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中年・老人の比喩を使った文章の一覧(52件)
糸巻きの糸がだんだん減って行くように、生命の糸を繰り出し、今その終りに近づく
壷井 栄 / 大根の葉 (1960年) amazon
薄くまばらになった髪、しみだらけの皮膚、落ちくぼんだ眼窩--そこには容赦なく通り過ぎていった時間の侵食が、川に削りとられた谷間の荒涼たる崖の肌のように痛ましい痕を刻みつけている
日野 啓三 / 抱擁 amazon
日毎に老いの傾斜を転げ落ちる
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
明かりにくまどられた女の顔が、ほの暗い中で老婆を思わせる
勝目 梓 / 日蝕の街 amazon
自分をとり巻く若さという硝子のようなもの
伊藤 整 / 青春 amazon
白かった肌が、白布が日ごとに黄ばんでいくように少しずつ飴色に濁っていく
連城 三紀彦 / 棚の隅 amazon
ある年齢を過ぎると、人生というのはものを失っていく連続的な過程に過ぎなくなってしまいます。@略@肉体的な能力、希望や夢や理想、確信や意味、あるいは愛する人々、そんなものがひとつまたひとつ、一人また一人と、あなたのもとから消え去っていきます。@略@あなたはもうそろそろ三十歳になる。これから少しずつ、人生のそういう黄昏{たそが}れた領域に脚を踏み入れようとしておられる。それが、ああ、つまりは年をとっていくということです。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
(2年ぶりに認知症の父を訪ね、窓際に座る小さくなった父を見て)離れたところから見ると、人間というよりは、ネズミやリスの類に近い生き物のように見えた。あまり清潔とは言えないが、それなりにしたたかな知恵を具えた生き物だ。@略@父親だった。あるいは父親の残骸とでも言うべきものだった。二年の歳月が彼の身体から多くのものを持ち去っていた。まるで収税吏(しゅうぜいり)が、貧しい家から情け容赦もなく家財道具を奪っていくみたいに。@略@今目の前にいるのは、ただの抜け殻に過ぎない。温かみを残らず奪われてしまった空き屋に過ぎない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
夜中に犬の散歩をさせる孤独な老人もいる。犬も老人と同じくらい寡黙で、希望を失っているように見える。
村上 春樹 / 1q84「1Q84 BOOK 3」に収録 amazon
二級品のミイラのようなひからびた相貌の男だった
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
彼はまだ六十四歳だったが、それよりはずっと年老いて見えた。誰かがうっかり間違えて、その男の人生のフィルムを先の方まで回してしまったみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
入り口近くのベッドの上に座っていた老人が答える。しわだらけの顔、ぽちっとした黒目がちの目、禿げあがった額の具合、背をまるめてちょこんと座っている風情。どこをとってもオランウータンにそっくりだ。いまにもグルーミングを始めそうな、どことなく可愛い感じのする爺さんだ。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
番台ではしおれたじいさんが、つまらなそうに小型テレビを観ている。番台の横に置いてあるアサガオまで、じいさんの真似をしてしおれている。
さくら ももこ / もものかんづめ amazon
祖母が沼から這い上がるようにしてゆっくりこちらに向かって(階段を)登ってくる。薄暗い階段を、ノソノソと腰の曲った白髪の老婆が登ってくる様は悪夢のようであった。祖母は階段を登り終えると、彼に向かって「このたびは遠い所からようこそおいで下さいました。孫をよろしくお願い致します」と言い残し、登ってくる時と同じ姿勢のまま、ノソノソと階段を降りていった。”沼に住む亀が、老婆に姿を化えて人間界にお告げにやってきた”というような、奇怪なムードにあたり一面包まれ、そのまま時は過ぎた。
さくら ももこ / もものかんづめ amazon
声量は小さくないが、祖父に向けて言いさえしなければ祖父には聞こえない。祖父の耳が単一指向性マイクみたいになったのは聴力の衰えではなく、言語処理能力の衰えによるもののようだった。
羽田 圭介 / スクラップ・アンド・ビルド amazon
老人は置物のようになお皆の方へ背を向けたままでいた。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
猿のような痩せかたをしている老人
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
表情というやつは、生活が刻んだ年輪のようなもの
安部 公房 / 他人の顔 amazon
老僧の、枯れ木のように無抵抗な姿
武田 泰淳 / 異形の者 (1951年) amazon
老人は黙って立った。背が高くちょうど風雨にさらされた山の枯木のような感じがした。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
齢が遠慮なく自分の体を侵蝕している
大岡 昇平 / 花影 amazon
老人のようにしゃがれた声
梅崎 春生 / 桜島 amazon
開き切った花のような中年の美しさ
伊藤 整 / 氾濫 amazon
老人たちは、亡霊のように痩せ衰えていた。
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
いわば、底の石が見えている、かれかかった井戸のようなものです。
松原秀夫 / 人生ガイド
老人は山の老樹のように、あるいは苔むした岩のように、この景色の前にただそこに置かれてあるのだ。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
新聞を並べた台の傍に、古ぼけた鳥打帽(とりうちぼう、ハンチング帽のこと)を被った爺さんが背中を丸めて坐っているのを見ると、何となく昔の倫敦(ロンドン)がぽつんとそこに残っているような気がする。
小沼 丹 / 椋鳥日記 amazon
顔なども古い巾着のように皺が寄って膨らんでいるお婆さん
岩本 素白 / 生憎
痩せたヒョロヒョロの、南瓜(かぼちゃ)の萎(しな)びた花のような、女郎上りのおばさん
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
懺悔と感謝の生涯を経た人の能面のように、脱俗した表情が豊かに漂っていた。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
人間と云うものは、鳥影のようなもので、若い時の血気も、すぐまた年をとり@略@結局はうやむやで死ぬ。
林 芙美子 / めかくし鳳凰「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
漂白されたような老僧
武田 泰淳 / 異形の者 (1951年) amazon
近くで見るご主人は、思っていた以上に小柄だった。キタヱさんと同じように、髪の色がきれいに抜け落ちている。着ているものも全体的に白いせいもあって、やっぱり田舎の道端に祠もなく祭られているお地蔵さんのように見える。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
おばさんという人種にはいらいらする。いつでも自分がか弱い被害者だと思っているから。@略@十分強そうなのに、自分たちのことをか弱いと信じ込んでいるところ、そして迷惑をこうむっているのはこっちなのに若い男というだけでこっちが加害者あつかいされる。年齢はいっているのに、全身を羽毛で覆われている、むくむくのひな鳥。
綿矢 りさ / 自然に、とてもスムーズに「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
引き潮のように翳りゆく自らの人生
水道橋博士「藝人春秋 (文春文庫)」に収録 amazon
長い人生の労苦に唯々うちひしがれて、今にも吹き散りそうな弱々しい顔
円地文子 / 円地文子集(老桜) amazon
その他の人物を表す比喩表現
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