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時間帯(朝・昼・夜)の比喩を使った文章の一覧(143件)
たちまち暗い夜が重い幕のように落ちて来ます。指でかきわけられそうな夜の色です。
林房雄 / 恐怖の花(双生真珠) amazon
あたりには何の物音もない。なんだかまるで午睡(シエスタ)の時間みたいだなと僕は思った。人も動物も虫も草木も、何もかもがぐっすりと眠りこんでしまったみたいに静かな午後だった。
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
濃い朱色の雲が、朱肉を滲ませた綿をキャンバスに叩きつけたような形で散らばっている
吉行 淳之介 / 砂の上の植物群 amazon
奇蹟のように美しい夕陽を眺めていた。世界中のすべてが赤く染まっていた。僕の手から皿からテーブルから、目につくもの何から何までが赤く染まっていた。まるで特殊な果汁を頭から浴びたような鮮やかな赤だった。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
くっきりとした朝の光がまるでテーブルクロスでも引き払うように闇を消し去るころ
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
引きしぼられた巨大な強弓が、はるかな宇宙の縁から、巨大な黄金の矢を放つ
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
インクのしみのような太陽がわずかばかりの薄明を地上に投げる
福永 武彦 / 草の花 amazon
無限の厚ぼったい海のような夜の底
加賀 乙彦 / フランドルの冬 amazon
棚に吊るした橙色のカーテンのように、夕陽の光線の矢が海綿にそそぐ
阿部 昭 / 千年 (1977年) amazon
潮騒のような遠い蛙の声が、またたく星を頼りなく揺すぶる
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
お日様が砕けた鏡のように樺の木の向こうに落ちる
宮沢 賢治 / 貝の火 amazon
草地から跳ね返る日ざしが、かすかに陽炎のようにゆらめく
日野 啓三 / 夢の島 amazon
夕焼けのほとぼりに映えた宵空が、切り紙細工のような屋根の黒さをくっきり浮き出している
永井 龍男 / コチャバンバ行き amazon
夕陽がうるんだ赤い硝子球のように海に沈んでいく
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
冬の宵のしんしんとした凍てた空洞のような静謐
芝木 好子 / 女ひとり amazon
夕闇が広がるにつれ、空は氷が張ったようにしんとしてくる
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
朝日を受けて天頂の相輪(そうりん)の金具のひとつひとつにきらめき渡り、後光のようにまばゆい光を投げかけている
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
潮騒のような遠い蛙の声が、またたく星を頼りなく揺すぶる
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
夜が死人のように静まりかえる
志賀 直哉 / 志賀直哉短篇集(剃刀) amazon
あたりは静かで、世界中で目を覚ましているのは(私たち)二人きりのよう
五木 寛之 / 海を見ていたジョニー amazon
陰鬱な静けさが一枚の黒い大きな布のように降りてくる
森 瑤子 / 傷 amazon
夜の闇が附近いちめんに密集して垂れ下がって来ているような静けさ
横光 利一 / 睡蓮 amazon
沈んでいく夕陽の中で、緑の芝生が泣き叫ぶように赤く燃え上がる
高橋 三千綱 / 涙 amazon
街がいやいやながらけだろうそうに目覚める
マイ・シューヴァル / バルコニーの男 amazon
遠い山々が雪が煙ると見えるような柔らかい乳色につつまれる
川端 康成 / 雪国 amazon
闇が水で洗う魔法にかかったように薄れると、この世は紺色から乳色に変わる
笹沢 左保 / 終りなき鬼気 amazon
煤を流したような夜の暗さ
芥川 竜之介 / 蜜柑 amazon
昏(く)れかかった灰色の空が、墨の滲みのような濃淡を去来させている
松本 清張 / 空白の意匠―松本清張短編全集〈10〉 amazon
夕暮れの青が透明な刷毛でかさね塗りされるみたいに一段また一段と濃くなり、夜の闇に変わっていった
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
裸で朝の光の中に立った。まるで充電しているみたいに。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
ベランダの窓を開ける。シャワーの飛沫そっくりの埃が流れ出ていく。朝の町は眩しくて濁って見える。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
霧に霞んでいる道路を走った。家々は戸と窓を閉ざして動くものは何もなく、僕は巨大な生物に呑まれて、腸の中をぐるぐる回る童話の主人公なのだと、自分のことを思った。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
山ぶどうよりは小ぶりで果もかたく、紫赤色によくうれて、収穫する時は、手が染まるほどである。
水上 勉 / 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月 amazon
しだいにこみ上げてくる笑いのような茜色
安部 公房 / 他人の顔 amazon
地下倉のなかに夕暮は微細な霧のようにしのびこんでくる。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
繻子(しゅす)のように光って濡れている夜
林 芙美子 / うず潮 (1964年) amazon
金閣には潮のように夜が押し上げ
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
夜も死人のように静まりかえった
志賀 直哉 / 剃刀「志賀直哉小説選〈1〉」に収録 amazon
海の断面のような月夜
横光 利一 / 花園の思想 amazon
家の軒端からのぼる朝の煙が、光を透して紫の羅(うすもの)のように柿の枝にまつわった。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
夜明けだ、新しい空気が甘美な果汁のようにかれを蘇生させる。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
夜の街の空気が、未だに海のうねりのように肌に蘇って消えなかった。
黒井 千次 / 群棲 amazon
冷蔵庫を開いたような涼気
大岡 昇平 / 逆杉 amazon
熱気が驟雨のしぶきのように歩いてゆく腰のまわりにもうもうと立ちこめる
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
静かな朝など、桶からはみ出た水が光って、まるで白刃のように新しい朝日に輝いていた。
室生 犀星 / 性に眼覚める頃 amazon
灌木の葉末のおびただしい露には、朝焼けの名残が映って、時ならぬ淡紅の実が生ったかのようである。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
まるでビロードの幕がゆっくりと降りてくるように、空がだんだん暗くなり
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
遥か東南の雨もよいの夕空が一面、加賀の赤梅いろのように染まった
岡本 かの子 / 落城後の女「岡本かの子全集〈4〉 (ちくま文庫)」に収録 amazon
希臘(ギリシャ)劇の大詰めみたいな豪勢な星空
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
ハリケーンのときも、前の日の夕焼けが、あんまり大火事のようで、しかもその赤がどす黒くて
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
水に浮いたように星が出はじめた。
打木村治 / トルストイ・サロン
からだごと燃え立つような夕焼空
竹西 寛子 / 草原の歌「長城の風」に収録 amazon
海が広がって行って終わろうとするあたりから、空が広がって来、分かれがたいもののように、真珠にもまごうバラ色に輝いていた。
森 敦 / 初真桑「月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)」に収録 amazon
銅(あかがね)を磨いたような朝日が、遠くの榎の大樹を染めていた。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
軽金属のような朝陽が林や畑のうえに輝いていた。
開高 健 / パニック「パニック・裸の王様 (1960年) (新潮文庫)」に収録 amazon
夕陽が麦畑の上に赤い玉になって落ちて行く。
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)」に収録 amazon
黒い屋根屋根の上で、それは弾んでいるようにも見え、煮えたぎって音を立てているようにも感じられた。
永井 龍男 / 冬の日「一個・秋・その他 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
小さい畠の彼方の栗の木には、だんだんと傾いて行く日足が、黄色い灯を点したようにしずかにさしている。
鈴木 三重吉 / 桑の実 amazon
西日が燃える焔のように狭い家中へ差し込んで来る
永井 荷風 / すみだ川 amazon
朝日の光が靄のように街路に溢れていた。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
夕日の光が金色の矢のように大気を貫いて
日野 啓三 / 夢の島 amazon
暗い部屋の中に、明るい光が平たい板のような形に射し込んできている。雨戸の隙間から射す朝の光だ。
吉行 淳之介 / 風景の中の関係 amazon
バラの花びらをすかしてみるような夜あけの光
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
夕陽の溜息のような光線が、屋根屋根を越えて、河の水面にきらきらと映る。
福永 武彦 / 飛ぶ男「廃市/飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3)」に収録 amazon
水のような夕やみが、ひたひたと水車小屋のなかにみちてきた。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
夕闇はまだ浅い水底のような青味を残していた
日野 啓三 / 夢の島 amazon
高原の宵闇は羽をひろげるように容赦なく押し迫って一切の形を黒の溶液
に溶かしこんでしまう。
石坂 洋次郎 / お山「わが日わが夢 (1959年) (新潮文庫)」に収録 amazon
古ぼけた汽車は明るい殼をトンネルに脱ぎ落して来たかのように
川端 康成 / 雪国 amazon
空は赤白く曇って、山の端だけが、剥げたように透明になっていた。
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
ポーッと次第に上の方へと赤みがかった山の肌。まるで破瓜期(はかき)の少女の陰毛のようにポヤポヤと見えるのは、やっぱり立木の群だろう。
檀 一雄 / 佐久の夕映え「檀一雄全集〈第1巻〉花筐,佐久の夕映え (1977年)」に収録 amazon
肋骨の見えた痩せた飼犬が夕暮れのおぼろな影に石膏のような色を見せて
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
あたかも雁が黄昏の先触れでであるかのように、急に空から黄昏が降りて
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
「は、八時四十五分!」漫画の中の女子高生なら食パンくわえて通学路を駆け出している時間帯だ。
東川篤哉 / 謎解きはディナーのあとで amazon
カーテンの隙間から光がくさびのように差し込んでくる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
巨大な眼窩そのものとも言える、深々とした杉林
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
沈みかけの夕日が、僕たちの背後から、(ボクシング)ジムのガラスに射し込んだのだ。赤々とした陽射しの中で、男たちが各々のリズムで身体を揺すっている光景は、淡い霧の立ち込める森の奥で、肉食の野生動物が獲物を狩るのを眺めるのに似た、水際立った美しさを伴っていた。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
僕たちが喋るのをやめると、それに合わせて街中の誰もが呼吸を止めるかのようだ。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
紅い鼻緒の立った籐表の女下駄が、日ぐれどきの玄関のうす明りに、ほんのりと口紅のように浮んでいる
室生 犀星 / 性に眼覚める頃 amazon
黒い旗片(はたびら)は闇の中で、大きな蝙蝠のように羽ばたいた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
晴々しい黄昏で、点きはじめた町の灯が水で濯(すす)いだように鮮かであった。
林 芙美子 / 泣虫小僧 amazon
夜の別荘群はまるで墓のように暗く、ぽつりぽつりと整った形で並び、森林にひそんでいた。
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
暮れの街の沈んだ色彩のなかで、暗い渋みを帯びた金色のコートを着た二人の娘はまるで燈台のようだ。
椎名 桜子 / 家族輪舞曲(ロンド) amazon
顔をあげて微笑む。ほほが夕陽に輝き、それは、まるで一刻ずつ姿を変えてゆくまぶしい夕空のようにはかない笑顔だった。
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
低く、広く、だんだんに盛りあがってゆく皆の揃った唄声のように、幾百幾千の長屋がどんなに圧(おさ)えられてももっと低く、もっと低くおしだまって、闇底にうずくまっていた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
突然それ(=号泣)が夜の沈黙に呑まれたようにフット消えて行く
中島 敦 / 李陵 amazon
夜の河原の石たちは、昼間受けた日の光を溜め込んだみたいに明るく白い。穏やかに流れる川面は、反射する光もなくその流れも波立ちもうかがえず黒く重かった。その暗さに飲み込まれたみたいに草の伸び広がった中州も真っ黒で、二股に分かれた流れの奥側の川面はもう見えない。
滝口 悠生 / 死んでいない者 amazon
終電車はもうとうに終わっている。駅舎もホームも照明が落とされて暗い。駅周辺の商店も、住宅も、明かりの漏れている建物は少なく、林や畑はもとより夜の闇そのものみたいに真っ暗、というか真っ黒に映る。 そのなかをまばらな街灯が繫いで示す道は細く頼りなく曲がりくねり、今は寝静まっているこの街の人々の住まいと住まいを結びながら闇に突っ込んだように途絶えたり、明るいオレンジ色の街灯とともに北側を太く力強く走る国道に届いたりした。 その国道こそ時折トラックなどが走ってきて去っていき、動きの乏しいこの町の夜景が、時間の止まった静止画ではないことを気づかせてもくれるのだったが、南側の畑が広がる間の細い道路を移動する自動車の光があると、むしろ時間と空間を超え来た物体を夜空に見ているような錯覚に陥った。
滝口 悠生 / 死んでいない者 amazon
十二月の真夜中は、深海にいるかのように静かで暗かった
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
周りは、本当に静まり返っていた。藍色の景色。風が、僕の髪をなびかせ、背の低い雑草を揺する。静けさに聞き惚れそうになる。きっと、月が落ちてきたとしても、コインが回るような音が出るくらいだろう。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
藍色の幕のような深い空
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
時刻は午前十時を回り、海に洗濯された太陽も、徐々に使い古されて黄ばんでゆく。
綿矢 りさ / 仲良くしようか「勝手にふるえてろ (文春文庫)」に収録 amazon
グラウンドも夕焼けだった。薄紅のオーガンディを纏ったように、どこも美しく赤い。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
今日の夜空は星も月も出ていないのに明るい。雲のぼんやりとした半熟の白みが、空を覆いつくして闇をさえぎり、夜を完全にしない。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
窓ガラスの向こうで給食室は、沼に沈むようにゆっくり、見えなくなろうとしていた。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
体の中に真っ赤な夕焼けを感じる
吉行淳之介 / 砂の上の植物群 amazon
濃い朱色の雲が、朱肉を滲ませた綿をキャンバスに叩きつけたような形で散らばっている
吉行淳之介 / 夕暮まで amazon
この世の終末のような凄まじい美しさを滲ませた空の色
原田康子 / 挽歌 amazon
空が淡い朱色から熟したトマト色に、やがて薄い紫色に変わる
落合恵子 / 夏草の女たち amazon
地を塗りこめたような不気味な夕焼け
中河与一 / 天の夕顔 amazon
夕暮れの光の束が、レンブラント(オランダの画家)の絵のように地上を照らす
五木寛之 / ワルシャワの燕たち amazon
夜の気配が血のような残照に染まる
光瀬龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
若葉の山腹が西日を受けて、野の只中に金屏風を立てたように見える
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
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