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睡眠・眠る・寝るの比喩を使った文章の一覧(178件)
ゆっくりと目を閉じる。そしてスイッチを切るように頭の中から全ての灯りを消しさり、新しい闇の中に心を埋めた。
村上春樹 / 1973年のピンボール amazon
僕らはすっかり満腹し、温かさに躰(からだ)を軟体動物のそれのようにぐにゃぐにゃにし、板の間の藁の上へ毛布をかぶって横たわった
大江健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
ぼくは、急に頭のうしろが重たくなり、その重さに負けて、ぼくの体はゆっくりと宙返りをうち、そのまま頭を下に、さかさまになって、深い眠りの海へ沈んでいった
三浦哲郎 / ユタとふしぎな仲間たち amazon
眠りがやってきて、温かい泥の中に僕を運んでいった
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
僕は死んだようにぐっすりと眠っていた。僕は本当に眠りの中枢に達していたのだった。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
布団の中にもぐりこんでしっかりと目を閉じた。やがて夢のない、重い鉛の扉のような眠りがやってきた。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
生まれてこのかた一度も傷ついたことのない十三か十四の女の子みたいな顔
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
やっと体が通るくらいのせせこましい眠りの穴に落ち込んでいく
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
意識は起きているはずなのに体がついていかない。全身の細胞が睡眠を求めてストライキを起こしているようだ。
七尾 与史 / 死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) amazon
ひどい疲労から、小石のように眠りに落ちる
堀 辰雄 / 恢復期 amazon
ことことと石段を降りるように寝入って行く
幸田 文 / おとうと amazon
煙の消えていくように目を閉じる
井伏 鱒二 / 山椒魚 amazon
鼾が高くなり低くなり、調子の悪い笛のよう
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
万象に疲れた人のような鼾をかく
夏目 漱石 / 門 amazon
遠くの戦車の轟きに似たような、いびきの音
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
襟もとまですっぽり絹蒲団をかぶって、朽ち木のように寝ている
水上 勉 / 雁の寺 amazon
夢のもどかしさが、奇妙な襟巻のように喉に絡み付く
北村 薫 / 水に眠る amazon
布団の対角線上を泳いでいるような格好で、おおらかに眠っている
中島 みゆき / 泣かないで・女歌(おんなうた) amazon
睡魔が急に脳味噌を蕩(とろ)かすように襲ってくる
阿刀田 高 / ナポレオン狂 amazon
海綿が水を吸うように、じくじく眠りを吸収する
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
魚の骨つきを裏返すように、体をぐるりとこっちへ引っくりかえす
谷崎 潤一郎 / 痴人の愛 amazon
粘液の中に軀(からだ)を浸しているような眠り
吉行 淳之介 / 砂の上の植物群 amazon
とぎれがちで夢ばかり見る拷問のような眠り
森 瑤子 / 傷 amazon
母親に抱かれた子供のように、前後を知らず深い眠りに落ちる
堀 辰雄 / 菜穂子―他五編 amazon
水から揚げられた魚のように、ただ荒い息だけして横たわっている
松浦 理英子 / 親指Pの修業時代 上 amazon
彼は心を静め、目を閉じて眠りについた。意識の最後尾の明かりが、遠ざかっていく最終の特急列車のように、徐々にスピードを増しながら小さくなり、夜の奥に吸い込まれて消えた。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
よくいるかホテルの夢を見る。
夢の中で僕はそこに含まれている。つまり、ある種の継続的状況として僕はそこに含まれている。夢は明らかに継続性を提示している。夢の中ではいるかホテルの形は歪められている。とても細長いのだ。あまりに細長いので、それはホテルというよりは屋根のついた長い橋みたいにみえる。その橋は太古から宇宙の終局まで細長く延びている。そして僕はそこに含まれている。
@略@ホテルそのものが僕を含んでいる。僕はその鼓動や温もりをはっきり感じることができる。僕は、夢の中では、そのホテルの一部である。
そういう夢だ。
@略@(夢から覚めて)手脚をゆっくりと伸ばしてみる。そして自分がただの自分であり、何処にも含まれてなんかいないことを確かめる。僕は何処にも含まれていない。でも夢の中の感触を僕はまだ覚えている。そこでは僕が手を伸ばそうとすれば、それに呼応して僕を含んだ全体像が動く。水を利用した細かい仕掛けのからくりのように、ひとつひとつ注意深く、段階ごとにほんの微かな音を立てながら、それは順番に反応していく。僕が耳を澄ませば、それが進行していく方向を聞き取ることができる。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
突然眠りがやってきた。舞台の暗転みたいな一瞬の急激な眠りだった。眠りに落ちた瞬間のことを僕はちゃんと覚えている。巨大な灰色猿がハンマーを持ってどこからともなく部屋に入ってきて、僕の頭の後ろを思いきり叩いたのだ。そして僕は気絶するみたいに深い眠りに落ちた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
ハードでタイトな眠りだった。@略@固い固い鉄球の中で僕は体をくるりと丸めてリスのように深く眠っている。ビルを壊す時に使うような鉄球。中がくりぬいてある。その中で僕は眠っている。ハードでタイトでシンプルで・・・・・
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
長いハードな一日だった。犬のように眠りたい。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
その音はすごく遠くから聞こえるようでもあり、近くのようでもあった。僕の知らないうちに地球がいくつもの行き来できない細かい絶望的な層に分かれていて、その近接した層のどこかからもれ聞こえてくるような感じの音だった。物哀しくて、手が届かなくて、そしてリアルだった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
体の中に一片の眠りも存在しなかった。まるで干しあがった井戸のように僕は目覚めていた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
死んだ犬みたいにぐったりと足を開げ、投げ出している
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
いろいろの雑音……がすべて彼の睡い耳に溶け合って、さながら子守唄のように聞かれた。
相馬 泰三 / 六月 amazon
私は哲生のたてる物音を子守歌のように頼もしく感じて眠りについた。
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
あたりが寝静まると、家のどこかが微かに軋みはじめる。それが、時には、家の歯ぎしりのようにきこえる。時には、すすり泣きのようにもきこえる。
三浦 哲郎 / みちづれ―短篇集モザイク〈1〉 amazon
眠りのうえを、優しい恋人の愛撫のように、微かな雨脚が渡りつづけているのだ。
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
俺たちはモーターのように無感覚で、疲労することを知らない道具である
立野 信之 / 軍隊病―兵士と農民に関する短篇集 (昭和4年) amazon
敷布団の上に、ふたりは二個の直線でしばらくそうしていた。
瀧井 孝作 / 無限抱擁 amazon
父親は何もせず、ただ家で横になって寝ていた。そういう時、その男はまるで電源を切られた、うす汚れた何かの装置のように見えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
自分が新しい人間になっていることに天吾は気づいた。目覚めは心地よく、腕や脚の筋肉はしなやかで、健全な刺激を待ち受けていた。肉体の疲れは残っていない。子供の頃、学期の始めに新しい教科書を開いたときのような、そんな気分だった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
外の世界と自分の世界を厳密に隔てるように、掛け布団を首まで引っ張り上げた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
岸に打ち上げられた鯨のように横たえたまま
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
目覚めたときにはほとんど何も覚えていない。夢の微かな切れ端のようなものがいくつか、意識の壁に引っかかっていることはある。しかし夢のストーリーラインは辿れない。残っているのは脈絡のない短い断片だけだ。彼女はとても深く眠ったし、見る夢も深い場所にある夢だった。そんな夢は深海に住む魚と同じで、水面近くまでは浮かび上がってこられないのだろう。もし浮かび上がってきたとしても、水圧の違いのためにもとの形を失ってしまう。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
二つの異なった世界が、彼女の意識を無音のうちに奪い合っている。まるで大きな河口で、寄せる海水と流れ込む淡水がせめぎ合うように。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
足を踏み外して、真っ暗な底なしの穴に落下していくような深い眠りだった。瞼が自然にかぶさり、次の瞬間に意識が消滅した。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
寝袋の中で蝉の幼虫のように身体を丸く縮め、暗い天井を見上げた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
睡魔はまるで古代の棺の石蓋のように容赦なく彼の頭上にのしかかっていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
闇を見つめて悶々としているうちに、じりじり時間がたっていく。 夜中の一時近くなって、やっと眠気の尻っ尾をつかんだような気がした。それを慎重にたぐり寄せていく。ドブネズミのようなその長い尾を引いていくと、その先に短い夢があった。灰色の淋しい街の風景のような、一瞬の夢。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
ベッドに寝かせられると一分ほどで眠りにはいった。エレベーターで際限なく降りていくような落下感があった。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
ほの暗い灯りとやわらかい音楽が徹夜つづきの連日のおびただしい疲労を溶かしてくれるようだった
開高 健 / パニック「パニック・裸の王様 (新潮文庫)」に収録 amazon
駒代は全く強盗にでも辱められたようなあられもない寝ざま
永井 荷風 / 腕くらべ amazon
潮を噴くようにイビキをかく
大庭 みな子 / 啼く鳥の amazon
この音楽は、わたしを揺すぶって悔恨のような、不安な、夢の多い浅い眠りにゴトンと陥没させるのです。
大原 富枝 / ストマイつんぼ (1957年) amazon
まるで息をしていないように眠っていた。
庄野 潤三 / 静物 amazon
死のような仮睡(まどろみ)に落ちた
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
棒杭のように身体を投げ出し
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
身動きすると苦しく、目をつぶると靄(もや)のような眠気がかぶさってくる。
北 杜夫 / 谿間にて「新潮日本文学 61 北杜夫集―楡家の人びと・他」に収録 amazon
釘抜きで挟まれたように眠くなった。
石坂 洋次郎 / 石中先生行状記 amazon
ふとりすぎて、フトンのように寝ている小母さん。
サトウ ハチロー / 夢多き街「夢多き街―抒情詩と随筆 (1947年) (詩と随筆叢書〈第6冊〉)」に収録 amazon
君の寝顔は憂鬱な白薔薇のようで素敵だよ。
島田 雅彦 / 観光客「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
涎(よだれ)が流れて、私の蒲団の上までみみずのような線をひいている。
平林 たい子 / こういう女・施療室にて amazon
妖術をかけられている娘のようにも思われてくる。
川端 康成 / 眠れる美女 amazon
寝床のなかに、実をとったあとの莢(さや)のように、兵太のからだが長くのびている
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
心地よく小波立ちながらどこまでも平らかにひろがっていく眠り
古井 由吉 / 水「古井由吉自撰作品 2 水/櫛の火 (古井由吉自撰作品【全8巻】)」に収録 amazon
眠った子供はだらりとして、固体から半分液体になりかかっているように圭子の両腕の真中に垂れた。
平林 たい子 / 鬼子母神「筑摩現代文学大系 (41) 平林たい子・円地文子集 地底の歌 こういう女 嘲る 盲中国兵 鬼子母神 私は生きる 花散里 ひもじい月日 くろい紫陽花 男のほね 妖 二世の縁 他」に収録 amazon
唇は開いたまま、時々樋(とい)に水の溜るようないびきをあげている。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
頭を枕に落すと同時に、まるで機械のように簡単に眠りに落ちる
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
蠎蛇(うわばみ)のような鼾を掻き
宮尾 登美子 / 櫂 amazon
まだ眠くて堪らない小犬のように眼をつむったまま加奈子の笑い声をうるさがった。
岡本 かの子 / 春「岡本かの子全集 (第2巻)」に収録 amazon
犬の仔のようにころがりあっている。
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
すてきに偉大な鼻は約五秒置きぐらいに自動車の警笛に似た発声とともに異様な震動を起すのであった
宮地 嘉六 / 煤煙の臭い「宮地嘉六著作集〈第1巻〉 (1984年)」に収録 amazon
ごろりと横になり、古畳の上で腐ったようにうとうと
石川淳 / 普賢 amazon
蒲団は薄いのが一枚しかない。彼はその中にくるまって、柏餅のようになって寝た。
島崎 藤村 / 春 amazon
寝入るときはそのままねむりの中ヘズブ沼に沈みこむようにひたすら体をゆだねていけばそれでいい
椎名 誠 / 長く素晴らしく憂鬱な一日 amazon
祝祭の花火のような夢
安部 公房 / 他人の顔 amazon
泥のように疲れて眠っている。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
麻酔がかかったように眠ってばかりいる。
向田 邦子 / 犬小屋「思い出トランプ (新潮文庫)」に収録 amazon
朝々の目ざめはいつもぽおっとした熱のようなものが、瞼の上に重く蜘蛛の巣のように架っていて
室生 犀星 / 性に眼覚める頃 amazon
蒲団から亀のように首を出す
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
銀は赤子を起きぬように、莢(さや)からぬけるように少しずつからだを抜いて出
した。
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
母上は疲れ果てたように、間もなく破れた草笛のような、かすれた小さい寝息を立てて眠った。
大原 富枝 / 婉という女 amazon
嗜眠症患者のように眠り続ける。
岡本 かの子 / 春「岡本かの子全集 (第2巻)」に収録 amazon
突然、暗い漏斗の底からぐいと引き摺(ず)り上げられたように、はっと眼が覚めた。
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
仰向くと蟇蛙(ひきがえる)を前から見たように真平(まったいら)に圧しつぶされ
夏目 漱石 / 道草 amazon
閉じた長いまつ毛も、枕に広がる髪も、まるで本物の眠り姫のように清楚で美しく
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
火にあぶったスルメのように、ふんぞり返ってしまって
山本 有三 / 波 amazon
子守唄のようになってかれのたましいをフワフワとねむりの国へさそいだしてくれる
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
死のような眠りにつく
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
かれはねむりの砂をかけられたように
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
無心に眠っている藍子は、夜の間に却って発育する若根のように、その生気を溢らして、足でしきりに着物の裾を蹴拡げる。
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
丸太棒のように眠った
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
目が糊づけにされたように渋って来た。のめるようにひたすら眠い。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
ひどい疲労から小石のように眠りに落ちた。
堀 辰雄 / 恢復期 amazon
スイッチをOFFにしたような眠り
吉本ばなな / 白河夜船 amazon
沈みこむように寝入った。
川端康成 / 眠れる美女 amazon
重苦しい泥濘のような眠り
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
睡魔が鉛のように重く、打ち克ちがたく私に襲ってくる。
平林 たい子 / 大草原「日本の文学〈第48〉平林たい子,大原富枝 (1969年)地底の歌・秘密・桜・他 婉という女・大草原・他」に収録 amazon
他人の家で目覚めると、いつも別の体に別の魂をむりやり詰めこまれてしまったような感じがする。
村上 春樹 / 風の歌を聴け amazon
畳に髪を広げて眠りに落ちていく私たちはスイッチを切った眠り人形みたい
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
彼女の寝顔は、私の寝顔みたいに、熟睡するとあったまったプリンみたいに横に広がって目鼻立ちがのっぺり見えるようなこともなく利発そうだ。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
まるで浜辺にうちあげられた人魚のようにしっかりとタオルにくるまったまま
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
双子は缶詰のオイル・サーディンのような形に並んでベッドにもぐりこんだまま
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
頭の中はまるで古新聞を丸めて押し込んだような気がする。眠りは浅く、いつも短かかった。暖房がききすぎた歯医者の待合室のような眠りだった。誰かがドアを開ける度に目が覚める。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
この何日かの疲れが巨大な波のように突然彼に押し寄せてきた。そして血液の中を生ぬるいかたまりがゆっくりと巡った。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
絃は上掛けをだんごに巻きつけていくのではなく、眠りながらよくこんなに器用にできるなと感心するほど、逆円錐状に身体に沿って巻きつけていくので、足の方が先細りで腕も肩も隙間なく包まれている。彼の後ろ耳、エジプトのミイラみたいに布の巻きついた身体のなだらかな曲線、本当にかすかな寝息。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
スイッチがパチンと切り替わるように、あっさりと眠りに落ちた。彼女は最近よく眠る。深く冷たい沼をさまようように、静かに眠るのだ。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
生まれた家では、夜おそくよく汽笛が響いてきた。天井板のこみいった木目に怯えて、寝付かれない子どもの耳に、それが騒音というにはあまりにもか細い、なにか優しい未知の華やかさのように聞こえてきた。ちょうどそれは、おもいがけない遠くでさざめいている都の夜のようなものである。
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
聴くまいとするのに耳が起きている。時計が兵隊の行進のようだ。
幸田文 / 流れる amazon
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