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表情・顔に表れた気持ちの比喩を使った文章の一覧(469件)
まるで春を迎えて世界に飛び出したばかりの小動物のように瑞々しい生命感を体中からほとばしらせていた。その瞳はまるで独立した生命体のように楽し気に動きまわり、笑ったり怒ったりあきれたりあきらめたりしていた。
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
花瓶を割った子供のように情けない顔
七尾与史 / 死亡フラグ立ちました! amazon
治療を終えたばかりの歯医者のように涼しい顔
七尾与史 / 死亡フラグが立ちました! amazon
心に少しの憂いがある時は、月の前を横ぎる薄雲ほどの微かな陰翳(かげ)が美しい顔にかかる
中島 敦 / 悟浄出世 amazon
凍てつく冷笑のつららが突き刺さる
島田 雅彦 / 未確認尾行物体 amazon
刑事に向かって、ふんと鼻先に冷笑を浮かべるようなふてぶてしさ
南条 範夫 / いつかあなたが amazon
何事にも集中できない散漫な劣等生のように窓の外を眺める
大庭 みな子 / 大庭みな子全集 第2巻 amazon
水面へ浮かび上がった泡のようにすぐ消えて平静になる微笑
横光 利一 / 御身 amazon
秋雨の後の日射しを思わせる、いきいきとした顔色
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
水をそそがれた植木のように、生き生きとした顔色になる
岩田 豊雄 / 獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 amazon
空き缶の中で石を転がすような空虚な含み笑い
山本 周五郎 / やぶからし amazon
顔に表情がなく、花崗岩のように強ばる
レイモンド チャンドラー / 湖中の女 amazon
毒液でも注射されたように見る見る陰気な顔色になる
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
自らの描く遠い夢をうっとりと見やるような表情
村松 友視 / 由比正雪〈上〉 amazon
臨終の床に立ち会うような敬虔な表情
安部 公房 / 第四間氷期 amazon
笑顔が悪鬼のようにゆがむ
真継 伸彦 / 鮫 amazon
20ワットの白熱灯のような顔で笑う
鷺沢 萠 / 葉桜の日 amazon
ぱっと音を立てて朝開く花の割れ咲くような笑顔
横光 利一 / 微笑 amazon
十年来の友達にしか見せないような屈託のない笑顔
小池 真理子 / やさしい夜の殺意 amazon
皮膚が輝き出すような柔らかい笑顔
大仏 次郎 / 冬の紳士 amazon
一瞬たじろいだが、起きあがりこぼしみたいにすぐに笑顔で立ち直る
連城 三紀彦 / 恋文 amazon
漂白されたような温和な表情
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
少年のような伸びやかなはにかみ
落合 恵子 / センチメンタル・シティ amazon
重荷を背負わされた老婆のように顔を皺寄せる
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
重荷を背負わされた老婆のように顔を皺寄せる
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
野イチゴをつみに森へやって来た少女のように微笑みを浮かべる
大原 まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
いやな汁をいっぱいに含んだ海綿のような笑い
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
うっとうしい雲が晴れてゆくように表情が明るくなる
戸板 康二 / 家元の女弟子 amazon
太陽と友達にでもなったように晴れ晴れとした顔
徳永 直 / 太陽のない街 (1950年) amazon
夜光の球のように辺りを圧する顔
菊池 寛 / ある恋の話 amazon
心当たりのないところに矢が飛んできたという顔
干刈 あがた / ゆっくり東京女子マラソン amazon
ぽかりと口を開いたまま顔が空間に凍りついたようになる
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
全く耳にしない者の名を耳にしたといった面持ち
井上 靖 / 風林火山 amazon
わにのような大口をあけて、呆れたような表情をする
木山 捷平 / 苦いお茶 amazon
衿首のあたりの毛を立てた、怒ったときの猫そっくりの顔
落合 恵子 / 夏草の女たち amazon
猫が昼寝してるみたいな顔
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
顔が般若面のように鋭くとがる
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
吊りあがった両の目が血走って、玩具屋で買ってきた狐のお面のような顔に見える
井伏 鱒二 / 遥拝隊長・本日休診 amazon
頭から水をかけられたように、急に顔をこわばらせる
長崎 源之助 / ゲンのいた谷 amazon
表情が石膏の仮面みたいに白く強ばりつく
阿刀田 高 / ナポレオン狂 amazon
トウガラシを食べたサルのような顔
灰谷 健次郎 / ひとりぼっちの動物園 amazon
目の前にこまかい虫でもうるさくちらちらしているように顔をしかめる
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
顔に春の芽ざしを思わせるような霞み立つ気配が、まるで感じられない
円地 文子 / 朱(あけ)を奪うもの amazon
鋼のように固いしっかりした表情
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon
絶望を嚥(の)みこむような表情
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
毒液でも注射されたように見る見る陰気な顔色になる
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
廿世紀(にじっせいき)の憂鬱を独りで背負っているみたいな顔
小沼 丹 / 小さな手袋 amazon
走り雲の落としてゆく影のように、顔が瞬間暗くなる
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon
表情が淵のように蒼ざめて沈んで行く
石川 達三 / 花のない季節 amazon
判決でも待つような心細げな顔つき
三田 誠広 / 僕って何 amazon
ざまあ見ろというように、小づらにくい顔をして遠くから見る
野間 宏 / 真空地帯 amazon
隠れていた凶暴なものが表に出て来たように形相が一変する
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
九回の裏に逆転されそうな形勢になった野球の監督といった程度の真剣な面持ち
笹沢 左保 / 終りなき鬼気 amazon
深い思いを抱いているのだといわんばかりの真剣な顔つき
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
表情のない顔が能面のように冷たい
笹沢 左保 / 終りなき鬼気 amazon
飴をなくしてむずかっている子供を持て余しているような顔つき
安部 公房 / 砂の女 amazon
あらゆる人間の苦労を一身に集めたような、悲しげな困惑しきった面持ち
テネシー・ウィリアムズ / 欲望という名の電車 amazon
かつがれているのに喜びすぎるのは損だと思っているような顔付き
木山 捷平 / 木山捷平全詩集(雨) amazon
嬉しいような悲しいような、それが複雑に化合して、まるで仙人のような顔になる
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
大人でも子供でもないことに戸惑っているような中途はんぱな顔
黒井 千次 / 春の道標 amazon
熊を初めて目にした子狐のように恐れと好奇心の入り混じった顔
高橋 三千綱 / 涙 amazon
目を伏せてかすかに笑みを湛えている仏像のような顔
倉橋 由美子 / 倉橋由美子の怪奇掌篇 amazon
驢馬のように満足し切った顔
福永 武彦 / 草の花 amazon
無理に隅っこから引っ張り出される猫のように迷惑そうな顔
伊藤 整 / 青春 (1960年) amazon
見事に彫刻した顔を見るように、隙間のない極度にひき緊(し)まった表情
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
心に少しの憂いがあるときは、月の前を過ぎる薄雲ほどの微かな陰翳が美しい顔にかかる
中島 敦 / 悟浄出世 amazon
顔に悲しみと歓びとが、影と日向のようにかわるがわる現れる
三島 由紀夫 / 潮騒 amazon
平家蟹のような人の好い顔つきで笑う
壷井 栄 / 大根の葉 (1960年) amazon
平家蟹のような難しそうな顔をする
北村 薫 / 水に眠る amazon
亀の子のように怯えた顔
坂口 安吾 / オモチャ箱・狂人遺書(水鳥亭由来) amazon
髭づらが苦痛にゆがみ、目は血走って、凶暴な風貌が、なおいっそう鬼の面のように見える
杉本 苑子 / 今昔物語ふぁんたじあ amazon
顔がお面のようにぱりぱりしている
中沢 けい / 野ぶどうを摘む amazon
繊細な硝子細工のように、ひどく脆くて危険な微笑
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
人形の魂が注入されて行くような、奇跡を目の当たりに見ているような表情の変化
阿久 悠 / 瀬戸内少年野球団〈上〉 amazon
朝霧の散るように、顔から険しい相が消える
外村 繁 / 筏 amazon
岩原に突き立った棒杭のように無表情
古井 由吉 / 杳子・妻隠 (1975年) amazon
口もとを般若のように裂いてにんまりと笑う
真継 伸彦 / 鮫 amazon
わにのように大口をあけて、呆れたような表情をする
木山 捷平 / 苦いお茶 amazon
雲間から再び太陽が顔を出したような感じで、晴ればれと温かく屈託のない微笑
森 瑤子 / 風物語 amazon
北の国の海を見るような暗い表情
大仏 次郎 / 冬の紳士 amazon
夕暮れのような暗さが顔一面に広がる
獅子 文六 / てんやわんや amazon
眠い小禽のふくれた羽毛のように、朝のものうさの抜け切らない若い妻の表情
永井 龍男 / 青梅雨 amazon
獣のように無表情でこわばった顔
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
肌から粉をふいたように生気のない顔
高井 有一 / 夜の蟻 amazon
顔が永遠の中に凍りついたように見え、薄ら氷に似た羞恥がほんのりと浮かぶ
福永 武彦 / 草の花 amazon
氷が裂けるように、表情にゆっくりと亀裂が走る
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
老猫が媚びを呈するかのような笑み
司馬 遼太郎 / 最後の将軍 amazon
ゴムのように伸びた笑みを浮かべる
小池 真理子 / やさしい夜の殺意 amazon
小麦粉をまぶしたような精気の乏しい表情
高橋 三千綱 / 涙 amazon
辺りの光をすべて拒絶でもするようなこわばった表情
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
お神楽のお面のようにこわばったご面相
小沢 昭一 / 美人諸国ばなし amazon
材木のひとかけらのようにほとんど表情を変えない
レイモンド チャンドラー / 湖中の女 amazon
苦虫を噛みつぶしたような、サギのような顔つき
開高 健 / 地球はグラスのふちを回る amazon
血塗られた刀を下げた素浪人に思わせるほどの殺気走った表情
高橋 三千綱 / 涙 amazon
「迷惑」という字が刻み込まれているような皺を鼻の頭に寄せる
佐藤 愛子 / 窓は茜色 amazon
名僧の説話に聴き入る信者の表情
有吉 佐和子 / 華岡青洲の妻 amazon
重い荷物を背負った人のようだった眉つきが、雨去る雲のように少しずつ明るくなる
山本 周五郎 / 髪かざり amazon
彼女の笑顔が少しだけ乱れた。上品な静かな泉にビール瓶のふたを放り込んだみたいに静かな波紋が彼女の顔に広がり、そして収まった。収まった時、笑顔は以前のそれよりも幾分後退していた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
壁に書かれた字を読みあげるみたいに乾いた平板な声ではははと言った
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
大きな地震で窓枠が歪むような(顔の)歪み方
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
チェシャ猫みたいな幅の広い微笑
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
彼女の目は一瞬凍りついたように見えた。瞳がふっとその色を失い、静かな水面に木の葉が落ちた時のように表情が微かに揺れた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
力なく微笑んだ。木の葉の間からこぼれる夏の夕暮れの最後の光のような微笑みだった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
もったいぶった、ロイヤルストレートフラッシュを開けるような手つきがいかにも芝居がかっていた
鈴木 光司 / リング amazon
顔の表情が極端に乏しいところにあった。堅く閉じられた唇は、よほどの必要がなければ微笑みひとつ浮かべなかった。その両目は優秀な甲板監視員のように、怠りなく冷ややかだった。おかげで、彼女の顔が人々に鮮やかな印象を与えることはまずなかった。多くの場合人々の注意や関心を惹きつけるのは、静止した顔立ちの善し悪しよりは、むしろ表情の動き方の自然さや優雅さなのだ。 おおかたの人は青豆(人名)の顔立ちをうまく把握できなかった。いったん目を離すともう、彼女がどんな顔をしていたのか描写することができない。どちらかといえば個性的な顔であるはずなのに、細部の特徴がどうしてか頭に残らない。そういう意味では彼女は、巧妙に擬態する昆虫に似ていた。色やかたちを変えて背景の中に潜り込んでしまうこと、できるだけ目立たないこと、簡単に記憶されないこと、それこそがまさに青豆の求めていることだった。小さな子供の頃から彼女はそのようにして自分の身を護ってきたのだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
何かがあって顔をしかめると、青豆(人名)のそんなクールな顔立ちは、劇的なまでに一変した。顔の筋肉が思い思いの方向に力強くひきつり、造作の左右のいびつさが極端なまでに強調され、あちこちに深いしわが寄り、目が素早く奥にひっこみ、鼻と口が暴力的に歪み、顎がよじれ、唇がまくれあがって白い大きな歯がむき出しになった。そしてまるでとめていた紐が切れて仮面がはがれ落ちたみたいに、彼女はあっという間にまったくの別人になった。それを目にした相手は、そのすさまじい変容ぶりに肝を潰した。それは大いなる無名性から息を呑む深淵への、驚くべき跳躍だった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
普段は開けることのない抽斗(ひきだし)の奥からひっぱり出してきたような微笑みだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
笑うことはあまりないが、いったん笑うと顔中が笑みになる。しかしそうなっても、とくに楽しそうには見えない。不吉な予言を準備しながらほくそ笑んでいる、年期を経た魔法使いとしか見えない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
微笑みを浮かべるときのように口の両端を少し横に広げたが、実際には微笑みは浮かばなかった。その暗示のようなものがあっただけだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
公のアルバムに載せるために撮られた写真のように
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
苦い薬を目の前に出された小さな子供のような顔をした。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
彼女は大きく顔をしかめた。顔中の筋肉が極限近くまで引き伸ばされた。そして彼女の顔は別の人間の顔のようになった。これ以上はしかめられないというところまで顔をしかめ、それをいろんな角度にねじ曲げてから、青豆はようやく顔を元に戻した。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
女教師は満足そうに微笑んだ。小さな瞳の中で何かが陽光を受け、遠くの山肌に見える氷河のようにきらりと光った。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
自分がやっていたせいか、私は無理して笑っている人をすぐ見抜ける。大きな笑い声をたてながらも眉間に皺を寄せ、目を苦しげに細めていて、そして決まって歯茎を剥き出しそうになるくらいカッと大口を開けているのだ。顔のパーツごとに見たらちっとも笑っていないからすぐ分かる。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
顔中の筋肉が思い思いの方向に伸び、そこにある造作は見事なまでにほどけてばらばらになってしまう。世界中のあらゆる感情がそこに奔出する。美しいも醜いもない。それはある角度からは夜叉のように見え、ある角度からは道化のように見える。ある角度からはただの混沌にしか見えない。顔をしかめるのをやめると、水面の波紋が収まっていくように筋肉は徐々に緩み、もとの造作に戻る。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
目と目のあいだに二本の深い縦皺を寄せている。そんなに簡単に額面通りものごとを真に受けないぞという顔をしている。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
何もない所をじっと見つめている猫のように無表情。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
珍しい玩具を与えられた幼児のように、好奇心とやさしい笑みを浮かべている
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
口を縦長に開き、水面で餌を食べる金魚さながらの面持ち
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
彼女だと分かった瞬間、頭の中の電灯がぱりんと破裂し、思考が真っ暗になりかけたが、慌てて気持ちを引き締める。いうなれば、非常用電源で、無理やり平静を取り戻したようなものだ。
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
街を焼き尽くす業火に巻き込まれても顔色一つ変えないのではないか
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
彼女は目を細めて、縁側で眠る猫さながらの穏やかな表情になる。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
無邪気な、見ているこちらの胸に日が射すような、あどけない笑みを浮かべ
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
顔のなかをお祭りでも通ったみたいに、にやにや笑ってる。
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
表情は石膏像のように冷やかだった。
横山 美智子 / 朝「静かなる奔流 (1947年)」に収録 amazon
そら豆のような無表情な顔
阪田 寛夫 / 童謡でてこい amazon
急に陽の翳ったような表情になり、目をふせた。
司馬 遼太郎 / 国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 amazon
女がとろける様な笑いを目もとに湛えて
内田 百けん / 東京日記「東京日記 他六篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
裸のすがたをのぞかれたように顔がほてってくる
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
彼女の顔に青いメランコリヤが、湖の面を走る雲の影のように動いて行った。
池谷 信三郎 / 橋 amazon
素直によろこんでこそ可愛気があるのに、水のような表情で言った。
司馬 遼太郎 / 国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 amazon
表情というやつは、生活が刻んだ年輪のようなもの
安部 公房 / 他人の顔 amazon
顔をあげて微笑む。ほほが夕陽に輝き、それは、まるで一刻ずつ姿を変えてゆくまぶしい夕空のようにはかない笑顔だった。
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
落葉のような乾いた笑いをまき散らしながら
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
夕立がザアーとやって来て、霽(は)れあがったあとのような、すがすがしい気分
石坂 洋次郎 / 山のかなたに (1954年) amazon
雛子の顔には隠し絵のように幾つもの表情が重なっている。
椎名 桜子 / 家族輪舞曲(ロンド) amazon
酢をのんだような顔で
司馬 遼太郎 / 国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 amazon
固い頬の肉で蒟蒻(こんにゃく)のように笑った。
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
高利貸にでも飛び込まれた様に不安な顔付をして
夏目 漱石 / 吾輩は猫である amazon
大きな仕事を果した後のような、欲も得もない放心の表情
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
二つのおびえた顔が鼠のようにのぞいていた。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
青年の顔は悪い硝子を透してみるように歪んだ。
堀 辰雄 / ルウベンスの偽画 amazon
無理に押し出したような笑い
二葉亭 四迷 / 浮雲 amazon
人なつかしげな笑いが波紋のようにひろがって
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
陽がかげるようにあの人の顔からは優しい表情が一ペんに消えてしまいました。
石坂 洋次郎 / 若い人 上 amazon
あの人懐こく温かな笑顔に接している間、たしかに彼女は太陽の明るい陽ざしの下にいるような快さを感じた。
藤沢桓夫 / 君に告げん
角のトゲでもつかえたような顔
石坂 洋次郎 / 石中先生行状記 amazon
顔なども古い巾着のように皺が寄って膨らんでいるお婆さん
岩本 素白 / 生憎
渋を飲んだような顔をして
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
試合に勝った野球選手のような、とてつもない明るい笑顔
三島 由紀夫 / 美徳のよろめき amazon
歯を剥き出して狂犬病の犬の如く笑う
島田 雅彦 / 聖アカヒト伝「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
塩を噛んだような苦い顔
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
真っ黒の顔の中の赤い唇がにこにこ動いて、泥田の中にぱっと蓮(はちす)がはころびたような印象を与えた。
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
京子の顔には、犬のような恐怖と驚愕だけがあった。
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
囚われの縄を解かれたような
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
五月の朝そのもののような
三島 由紀夫 / 美徳のよろめき amazon
風を受けた花が揺いで匂うように、左衛子は急に笑顔をひらいた。
大仏 次郎 / 帰郷 amazon
泥の上に胡粉(ごふん)を塗ったように、露子の顔は無表情だった。
武田泰淳 / 風媒花 amazon
変化する空模様を眺めているようなつもりで、彼女の表情の変化を見まもっておりますと
中山義秀 / 清風颯々
にがりを飲んだような顔で
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
あいまいな表情を作った。雨が降り出すのか、にわかに晴れ渡るのか予測のつかない空を眺めている心持なのだ。
吉行 淳之介 / 闇のなかの祝祭 amazon
二つの感情が二匹の章魚(たこ)のように血管の中をあれまわる
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
ぱっと音立てて朝開く花の割れ咲くような笑顔だった。
横光 利一 / 微笑 amazon
明日から世界が消えてなくなりでもするような、悲痛な顔で駆けまわる。
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
夕立ちの前ぶれの空のように、今にも泣きだしそうな顔
阿木 燿子 / まぁーるく生きて amazon
放心の表情が御面のように誰の顔にもかぶさって
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
「支倉常長という男を知っていますか?」 「おお、ハセクラツネナガ」日比野が嬉しそうな声を上げた。地元のプロ野球選手を誇るような笑顔だ。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
笑うと目尻がゆるんで、日なたのこもれびみたいに周りが暖かく明るくなる
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
濡れ雑巾のような泣き笑いの顔
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
愕然とした泰山の表情が、みるみる雑巾を引き絞るように歪み始めた。
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
死地に赴く軍人のように表情を引き締め
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
苦い薬を飲み干した時のような顔
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
火を噴きそうな顔つき
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
めったに見せない極上の笑顔だ。美咲のこの笑顔に接するたびに、あたしは花を見る。ほころびかけた小さな花の蕾だ。美しくて、清々しい。胸の奥が熱くなる。こんなふうに、花のように微笑むことのできる人を、あたしは美咲より他には、まだ知らない。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
顔が露骨にゆがんだ。ものすごく嫌いな食べ物を無理やり口に押しこまれたような顔だ。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
あたしは美咲の笑顔に花を見る。花びらがはっきり分かれているものじゃなく、朝顔みたいに一枚に繫がっていて、ロート状になっている花。ふるっと揺れて、ねじった布が解けていくように、ゆっくり開花していく花だ。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
唐突に噴き出した。硬い口の線や顎の輪郭が崩れて、くっくっと小刻みに揺れる。美咲の笑顔は美しい。普段のむっつりとした表情の崩れるさまが美しいのだ。 硬い殻を割ったら中から思いがけなく美しい珠が出てきた。そんな感じ。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
時折道ですれちがうことはあったが、口をきいたことはない。まるで奥深いジャングルの小径を白象にまたがって進むような顔つきで彼女は歩いていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
売春という客商売で鍛えられた笑みは武道の型に近いものがある。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
ぼっちゃんが赤い子鬼のような顔をして
中島 京子「小さいおうち (文春文庫)」に収録 amazon
男は、そのあたりでようやく強張っていた顔を緩めた。背中に取り憑いていた、「逆上の神様」が剥がれたようだった。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
顔が歪むのが分かった。心地よい言葉ではなかった。腐った林檎に齧りついたような感触がする。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
四角い眼鏡をかけた医師は無表情でトカゲのようにも見えた
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
甘くとろけるような明かりが小さく灯ったようなハニカミ
山田太一 / 飛ぶ夢をしばらく見ない amazon
温和なにこにこ顔と、いんけんに邪悪な顔の二つがあり、時と場合で、手品師のように使いわける巧みさ
野上弥生子 / 秀吉と利休 amazon
暗い冬の夕方あたりの空気よりももっと冷たくなって光を底に凍らせてしまった陶器の感覚
阿部知二 / 冬の宿 amazon
子供のような笑顔も見せた。生きていると面白いことがある、という風に
永井龍男 / 永井龍男全集〈1〉(「あいびき」から) amazon
自分一人が、千年も万年も生きられるような不安のない顔
林芙美子 / 夜猿 amazon
世界の苦悩をひとりで背負っているみたいな顔付
高見順 / 故旧忘れ得べき amazon
繊細で病的な荒っぽさと子供らしさの不思議に混淆(こんこう)した獣の仔のような顔
大江健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
その笑顔をたとえるなら、冬の湖の空にちらりと太陽が光を落としたように思える
木山捷平 / 河骨 amazon
その不動な表情は、強いていえば「考える猫」に似ていた
大岡昇平 / 野火 amazon
大黒天のように、幸福な顔つきをした老人
岩田豊雄 / 岩田豊雄創作翻訳戯曲集(東は東) amazon
テレたような、だまってオナラした人がするような笑いをうかべた
安岡章太郎 / ガラスの靴 amazon
遠くでお祭りがはじまっているような、にこやかな顔
椎名麟三 / 自由の彼方で amazon
猫が片手をあげてふざけている時のような甘ったれた表情
堀田善衛 / 広場の孤独 amazon
人の心持ちを何でも下等に浅薄に解釈して一人見抜いたような得意の薄笑いを浮べ
長与善郎 / 青銅の基督 amazon
普段は晴れた日の澄んだ水面のように照り輝いている中宮の顔に恐れとも悲しみとも見える影が広がって
円地文子 / なまみこ物語 amazon
牡丹とか朴だとかいう大きな花が花弁を閉じたり開いたりするような表情
幸田文 / 流れる amazon
窓のブラインドを上げるように表情が明るくなる
宮部みゆき / 気分は自殺志願「我らが隣人の犯罪」に収録 amazon
乱酔に似た異様な激情の恍惚感がたえず花火のように閃いては消え、消えては閃いていた
阿部知二 / 冬の宿 amazon
その他の人物を表す比喩表現
その他の感情を表す比喩表現
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