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雨・霧の比喩を使った文章の一覧(246件)
雨は蓑を通して小さな針を並べたように肌を刺している
城山三郎 / 辛酸 amazon
十一月の冷ややかな雨が大地を黒く染め、雨合羽を着た整備工たちや、のっぺりとした空港のビルの上に立った旗や、BMWの広告板やそんな何もかもをフランドル派の陰うつな絵の背景のように見せていた
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
雨のおかげであらゆるものの色がくっきりと見えた。地面は黒々として、松の枝は鮮やかな緑色で、黄色の雨合羽に身を包んだ人々は雨の朝にだけ地表をさまようことを許された特殊な魂のように見えた。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
窓の外には細かい雨が降っていて、部屋の中は水族館みたいにひやりとしていた。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
バリバリと油紙を破くような激しい雨音
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
こもるともなき雨の音が、部屋の内にこもっている
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
夜空が溶け落ちるように、雨が凄まじい響きを立てている
芥川 龍之介 / 地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇 amazon
雨の傘に落ちる音が、遠くの海を渡っていく女たちの啜(すす)り泣きのように耳に届く
高橋 三千綱 / 涙 amazon
傘をうつ雨の音が、遠くの地鳴りのよう
宮本 輝 / 星々の悲しみ amazon
雨滴と見紛うばかりの大粒の霧が山を包む
畑 正憲 / 天然記念物の動物たち amazon
帽子の縁にたまった雨水が滝のような音で落ちる
川端 康成 / 掌の小説 amazon
耳の中にまで雨水が流れ込んで気がするほど、雨の音が大きくなる
中沢 けい / 野ぶどうを摘む amazon
雨がシャワーのように機械的に連続して降る
大岡 昇平 / 野火 amazon
雨が人の心を他界に誘うようにザッさびしく降って通る
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
半透明の白い壁のように見える雨が視界を遮る
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
アスファルトで怒ったようにはじけてる
北村 薫 / 水に眠る amazon
世をあげて太陽のためのお通夜をしているような、陰気な雨が降りつづく
宮部 みゆき / とり残されて amazon
林を閉ざして、硝子絵に水が伝うように、静かに雨が降り出す
大岡 昇平 / 野火 amazon
雨が、小屋をつつみこんで宙へ押し上げるような勢いで降る
古井 由吉 / 聖―ひじり amazon
水門の水を一時に切って落としたように雨が吹きつける
山本 有三 / 波 amazon
暗い天空の水の底が割れたような勢いで、大雨が降り出す
西木 正明 / 『幸福』行最終列車 amazon
天界にある湖の底が抜けたような土砂降り
西木 正明 / 『幸福』行最終列車 amazon
海が天からのびっしりした雨の矢に叩かれる
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
降り続ける雨が、どんな清掃業者よりも辛抱強く、丁寧に窓ガラスを洗っている
宮部 みゆき / とり残されて amazon
島が雨にかすんで遠くの幻のようにぼんやりと見える
三浦 綾子 / 続氷点(上) amazon
草原いっぱいにハープの糸のような雨の膜がひろがってゆく
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
雨が白い糸となって対岸の色を消す
中沢 けい / 野ぶどうを摘む amazon
風のある日には、糸のような雨が下から上へ降る
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
銀の糸を張ったように落ちてくる大粒の雨
山本 周五郎 / やぶからし amazon
一寸先が見えないほどの大粒の雨が滝のように降る
福永 武彦 / 風のかたみ amazon
地面が歪むほどの勢いで大粒の雨が隙間なく降り落ちる
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
銀のような大粒の雨が青々とした若葉に降り注ぐ
徳田 秋声 / あらくれ amazon
大きなトタンの屋根を、風に乗った雨が動物的な早さでうわーっと走っていく
椎名 誠 / 新橋烏森口青春篇 amazon
罪人を打ちすえるごとく体の芯まで冷やす雨
大原 まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
滝のような雨が沛然と舗道にぶつかり、大地が大声でため息をつく
カレル チャペック / 園芸家12カ月 amazon
針のように細い、そして綿のように柔らかな雨
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
雨の銀糸が黒い幕面にかすれる
岡本 かの子 / 過去世 amazon
涙が溜まっている目で眺めているような夜景
笹沢 左保 / 終りなき鬼気 amazon
往き来の人や車が、幻影のように現れては幻影のように霧のうちに消える
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
路地の暗がりから亡霊のようにふっと出現した女
阿部 昭 / 阿部昭集〈第4巻〉父と子の夜 無縁の生活 ほか amazon
葉に雨がぶつかり、小石を屋根に散らしたような音があちこちから聞こえる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
糸のような細い雨が斜に降り懸る
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
新芽のふくらみの先に、乳のように露を宿す
梅本 育子 / 桃色月夜 amazon
霧が谷に満ち、大きく渦を巻くようにして動く
高井 有一 / 北の河 amazon
産毛のように柔らかく短く截(き)れて降る春雨
岡本 かの子 / 花は勁し amazon
時折、切れ切れの霧が窓をかすめて、沿線風景を墨絵のようにぼかす
内田 康夫 / 釧路湿原殺人事件 amazon
絵の具のような灰色の霧が視界を閉ざす
加賀 乙彦 / フランドルの冬 amazon
白い靄(もや)の中に重なり合った帆柱やクレーンが、工場地帯の煙突のように見える
吉行 淳之介 / 砂の上の植物群 amazon
朽ち葉が露をふくみ、物のけの眼のようにあやしげな光を発する
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
動いている人が影のように見え、次第に霧に呑まれて薄らいでいく
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
女が布をゆっくりと振っているような霞が揺れる
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
春の霞が薄く被衣のようにかかる
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
島々が霞の奥に浮いているように見える
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
細い髪の毛のように雨がまっすぐに天から垂れてくる
倉橋 由美子 / ポポイ amazon
庇(ひさし)はトタン葺(ぶ)きになっているので、頭のすぐ上でバラバラと機関銃の一斉射撃を受けているような音が続いていた
椎名 誠 / 新橋烏森口青春篇 amazon
渇いた大地が降りそそぐ(雨の)しずくを受けるときの、銀の鈴を鳴らすような接吻
カレル・チャペック / 園芸家12カ月 amazon
霧が林の梢の方から躊躇っているようにように降りて来る
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
大小の木々が不意打ちに、白紙に一気に描きあげたように形を成す
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
霧が無数の捲き毛となって流れている
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
切れ切れの霧が窓をかすめて、沿線風景を墨絵のようにぼかす
内田 康夫 / 釧路湿原殺人事件 amazon
降るというよりは煙るというほうが当たっている、細かい霧のような雨
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
夜霧がプラットフォームの灯りの周囲にこまかい虫のように動く
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
夜は暗く霧は重く、はてのない沼のよう
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
雑木林が霧雨につつまれ、模糊としている
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
銀のような大粒の雨が青々とした若葉に降りそそぐ
徳田 秋声 / あらくれ amazon
凍ったような層の厚い靄が、いく手の道路を黝(くろ)ずんだ灰色に暈(ぼか)す
野上 弥生子 / 真知子 (1951年) amazon
あくびが出るような雨
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
小雨が私語するように降る
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
霧が切れると、森も草原も水晶の粉をまいたようにキラめく
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
乱れた白髪のような秋の長雨
倉橋 由美子 / ポポイ amazon
黄色いスープのような靄におおわれる
北 杜夫 / さびしい乞食 amazon
雨が雑木林に砂のような音を立てる
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
本格的なスコールになった。この調子であと一時間も降り続ければ島ごと南極まで押し流されてしまうんじゃないかという気がするくらい激しい雨だった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
雨はいろいろな場所で弾ねて様々な違った音を立てる。草と小石と土の上に、吸い込まれるように落ちる雨は、小さな楽器を思わせる音で降る。手の平に乗る程の玩具のピアノみたいなその音は、まだ残るヘロインの余波がたてる耳鳴りに重なる。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
濡れている外の雨は優しい。風景の輪郭は雨粒を乗せて霞み、人間の声や車の音は落ち続ける銀の針に角を削られて届く。外は僕を吸い込むように暗い。ちょうどからだの力を抜いて横になった女のように湿っていて暗い。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える(ヘッドライトに照らされた雨の)曲がりくねった道路
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
トマトは雨で濡れて暗闇の中で唯一赤い。クリスマスに樅(もみ)の木や窓辺に飾られる小さな電球のように、トマトは(車のハザードランプの明かりで)点滅してる。火花を散らしながら揺れる無数の赤い実は、まるで暗い深海に泳ぐ発光する牙を持つ魚のようだ。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
校舎の屋根の下に入り、雨と風を避けると、空に浮いた飛行船の影に包まれているような感じがした。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
フロントガラスに転がる水滴が、夏の丸い虫そっくりだと思う。背中の球面に森全体を映す小さな虫そっくりだと思う。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
筧(かけい)からは水が溢れて、それが太い氷の柱のようになる。
島崎 藤村 / 千曲川のスケッチ amazon
水が滝のようにどうどう落ちている
石川 達三 / 蒼氓 amazon
岩から流れ落ちる清水が琴の音のように聞こえる
大庭 みな子 / 啼く鳥の amazon
盤上に散った水滴が変り玉のようにきらきらする
石川 淳 / 普賢 amazon
タタタタタとごく軽いタッチで洋太鼓(ドラム)をたたくような水滴の音が絶えずひびいていた
森田 たま / もめん随筆 amazon
灌木の葉末のおびただしい露には、朝焼けの名残が映って、時ならぬ淡紅の実が生ったかのようである。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
ぽったりと大きな血塊が封筒のまん中に落ち、飛沫がその周囲に霧のように飛んだ。
島木 健作 / 癩 amazon
蜜をとかしたような雨まじりの風
安部 公房 / 他人の顔 amazon
白い霧が濛々と渦巻くばかり-。その感覚は胸をキュンと締めつけるほど不気味なものだった。影をもたない人間を見てるように。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
霧の中に村の全景が墨絵のようにひろがっている。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
風が霧の流れを幕のようにはためかせて傍若無人に吹きちぎっていく。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
濃いふんわりした褥(しとね)のような霧だった。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
図書館の煉瓦壁にも、半透明な霧の膜がからみつき、よく発達した黴に似ている。
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
動物のように口の中へしのびこみ膨れあがる霧に喉をくすぐられて
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
朝霧がうすく地上を這って、古川堤に三人の影法師が夢のようにうかびあがった。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
静かな海に靄(もや)はふかくたちこめていて、岬の村は夢のなかに浮かんでいるようにみえた。
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
靄は月光を吸いちょうど荒絹のようにぼんやりと照っていた。
檀 一雄 / 花筐「花筐―初期作品集 (1979年)」に収録 amazon
山のひだひだから煙のように白い靄がたちのぼり
森田 たま / もめん随筆 amazon
広い東京市中が、海のような濛靄(もや)の中に果てもなく拡がって見えたり
徳田 秋声 / 足迹 amazon
うすいこの頃の牛乳みたいな、朝もや
サトウ ハチロー / 青春風物詩「青春風物詩―ハチロー半生記 (1952年) (ユーモア小説全集〈第3〉)」に収録 amazon
夕靄(ゆうもや)が屋根に下がって、家々は頭を截(き)りとられたごとく看(み)えた
瀧井 孝作 / 無限抱擁 amazon
太い針金のように光る雨の線
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
細引きのような太い雨
林 芙美子 / ボルネオダイヤ「林芙美子全集〈第11巻〉ボルネオダイヤ・あひびき (1952年)」に収録 amazon
しとしとと絹糸のように降りつづけている
田宮 虎彦 / 絵本 (1954年) amazon
白い菅糸(すがいと)のような雨
長塚 節 / 土 amazon
硝子戸はまるでカアテンを吊したように雨で白く煙っている。
林 芙美子 / 女性神髄「林芙美子全集〈第6巻〉女性神髄・女の日記 (1952年)」に収録 amazon
風に煽られた雨の筋が幕のように白くはためいて街頭の光の中を移動して行った。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
雨が横さまに簾のやうになつてそゝいだ
丸谷 才一 / 横しぐれ amazon
雨の筋が、強い風に煽られて、千切れたり、弓の弦のようにしなったりするのが、ハッキリと肉眼に見えた。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
雨はかえって礫(つぶて)を打つように一層激しく降りそそいで来た。
永井 荷風 / ぼく東綺譚 amazon
破れた太鼓を敲くような侘しい音を立てて、雨が天幕の上に落ちて来る。
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)」に収録 amazon
氷を割るようなひどい雨の音が雨戸を叩いた。
林 芙美子 / 牡蠣「清貧の書・牡蠣 (1953年) (新潮文庫〈第536〉)」に収録 amazon
雨は湯煙をたてているような激しさで四囲が乳色に染まってくる
林 芙美子 / ボルネオダイヤ「林芙美子全集〈第11巻〉ボルネオダイヤ・あひびき (1952年)」に収録 amazon
雨がいつか本降りになって、廂(ひさし)に早瀬のような音を立てた。
獅子 文六 / 胡椒息子 (1953年) amazon
白い葱をちぎって放るような雨
林 芙美子 / うず潮 (1964年) amazon
雲の去来が一寸淡くなって一粒二粒雨を降らしたかと思うと、まるで吐瀉でも吐きかけるような豪然たる雨になり
林 芙美子 / 風琴と魚の町/清貧の書 amazon
撫でるように降りすぎて行った夕方の驟雨
富田 常雄 / 姿三四郎 amazon
滝にでも打っつかったか、氷嚢でも打ち破ったかと思われるような狂的な夕立に遭った。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
生毛のように柔く短く截れて降る春雨
岡本 かの子 / 花は勁し amazon
油のような春雨がしとしとと降り出した。
白柳 秀湖 / 駅夫日記 amazon
まるで草箒で雨戸を掃くように、ザッ、ザッと吹降りの音がした。
獅子 文六 / 胡椒息子「胡椒息子 (1953年) (角川文庫〈第668〉)」に収録 amazon
窓ガラスが滝をながしたようになって、景色もなにも見えない。
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
雨音は厚い緞帳(どんちょう)のように戸外をとざしていた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
雨滴は@略@舗道をぶよぶよの混沌とした星雲の写真のような感じにした。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
アズキ粒ほどもある大きな雨滴
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
軒下に、貯水槽を伏せて、トタン板がかぶせてある。それに雨垂れが落ちかかって、お会式の太鼓のように響く。
上林 暁 / 聖ヨハネ病院にて amazon
窓ガラスを流星のようにつたう雨つぶ
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
光る雨の粒が、辷り台の子供のようにあとからあとからとガラス板を辷りおち、まっすぐな水の紐をいちめんに垂らした。
野上 弥生子 / 哀しき少年「野上弥生子短篇集 (岩波文庫)」に収録 amazon
眠りのうえを、優しい恋人の愛撫のように、微かな雨脚が渡りつづけているのだ。
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
日本アルプスの谿々(たにだに)の雪は、ここから白壁を望むように見える。
島崎 藤村 / 千曲川のスケッチ amazon
霧は少しうすれて、どんより暗い空の一隅に、古い血のように濁った赤い色が一と筋滲んでいるのが見えた。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
雲がしきりに飛んだ。そのうち洗ったような月が出た。
夏目 漱石 / それから amazon
紫色の霞がたなびき、これに入日の光がさして金粉を散らしたように見えた。
大仏 次郎 / 帰郷 amazon
森林全体が吠えるような悲鳴をあげ、降りそそぐ水しぶきにけむってしまった。
北杜夫 / 牧神の午後 amazon
風雨は激しく、窓外はまるでつなみのような音をたてて樹木が鳴っていた。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
雨に煙り、並木の黒い塊が、如何にも外国の絵でも見るように、新鮮だった。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
庭一ぱいの腐った朽葉が雨水にしめって眼のように光っていました
島尾 敏雄 / 島の果て amazon
地面はその優しい雨脚のしたで崩れることもなく、
花はあるいは濃くあるいは浅く色を染めて行きます。
それはまるで遠い異国の女が汗に濡れて立っているのに出合ったよう
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
美しい衣が流れのなかに沈んで行くのを眺めているよう
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
小さな夏の花を見て、それが朝露に濡れておぼろな光りを放っているように見えるとき、金閣のように美しい
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
雨が降ったから、楊貴妃を想い出して庭の梨の花を見たら、僅かばかりの花がしょんぼり雨に濡れていた。@略@何だか泣べそをかいているようで、幾ら想像力を働かせてみても、涙を含む幽艶なる美女の風情なぞ求むべくもなかった。
小沼 丹 / 煙「埴輪の馬 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
霧雨が降って、曇った硝子窓のむこうに歩道を歩く人間たちの姿がまるで水族館の魚のように見えた。
遠藤 周作 / 影法師 amazon
輪の中にうようよと音もなく蠢く、ちょうど海の底の魚群のよう
池谷 信三郎 / 橋 amazon
夕立ちが過ぎ去ると、あとには水浸しになった道路が残った。太陽が戻ってきて、その水を全力で蒸発させ、都市はかげろうのような蒸気に覆われた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
雷鳴は更に激しさを増していた。今では雨も降り始めていた。雨は怒りに狂ったみたいに横殴りに窓ガラスを叩き続けている。空気はべっとりとして、世界が暗い終末に向けてひたひたと近づいているような気配が感じられた。ノアの洪水が起こったときも、あるいはこういう感じだったのかもしれない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
大きな硬い雨粒が鹿を撃つ散弾のように、窓ガラスをばらばらと叩き続けていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
外では冷たい雨が降り始めている。ラジオの天気予報は、静かな雨が翌日の朝まで降り続くことを告げている。秋雨の前線が太平洋の沖合に腰を据えたまま動きを見せない。時を忘れて孤独な考えに耽る人のように。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
霧の底に沈んで鋼鉄のように青ざめた町
ウィリアム・アイリッシュ / 黒いカーテン amazon
外へさしだした両手に痺れのような感覚があった。まだ小雨が降っていた。雨粒が細かすぎて、脳が痺れと勘違いしてしまうほどの。
羽田 圭介 / スクラップ・アンド・ビルド amazon
講堂の時計塔が霧に包まれ、城のようだった。
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
水底(みなそこ)のように初秋の夕霧が流れ渡る町々
水上 瀧太郎 / 山の手の子「俤 (百年文庫)」に収録 amazon
濡れ鼠のようになっていた。
嘉村 礒多 / 業苦 amazon
人家の灯火は雨に流れて、色硝子を砕いたような、光った水溜りの中へ、二人は膝をついた。
林 芙美子 / 軍歌「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
粒子の荒い霧にさえぎられて、道路をへだてた商店街の裏は、黒々とした森のように見えた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
さっきまでの青空に、不吉なほどに黒々とした雨雲が波のように押し寄せてきたかと思うと、蛇口を捻ったかのような唐突さで、雨が降りはじめた。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
朝もやの中に、頂点の高いピラミッドを思わすシルエットが不気味に佇んでいる。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
雨で黒く濡れた門柱は荒野に立った2本の墓石のように見える。
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
雨は走るにつれて規則的に強くなり、弱くなり、そしてまた強くなり、弱くなった。あくびが出るような雨だった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
ひどく犬の多い土地で、彼らはまるで水族館の鰤の群れのように雨の中をあてもなく歩きまわっていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
雨から身をよけることはできない。犬たちはみんな尻の穴までぐしょ濡れになり、あるものはバルザックの小説に出てくるカワウソのように見え、あるものは考えごとをしている僧侶のように見えた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
雨は休みなく貯水池の上に降り注いでいた。雨はひどく静かに降っていた。新聞紙を細かく引き裂いて厚いカーペットの上にまいたほどの音しかしなかった。クロード・ルルーシュの映画でよく降っている雨だ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
遠くから眺めた僕たちの姿はきっと品の良い記念碑のように見えたことだろう。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
。細かい雨でも、それは大きなくもの巣のようにわたしに覆いかぶさってきた。冷ややかな雨だった。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
プールの表面は一面、雨粒が作り出す水模様のせいで、無数の小魚が餌を欲しがってうごめいているみたいに見える。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
硬い粉のような冷たい霧
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
貯水タンクに叩きつける雨の音はまるで太鼓の音のよう
宇野千代 / 色ざんげ amazon
濡れはしないが、なんとはなしに肌の湿る、霧のような雨
川端康成 / 掌の小説 amazon
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