの光は靄のやうだったり稲妻のやうだつたりする。

煙脂煙管（やにきせる）の如く、ぎっちり詰まって動けなくなった

不良の酒のように絶えざる車体の微動につれて人を酔わす。

太鼓の内部のような船室

汽船はゼンマイ仕掛のおもちゃのそれのようだった。

明るく点（とも）して泊る艦隊の灯が水平線に横たわる星河のように望まれた。

ごっとん、ごっとん、と、まさぐりながら歩いているような機械ののろさ

美しい東洋の満月のさしこむ硝子張りの水族館のような箱（自動車）の中でいつの間にか眠ってしまった。

湖上にいくつかの船影を見たのですが、何かの念力にでもかかっているようで、私の目には微動だにしませんでした。

三本煙突をつけた白い小さな砂糖菓子のような汽船が生意気そうに走っていた。

ゾッとするような急傾斜を、一本の鉄索をたよりに、岩に匍（は）い上がる甲虫（かぶとむし）のようにゆるゆる登っていくケーブルカー

あたかも意地の悪い馬が馴れぬ乗手にするように、船体は猛烈にその背を振った。

前方からジープがさッとそれ自体、一つの光線の束になって躍りかかるように走ってきた

川船のまわりに人魂が漂うように、船頭のつけた提燈の火が波に赤い色をうつしていた。

タクシーが、吸い寄せられたように、彼の眼前に滑って来た。

米内火艇が引っかいたような水脈を曳いて疾駆していた。

香港のメインストリートを、まるで凶器の如く飛び交っている車

首都高速にびっしりと渋滞した車やトラックの群れを見てそれが毛虫とか芋虫とかいろいろ気持ちの悪いものに見えた。

汽車の響きは遠ざかるにつれて、夜風のように聞えた。

いま神戸を出てきたばかりのつばめ（列車）は、その響きの明朗なる如くその姿も颯爽として、初陣の若武者といった感じ

灯を消した二台の自動車は疾風のように、夜気を揺すぶりながら見えなくなった――。

船が水鳥のように真白でこぢんまりしている

こんがらかったチューブの中で、エンジン・ルームの緑いろに塗ったエンジンは、いつも重症の熱病患者のように、身を慄わせて唸っている。

その怪物のような図体

眼に蓋をするように、冷たい石垣が@略@視野一杯に滑りこんで来る。

火を吹いて流星のように直線に落ちて行くのは、日本の戦闘機だ。

流星花のようにその飛行機は墜ちて

ランチが、本船の周りを水蜘蛛のようにグルグル廻りながらついて来た。

自動車が光の縞模様のようにひんぱんにすれちがい

ひょいと右を見ると、目の前に丘のような荷物自動車が迫って来ていた。

一隻の戦艦だけが、後尾から二すじの波紋を曳いて、赤い甲虫（かぶとむし）のように、よたよたになり

ピカピカ黒光りのカブト虫のような自動車。

マストや柱や欄干は、髮を毟（むし）られる女のような悲鳴をあげて身を撓（たわ）めた。

自転車のタイヤが雪をくわえて鼠の鳴くように、きしんだ

電車の路面が、木琴の鉄板のように凸凹している。

湯気のようにむんとする温かみ

編隊がまた西の空から芥子粒（けしつぶ）ほどの姿をみせた。

鮨（すし）のように押しつめられてる

警笛（クラクソン）がジジーと嗄（しわが）れたような音を立てて鳴り始めた。

車は舌打ちするように激しくスタートして、走り去った。

深夜の水平線上を左右から匍（は）い迫ってくる二種の艦列を認めた。その一方 は青く、他方は赤く、夜目にも著しく夜光虫のように光っていた

陸地がすうっとすべるように近づいたと思うと、船はもう渚ちかく寄っていた。

タクシーは天道虫のように、ゆるい坂から山の手へのぼる。

鈴なりに混んだ電車

古風な機関車が真白な煙りを吐いて止まっている。それは葱（ねぎ）をふみながらきき耳立てた雄（お）ん鶏（どり）に似ている。

笹の葉のような軽快なかたち

船は風に逆らい、黙って闇へ突き進む。それは何か大きな怪物のように思われた。

汽車の出発を知らせる大ベルの音が、彼の耳には現（うつつ）と睡（ねむり）との間に絶えようとする一線のように幽かに遠く聞かれたのであった。

飛行機は蚊よりも脆く落ち

列車が、尻をぶっ叩かれた馬のように、仕方なしにあえぎ始める

鹿児島湾の上空を、古ぼけた練習機が飛んでいた。@略@極度にのろい速力で、ちょうど空を這っているように見えた。

柄杓（ひしゃく）が水を掬（すく）うように、デッキは波浪を掬い込んだ。

反古紙（ほごがみ）を貼りつけたような日本の漁船

輝きのない鈍感な海は、白人の艦艇をも、危険性のない浮標のように、ものうく載せていた。

十台ずつ一団となって突破することになった、自分たちの自動車は二団目の二番目だった、走り出した、全速力だ、まるきり暴れ出した象の群のようだ

道路はひどい埃で、前を行く自動車は黄色い土煙の中に隠れてしまって見えない。一塊の黄煙が疾走して行くようだ。

自転車はすうっと鳥のように近づいてきた

車道は台風一過のように、渋滞なく各車のスピードをのせている。

漁船がてんぷくして、鯨の背のような船底を見せている

翼全体から銃火を噴いた飛行機が翼で殴りつけるような超低空で過ぎた。

船は、真黒い岩か何かのように、そこにどっしりしていた。

車輪のスポークは異様に進化した獣の歯のように、闇の中に不吉な光を放っていた。

五千米の空の薄雲の間を縫って、映写幕を移動する幻影のように、七八機の編隊がぬらぬらと迫って来ていた。

とぶ鳥のかげのようにすぎた。

汽関室の横手に、煙管（きせる）の雁首（がんくび）のように突き出ている管の先から、白い湯気が二回ほど吐き出される

遠く弓なりに百足のような汽車が見え出す。

はるかに水平線に浮かんだ艦隊のように、トラック隊がやって来るのが見えた。

戦爆連合の、しかも白昼のかかる大挙来襲ははじめてである。この百里原あたりの空も、ために密雲に覆われたようにくらくなり、「雨かな」と言ったものさえあった。

一見するとアパート風の建物のようで船とも見えなかった。

隼（はやぶさ）のような早い飛行機

デッキの上でバタバタと、その（帆布の）切れっ端が洗濯したおしめのように振れていた。

江戸川の水を往復する通運丸の牛が吼えるような汽笛も身に沁みて

石垣にぴッたりと糊付けか何かのようにくッ付いて、薄暗く油煙に汚れた赤い灯の点いている小さな舟

小さな箱のような電車

特別急行列車は満員のまま全速力で馳せていた。沿線の小駅は石のように黙殺された。

白い波頭の上に海鳥のように身体をゆすっている。

大河の心臓の音のように、川蒸気の音が聞えて来る。

そのマストの下の方には、桟橋に流れかかったぼろ布のように帆布が、まといついていた。

終電車はもうとうに終わっている。駅舎もホームも照明が落とされて暗い。駅周辺の商店も、住宅も、明かりの漏れている建物は少なく、林や畑はもとより夜の闇そのものみたいに真っ暗、というか真っ黒に映る。 　そのなかをまばらな街灯が繫いで示す道は細く頼りなく曲がりくねり、今は寝静まっているこの街の人々の住まいと住まいを結びながら闇に突っ込んだように途絶えたり、明るいオレンジ色の街灯とともに北側を太く力強く走る国道に届いたりした。 　その国道こそ時折トラックなどが走ってきて去っていき、動きの乏しいこの町の夜景が、時間の止まった静止画ではないことを気づかせてもくれるのだったが、南側の畑が広がる間の細い道路を移動する自動車の光があると、むしろ時間と空間を超え来た物体を夜空に見ているような錯覚に陥った。

車両の自動ドアが開くところだった。ぷしゅう、と空気が漏れる音がする。

パンダみたいな白黒のパトカー

巨大な棺桶のようなグレイハウンド・バス

時速八〇キロの世界で走りだすとなんともいえない爽快感を覚えた。風のノイズに上半身を包まれ、彼は自分自身が凧にでもなったかのような気がした。

スロットルを捻っては戻し捻っては戻し、甲高く馬鹿デカいエンジン音で威嚇する様は虫か何かのようだ。

熟れすぎたトマトのようにつぶれてしまった筋肉

アクセルが踏まれて、車は発進する。響野の身体はぐぐっとシートに押しつけられる。

ＲＶ車が飛び出してくるのを雪子は確認した。左手の小さな小道から、それこそ示し合わせたように、出現した。巨大猪のような顔に見えた。野蛮な図体が雪子の運転する車に向かってきた。

あくびでもするかのように間の抜けた汽笛をば太く鈍く響かせるばかり

足の底から鉄槌で打ち上げてくるような硬い音が、車両を包み込んだ

機関車は永いこと、呟いたり、ため息したり、歯軋りしてから、郊外の平凡な田園の中へ旅立った

汽船のサイレンの異様な叫び

汽笛は、－－－花野のひとひを笛のような音を立てて逃れてゆく秋嵐のように思われた

拳銃みたいなノズルを給油口に差し込んで、金色の液体をドクドク注ぐ、メーターがカタカタ変わっていく

交差点にひしめき合う車の群れは、パニックに襲われた野鼠のように甲高い悲鳴を上げながら

この家を目指してくるような轟きで、ごおっと国電が何事もなく行きかう

ジョリ、ジョリ、ジョリッと、ジャリの中にでも潜り込むような、嫌な音を立てて、列車はやっと停止した

地下鉄の、オルガンの低音を押さえ続けているような低い震動音

ツーサイクル独特の不規則な、はりつめた皮の太鼓の上に豆をばらばらと撒き落としたような排気音

電車はブレーキの余韻を残して停車し、大きなため息をついたかと思うと扉を開きました

遠く自動車のクラクションが聞こえる。おかしいものでここで聴く自動車の音は、質のいい家具や流行の著物や宝石や、いわば満ち足りた生活のたのしさを思い出させる。

二速三速でキュイーンとエンジンの回転数を上げているときの麻薬的快感

灰色の雲の中をＢ２９が鈍い眠い音をたてて、何時までも飛んでいた

バイクがやたら多くて、ほとんどマフラーがついていないようなヤクザなバイクなのだ。そういうのが朝から晩までバタバタバタバタバタバタバタという、子供がトタン屋根を棒きれで思い切り叩いて回るようなけたたましい音を立てて島を走り回っている。

パトカーや救急車のサイレンが近づき、周囲は騒音の渦となった

病人の歯軋りのようなレールの軋り

フットブレーキを踏むたびに小型のニワトリを絞め殺しているような悲痛な音がする

列車が尻をぶっ叩かれた馬のようにあえぐ

列車の窓の明かりが遠くに一筋、繋げられた宝石みたいに煌いている

ロマンスカーがオルゴールのような明るい警笛をひびかせて通る