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動き・反応・変化・現象の比喩を使った文章の一覧(380件)
網でバシャンと掬(すく)うみたいに受話器を取り上げる
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
蟻の甘きにつくごとく押し寄せる
里見 トン / 極楽とんぼ amazon
泡が水銀のように光る
宮沢 賢治 / やまなし amazon
重い錨でも置くように受話器を置く
森 瑤子 / 風物語 amazon
檻の中の動物のように行きつ戻りつする
芝木 好子 / 女ひとり amazon
何台ものバスがまるで渓流を上下する巨大な鱒(ます)のように往き来した。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
屋根裏の廊下を、鼠の如くチョコチョコと往ったり来たりする
谷崎 潤一郎 / 痴人の愛 amazon
からくりの糸が驚くほどの明瞭さで露(あら)われる
谷崎 潤一郎 / 痴人の愛 amazon
逐(お)われても主人のあとを慕う小犬のように、まつわりついて離れない
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
吠えることを禁じられた番犬のように無抵抗
西木 正明 / 標的 amazon
大きなからだが巨大な岩のようにのしかかる
南条 範夫 / いつかあなたが amazon
魚が水を得たように、身に備わっていた算勘の才を発揮する
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
成長願望のように体をくねくね動かす
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
上衣を着替えるように思想を変える
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
またたく星が夜明けの太陽の前にかすんでいってしまうように、消えていく
宮部 みゆき / とり残されて amazon
生温かい水の中で煮られはじめた海老のように、やみくもに躰(からだ)をくねらせる
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
餡ころ餅でほっぺたを叩かれるような話
永井 荷風 / おかめ笹 amazon
追いつめられた獣のように自分の傷痕を嘗(な)めながら走る
福永 武彦 / 草の花 amazon
やみくもに逃げまどう追いつめられた鶏のように、暗い土蔵に駆けこむ
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
軍勢が雲霞のごとく、城をめがけて殺到する
柴田 錬三郎 / 南国群狼伝 amazon
放浪人が落ち葉のように吹き寄せられる
林 芙美子 / 林芙美子文庫〈〔第9〕〉松葉牡丹 amazon
岩を蔽(おお)う海苔のような、緑と蜜柑色の黴(かび)を生やしていた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
水底のかぼそい一本の藻のようにゆらゆらと揺れる
小林久三 / わが子は殺人者 amazon
酸欠の金魚のように口を動かして、通話のふりをする
荻野 アンナ / 背負い水 amazon
小学生が遠足にでかけるように、従順に列を整える
宮本 輝 / 星々の悲しみ amazon
地上の花を暖かい夢につつんでとろとろとほほえましめる銀色の陽炎
中 勘助 / 銀の匙 amazon
汗で濡れた着物が凍ってブリキのようにかたくなる
本多 勝一 / きたぐにの動物たち amazon
百年の仇敵に会えるがごとくに詰め寄る
坂口 安吾 / 中庸 amazon
先を争う人間がひと塊になって、泥をかくようにしてなだれ寄る
本庄 陸男 / 石狩川〈上〉 amazon
地獄の釜のように湯気がもうもうと昇る
川端 康成 / 掌の小説 amazon
水が硝子板をしいたように凍る
宮沢 賢治 / なめとこ山の熊 amazon
骨のない軟骨だけのからだのようにグニャグニャと揺れる
坂口 安吾 / 散る日本 amazon
海底の藻草のように、章魚(たこ)の吸盤のある足のように、意地悪くからむ
萩原 朔太郎 / 萩原朔太郎全集 amazon
朽ち木を打つが如く何の手答えもない
菊池 寛 / 恩讐の彼方に amazon
心の中に、温度を高められて火を発する黄燐の化学変化のような、急激に内部作用を一変するような変化が起こる
野間 宏 / 崩解感覚(地獄篇第二十八歌)(1956年) amazon
十二時過ぎたシンデレラの衣装同様あとかたもなく消え去る
安岡 章太郎 / 質屋の女房 amazon
冬空を過(よぎ)った一つの鳥かげのように、自分の前をちらりと通りすぎただけでそのまま消え去る
堀 辰雄 / 菜穂子―他五編 amazon
算盤(そろばん)で弾き出すようにきちんと計画を立てる
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
埃は黄褐色で霧のごとく地上の凡(すべ)てを掩(おお)いかつ包む
長塚 節 / 土 amazon
砂漠地帯で舞い上がった砂塵が霧のように降る
井上 靖 / 天平の甍 amazon
櫛の歯を引くように次々と去って行く
多岐川 恭 / 夢魔の寝床 amazon
水を含んだ角砂糖のように崩壊する
倉橋 由美子 / 倉橋由美子の怪奇掌篇 amazon
城のように整然と頭にある計画
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
血が逆流して肉が痙攣を起こすほど、大冒険小説の魅力を感じさせる計画
獅子 文六 / てんやわんや amazon
手負いの獣のごとく猛り狂う
池波 正太郎 / 鬼平犯科帳〈1〉 amazon
砂埃が黒い苔のように付着している上衣
野間 宏 / 顔の中の赤い月 amazon
丸太ん棒のように丘を転がり落ちる
杉本 苑子 / 今昔物語ふぁんたじあ amazon
売り物の熱帯魚みたいに人々が右往左往する
加賀 乙彦 / フランドルの冬 amazon
あまりにも壮大な、意味ありげな風景が、少年の心を人さらいのように遠くへ誘い出す
村松 友視 / 由比正雪 amazon
匙(さじ)からこぼれる粉砂糖のようにさらさらと形を変える
山田 詠美 / ハーレムワールド amazon
仕上げの一のみ一のみに全神経を集中させる彫り師のように、論文の細部の仕上げに身を打ち込む
柴田 翔 / されどわれらが日々 amazon
蜘蛛の巣にぶらさがった蝶の死骸のように、外見だけ保って血も実体も失う
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
はやてに吹かれた木の葉のように、からだを斜めにして逃げ出す
宮沢 賢治 / 鹿踊りのはじまり amazon
手繰られた縄は滑車をとおるときに、氷雨のような繁吹(しぶき)をあたりに散らす
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
橋の欄干に涼み客が数珠玉になっている
川端 康成 / 掌の小説 amazon
まだ話していたい気持ちに軽くピリオドを打つように受話器を置く
落合 恵子 / センチメンタル・シティ amazon
将棋の駒を動かすように、あまりにも機械的に事を運ぼうとする
石川 達三 / 花のない季節 amazon
露店がぎっしりシラミの卵みたいにつながる
安岡 章太郎 / 質屋の女房 amazon
電線の雀みたいにプールの縁に並ぶ
富岡 多恵子 / 砂に風 (文春文庫 amazon
大きな鳥が翼を羽ばたかせたように、ズボンが空中に舞い上がる
福永 武彦 / 草の花 amazon
土俵につんのめった相撲取りのように他愛ない姿
獅子 文六 / てんやわんや amazon
春先の筍(たけのこ)みたいにぐんぐん大きくなる
島崎藤村 / 嵐
鋭く切り立った尾根が前後の植物相を一変させるみたいに
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
息をひそめ、(鳴っている)電話機をじっと見ていた。黒板に書かれた長く難解な数式の手がかりを求めて、少し離れたところから細部を検分する人のように。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
僕はひびの入ったダチョウの卵を温めるみたいな格好で(固定)電話機を胸に抱えてベッドに腰を下ろした
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
ものすごく遠くの方で女が喋っている声が聞こえた。長い廊下の向こうの端から聞こえてくるような声だった。小さくて乾いていて、妙な響き方をした。内容までは聞き取れなかったが、それはとても辛そうな声に聞こえた。辛そうに、途切れ途切れにその声は話し続けていた。@略@まるで死人が語りかけているみたいだな、と僕は思った。長い廊下の端の方から死人が話しかけている。死んでいるというのが、どれほど辛いことなのかについて。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
コール音が深い底無しの虚無の中におもりを垂らすようにいつまでもいつまでも鳴り響いていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
電話機の前に座っただけで僕の心はどうしようもなく震え混乱した。強い横風を受けたときのように、僕の体は揺らぎ、息をすることさえ困難になった。@略@僕は何度もダイヤルを回し間違えた。何度やっても正確な数字の配列を辿ることができなかった。そして五回目か六回目で僕は受話器を床に放り投げた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
彼女の体は今にも分解して消え失せてしまいそう
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
ガードをかわしてシュートするバスケット選手そっくりの動作で、泥濘(ぬかるみ)を避けとび跳ねながら走っていく
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
口の中が埃でざらざらする。ぼくぼくと灰の中を歩いているようだ。
火野葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊 麦と兵隊」に収録 amazon
砂埃は黒煙のように街に漲った
小杉 天外 / 初すがた amazon
馬車が鈴をならしてとおるごとに白い砂ほこりが砲煙のように舞いあがる。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
その柱はひどくグラグラしていて天井から砂埃が二人の襟足に雲脂(ふけ)のように降りかかって来た。
林 芙美子 / 清貧の書 amazon
土埃りにつつまれて、あたかも煙幕でも張ったよう
長谷川 四郎 / 鶴 amazon
黄色い土煙が濛々と立ちのぼり、煙の幕の中に進軍して行く部隊が影絵のようになったり
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)」に収録 amazon
煙は風にちぎれて綿ぼこりのようになって空に吸われていた。
水上 勉 / フライパンの歌 (1962年) amazon
細かいガラス屑のような飛沫
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
大地から立ちのぼる炎に似たかげろう
北 杜夫 / 谿間にて「新潮日本文学 61 北杜夫集―楡家の人びと・他」に収録 amazon
柳絮(りゅうじょ、泥柳の花)は@略@ゆらりゆらり、お転婆娘が遊びに行くように、空気の中を舞って
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
便器は、蓋をとると、蠅が勢いよく、胡麻を撒いたように舞い上った。
平林 たい子 / こういう女・施療室にて amazon
彼らは、嵐に追ッ立てられる襤褸(ぼろ)っ屑のように、事務所へ殺到した。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
窓から、通風路から(、略)風のように忍び込んだ。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
誰もオガラのようにあっけなく飛ばされ倒されて
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
絶滅間際の怯えた恐竜のように、山の中をこうしてうろうろとかくれ場所を探している。
大庭 みな子 / 啼く鳥の amazon
すれ違う寸前、彼女たちのおしゃべりが、ふと静まった。俺を見ているんだ!--そして両者は静かにすれ違うと、しだいに距離を広げて行った。まるで剣豪同士の出会いである。
赤川 次郎 / 三毛猫ホームズの推理日記 amazon
黄塵を被り、土人形のようになり
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)」に収録 amazon
ひきがえるのように麦畑のなかへ飛びこんで、麦畑を横切り石崖を攀じ登
り木立ちのなかに姿をくらました。
井伏 鱒二 / 多甚古村 amazon
君はやるべきことはやった。今度は俺の出番だ。ベンチに下がってのんびりゲームの成り行きを見ていればいい。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
ふかえりは電話口でしばらく黙っていた。何かを手近の棚に載せてじっと眺めているような沈黙だった。好印象と胸のかたちの関係について、考えを巡らせているのかもしれない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
フリーのライターだかジャーナリストだかが、血の臭いを嗅ぎつけた鮫みたいにうようよ集まってくる。小さなボートが鮫の群れに取り囲まれている情景を、天吾は頭の中で想像した。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
夕立ちが過ぎ去ると、あとには水浸しになった道路が残った。太陽が戻ってきて、その水を全力で蒸発させ、都市はかげろうのような蒸気に覆われた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
手の中に残された死んだ受話器を、しばらく黙って見つめた。農夫が日照りの季節に、ひからびた野菜を拾い上げて眺めるみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
まるで鉈(なた)をふるって吊り橋を落とすみたいに
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
置き時計は鈍い音を立ててチェストの上に落ちた。まるで地球に重力があることを突然思い出したみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
彼らはどのあたりまでが周到で、どのあたりからがやり過ぎになるかを心得ている。ジェイ・ギャツビーの図書室と同じだ。本物の書物は揃える。しかしページを切ることまではしない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
誰も乗り合わせていない昔の幽霊船みたいに
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
そう言うと、間を置かずにふかえりは電話を切った。会話は一瞬にして消滅した。誰かが研ぎ澄まされた鉈(なた)を振り下ろして、電話線を断ち切ったみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
世界は前に進まなくてはならないから、いちおう前に進んでいる。安物の目覚まし時計みたいに、与えられた役割を無難にこなしているだけだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
受話器を耳に当てると風の吹く音が聞こえた。流れに身を屈めて透明な水を飲む、美しい鹿たちの毛を軽く逆立てながら、狭い谷間を吹き抜けていく気まぐれな一陣の風だ。しかしそれは風の音ではなかった。機械を通して誇張された誰かの息づかいだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
暗い入り口があれば、猫がどうしても中をのぞき込まずにはいられないのと同じ
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
病院を行ったり来たり。毎日、お手玉しながら生活してる感じで、気が抜けないんだから
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
山をトロッコが下るように、勢いをつけて進む。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー 角川文庫 amazon
潰乱した軍隊のように、散り散りに移動をはじめた。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
方舟にさえ乗せてしまえば動物を救済することができると言うような、ボウリング場に行けば全員が幸福になるとでも言うような、鳥井はそんな力強さを見せ、「とにかく、ボウリングに行こう」と言い切った。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
ゾンビになった者が、ほかの人間を追ってくるのと同じだ。仲間になっちゃいましょうよ
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
あっという間にホームが人で溢れる。乾いた地面を狙い、流れる水が湿らせていくかのように、空間が埋め尽くされていった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
その時、自分たちの座っている場所とは反対側の窓に、すれ違う新幹線が見えた。一瞬のことではあるが、激しい音を立てて、後方へと走り抜けて行く。穏やかに疾駆することは許さないぞ、刺激があってこその人生だ、とお互いを揺らし合うかのようだった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
唐突に新幹線が揺れた。ほんの短い間だったが、獣が毛に付着した水を払うために、ぶるっと胴を震わせるかのような、そういう揺れだった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
車両の揺れが、相変わらず、木村を小突くようだ。忍耐の鎖を破るように唆してくる。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
ナメクジの歩いた痕のように、トイレまでうっすらと赤い線が延びて
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
携帯電話は床で少し跳ねると、滑り、荷物置き場の棚の奥へと入った。海外旅行用の大きなトランクが二つ並んでいたのだが、トランク同士の隙間に潜ったのだ。樹から転げ落ちたリスが、木の根の穴に逃げ込むかのようだ。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
飄々 風(ひょうひょう、かぜ)のごとき変動
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
その空想がちようど漁船から漏れた油のやうに長く尾を引いて薄れてゆく
丸谷 才一 / 横しぐれ amazon
亡くなった者に対する思慕も、音のない鐘をたたくようなもので、相手からの反応がない
林 芙美子 / うず潮 (1964年) amazon
もし彼女が僕にその話をしてくれなかったら@略@僕はあるいはこの本を書いていなかったかもしれない。そういう意味ではマッチを擦ってくれたのは彼女だった
村上 春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート amazon
五台の自動車が、フィルムの影のように音もなく走り去るのを見た。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
五六匹の虫が行列したような漁船の一群が発見された。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
不良の酒のように絶えざる車体の微動につれて人を酔わす。
永井荷風 / あめりか物語 amazon
やつは吃驚して長い廊下を獅子舞いのように走って逃げた。
林 芙美子 / 山中歌合「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
今年の春ごろから秋にかけて、背丈がスカンポのように伸びていた。
木山 捷平 / 初恋「落葉・回転窓 木山捷平純情小説選 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
巣をおびやかされた蜂のように右往左往している。
渋川驍 / 巷の風
身長(せい)だけは伸び伸びと、筍のように伸びて行った。
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
まるで蛸が自分の足を喰うような話で、穴を埋めながら他方にまた新しい穴をあけているのですが、当座のやりくりだけはつく、そういう方法です。
石川 達三 / 神坂四郎の犯罪 (1958年) amazon
嵐のように暴れ廻っている
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
せっかく涌いた希望も泡のようにたわいもなくはじけてしまった。
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
風呂の中に海坊主のようにもぐったり
阿部 知二 / 冬の宿 amazon
二人で穴を掘って埋めてしまったかのように、その後手紙の話は夫婦の間から姿を消した。
黒井 千次 / 群棲 amazon
植林してきちんと並んだ大木みたいで
ペンライト(村上龍)「魔法の水 (角川ホラー文庫―現代ホラー傑作選)」に収録 amazon
あたかも意地の悪い馬が馴れぬ乗手にするように、船体は猛烈にその背を振った。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
杭のように路傍に立ちならんだ兵卒ども
立野 信之 / 軍隊病「軍隊病―兵士と農民に関する短篇集 (昭和4年) (日本プロレタリア作家叢書〈第5篇〉)」に収録 amazon
米内火艇が引っかいたような水脈を曳いて疾駆していた。
大岡 昇平 / 俘虜記 amazon
熱にこがされる古いスカートの匂いが、栗の花のように匂う。
林 芙美子 / めし amazon
カメレオンのように、よく変った。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
蛇のようにうねらせる肢体のうごき
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
柱時計が博物館のお面のようにならんで
宇野浩二 / 蔵の中 amazon
それ(微かな悔い)は流れ星のように尾を引いて彼の心から消える
富田 常雄 / 姿三四郎〈上巻〉 amazon
雪だるまのようになって転げこんできた。
阿部 知二 / 冬の宿 amazon
風景のなかにレースのような淡さで、仏蘭西(ふらんす)人はひそかにのんびりと暮していた
林 芙美子 / 浮雲 amazon
鼻の穴に酸素吸入や胃袋につながる管をつっこまれ、胸には何本もの心電図のコード@略@体じゅうに種々様々の管や紐がまるで大きな蜘蛛の巣のように纏りついている。
安岡 章太郎 / 酒屋へ三里、豆腐屋へ二里 amazon
ぺっちゃんこにつぶれたん。蟹をたたきつけたように
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
水が砂地に吸い込まれるように、立ち消えになってしまった。
森 鴎外 / ヰタ・セクスアリス amazon
手を焼いた火箸をほうり出すように箒を棄てて
森 鴎外 / 雁 amazon
アンチは彼の軽い体を蝶番(ちょうつがい)のように下にして、押さえ込んだ。
島田 雅彦 / ドンナ・アンナ amazon
こおりがとけたように、
あまん きみこ / おにたのぼうし amazon
歯を立てた櫛(くし)のような、墓標のような、杙(くい)の列
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
残った酒が徳利の口から、吃気(しゃっくり)のようにごぼごぼこぼれた
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
一つ処を幾度も幾度も、サロンデッキを逍遥する一等船客のように、往復した
葉山 嘉樹 / 淫売婦 amazon
女房を古草履みたいに捨てて
宮本 輝 / 蛍川 amazon
話は水が砂に沁みこむようにとぎれてしまう。
森 鴎外 / 山椒大夫 amazon
罪咎(つみとが)もない女房を塵芥(ちりあくた)のようにすててしもうた
宇野 千代 / おはん amazon
ロマンスを彩って垂れていた薄青色の紗の幕が、途端にハッと消えてしまいました。まるで別荘の廊下に置かれた裸蝋燭の灯が、冷たい夜風のか弱いひとあおりにフッと滅してしまうような工合です。
村上知行 / 殉情の人
ホルンのパイプの輪のように、クルクルとまわりながらとぶんだ
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
ただ土鼠(もぐら)のように、命のある限り、掘り穿って行く
菊池 寛 / 恩讐の彼方に amazon
蚕のごとくかんまんな動作で、うごめいている。
林 芙美子 / めし amazon
「どこへ行くんだ」省三は糸の切れたタコを追うように慌てて制した。
大庭 みな子 / 啼く鳥の amazon
兵士を満載したカッター(=船)と単檣艇(ビニス)の列が、長い綱の結び目のようにつづいていた。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
鼯(むささび)のごとく逃げた。
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
希望と決意は梅雨の晴れ間の虹のように消えて
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
鼠のようにしつこく逃げまわって
北 杜夫 / 硫黄泉「牧神の午後 (中公文庫 A 4-9)」に収録 amazon
まるで風のように左舷の方へ消え去った。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
停留所はまるで祭帰りの道のように、キャラメルの箱や、鼻をかんだ塵紙があっちこっちに散乱して
林 芙美子 / 山中歌合「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
荒くれた女が、野獣のように走って行く
島崎 藤村 / 千曲川のスケッチ amazon
嵐のようにすさまじい闖入者がやってくる。
檀一雄 / 花筐「花筐・光る道 他四編」に収録 amazon
密偵と、流言と、黄金とが、チフス菌のような狂暴さで、バラ撒かれた。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
自分の周囲のあらゆる隅ずみに腐蝕菌のように食いこみ工作し、味方を拡大した。
大江 健三郎 / われらの時代 amazon
青い硝子が粉のように床で砕けて
平林 たい子 / 施療室にて「こういう女・施療室にて (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
白い波頭の上に海鳥のように身体をゆすっている。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
たとえば鱇の尻尾が籠の目を探り当てるように、するりと細い隙間から入って来たのです・
井伏 鱒二 / 珍品堂主人 amazon
屋上から見ると、紺の軍服が蟻の行列のように隊門から町までつづいている
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
棒のように凍った手拭
林 芙美子 / 浮雲 amazon
それほどの大金ならば自分が少々いただいても影響はないはずだ。砂丘からひと掬いの砂を壜に入れて持ち帰るのと同じだ。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
波がさっと引くように、一斉に局員たちが逃げ出した。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
思い出は口から出て外気にふれたとたん変質してしまう。真空状態にとじこめてなんとか色を保っていたバラの花びらを外に出したときのように、みるみる茶色にしおれてしまう。箱つきならもっと高く売れたのに包装を解いて自分の手で触れてしまえば、たとえそれが一度きりでも大幅に値段の下がる年代物のおもちゃにも似ていた。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
佐山は猟犬のごとく獲物を追いたがって前脚で土を搔いている。その首輪を辛くも押さえている。悠木の心境はそんなだった。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
手負いの獣がしばし、棲み処である穴倉にうずくまり体力の温存をはかるように、慣れきった病室のベッドの白いシーツに包まって、自分の内に再び力が満ちてくるのを待っている。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
スコアは気球が最後の砂袋を投げ捨てるようにして六桁を越えた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
その何かが麻薬のように人の心をひきつけた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
それは象の墓場のようにも見えた。そして足を折り曲げた象の白骨のかわりには、見渡す限りのピンボール台がコンクリートの床にずらりと並んでいた。@略@台は同じ向きに八列の縦隊を組み、倉庫のつきあたりの壁まで並んでいた。まるでチョークで床に線を引いて並べでもしたように、その列には一センチの狂いもない。アクリル樹脂の中で固められた蠅のようにあたりの全ては静止していた。何ひとつぴくりとも動かない。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
電気スタンドとパソコンと携帯の充電器のコードが焼きそばみたいにからまっている。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
苫米地氏は一度ハマれば距離感を置くことすら難しい吸引力を持つブラックホールだ。
水道橋博士「藝人春秋 (文春文庫)」に収録 amazon
祝賀ビラを、雪のように白く降らせている
中島 京子「小さいおうち (文春文庫)」に収録 amazon
わっとやってきて、わっと去っていく。イナゴの大群のようなものか
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
「もしもし」別れた妻の声は、透明なガラスに氷が当たる音を思わせた。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
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