道・道路の比喩表現の例文 一覧

バスは突然ひやりとした杉林の中に入った。杉はまるで原生林のように高くそびえたら、日の光をさえぎり、うす暗い影で万物を覆っていた。開いた窓から入ってくる風が急に冷たくなり、その湿気は肌に痛いばかりだった。谷川に沿ってその杉林の中をずいぶん長い時間進み、世界中が永遠に杉林で埋め尽くされてしまったんじゃないかという気分になり始めたあたりでやっと林が終り、我々はまわりを山に囲まれた盆地のようなところに出た。

舗道が昼の緩んだ暑さを残して温かく、汗ばむように湿る

枝々を漏れる午後の光が道に網目のような影を落とす

道が網目のように広がる

荒れた海の砂浜のように人気なく荒涼としている村の道

道が縫うようにうねる

馬の背のような峠を行く

太い道から小路が枝のように伸びる

山の裾を切り取るようにして、路が細い帯のように捲く

峠が突き挙げた拳固のように肩を張って構えている

道路が車のヘッドライトで光の川のよう

大通りが川のように横たわる

枯れた川のように白い道路

道路を川のように水が洗っている

融雪水が急激になって流れる、川のような道

碁盤の目のように張り巡らされた道

道路が紺のリボンのように一直線にのびる

月夜の峠でのそよ風が、自由なはばたきへの誘いをひそめている

ひどく重い物を積んだ長距離トラックが崩壊し始めた氷山のような不吉な音を立てて高速道路を走り抜けていった。

鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える（ヘッドライトに照らされた雨の）曲がりくねった道路

曲がりくねった金属のチューブに見える道路

毛筆のように枝分かれした道

道路の小砂利が塩を撒いたように霜柱に凍てついていた。

尾根道ときたら、まるで痩馬（やせうま）の背をあるくようなもので、二人ならんでは歩けない。

この頂をちょうど巨大な擂鉢のふちをたどるように半周して

雨に煙り、並木の黒い塊が、如何にも外国の絵でも見るように、新鮮だった。

アーケエドのように枝を延ばした欅（けやき）並木

揺れというよりはうねりに近い。荒波の上に浮かんだ航空母艦の甲板を歩いているようだ。

けたたましいサイレンとともに近寄ってきたパトカーが、我に返ったかのように音を止め、停車する。赤色灯が、逮捕劇を盛り上げる照明装置に見えた。

歩行者用信号が青になるのを待つ。車道を眺める。槿（人名）にはそれが川に思える。視界が狭くなり、光景の彩度が落ち、車道の上を、不定形の波を隆起させ、川が、右から左へとゆるゆる流れていく。歩道との境に設置されたガードレールは、その、緩やかに、たゆたう川が、道を逸れぬように、川べりから溢れぬように、と付きっ切りで見守る役割を果たしている。 　川は、時に嵐に勢いを増すとはいえ、それ以外の時には、目立つとも目立たぬともいえぬ水面の揺れとせせらぎをたてる程度だ。

木におおわれたトンネルのような道

区劃整理の後、道幅が広くなり過ぎて、夜遅くなど歩道を向う側へ渡ろうとすると曠野を歩いている様な気がする。

京浜国道は残暑の日盛りにまるでフライパンのように焼けていて

蛇が皿を巻いたような丘の小道をぐるぐると下りて行く。

雨が降れば泥濘と化する道は天気になると乾いて灰のようになる。

蛇（へび）のようなる畑中の小径（こみち）

巨大な爬虫類の皮膚のようなアスファルトの路面

まっ黒にしげった森のなかをひとすじの路が縫うようにうねって

アスファルトの広い国道は、ぼおっとした夕暮の河のように心細い眺めだった。

海に沿って、埃っぽい道が投げ出された帯のようにつづいており

中腹に帯のようにひろがった道

昆布のようにつるつるした都会の歩道

生垣の小途（こみち）が網のようにつづき

細い道が、あやふやな薄明りで、魚の腹のような色をして伸びている

緇い正確な溝のような路地

炎天下のアスファルトは、弱火にかけたフライパンの底のように熱い。

舗装された道路は数十メートルごとになだらかに曲がっていて、細い川のようでもあった。

線路は丘陵に沿って、まるで定規でもあてたようにぐいと一直線にのびていた。

駅前の交差点では大勢の人が行き交っていて、一秒たりとも風景がじっとしていることがない。まるで街が生きているように見える。人間の身体で例えれば、渋谷駅は心臓だ。文化村通りやセンター街など、あちこちに延びた道路は血管で、道行く人たちは血液にあたる。心臓は今日も大量の血液を街の隅々にまで送り出す。

交差点にひしめき合う車の群れは、パニックに襲われた野鼠のように甲高い悲鳴を上げながら