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店・施設の比喩を使った文章の一覧(114件)
ブランコの軋り音(ね)は、たえず歯ぎしりのように
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
頭の上に、びっくりするほど巨大なガスタンクが青白い照明を浴びて、気球のように浮かんでいる
阿部 昭 / 阿部昭集〈第4巻〉父と子の夜 無縁の生活 ほか amazon
プールが午後の日射しに雲母をちりばめたように光っている
落合 恵子 / 夏草の女たち amazon
ラッシュ時の駅のホームのように学生がひしめくキャンパス
三田 誠広 / 僕って何 amazon
鮮やかな服を着て飛び回る少女のような明るさと新鮮さがあるホテル
高橋 三千綱 / 涙 amazon
人里離れた奥深い渓谷の底にしっかりへばりついた、執拗な貝殻のかたまりのような旅館
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
小石のようにゴタゴタ打ち並んだ客
菊池 寛 / ある恋の話 amazon
寒暖計の目盛りのように、乗客がホームにいくつかの列を作る
永井 龍男 / コチャバンバ行き amazon
潮が引くように賑やかさの終わろうとしている夜の公園
藤枝 静男 / 或る年の冬 或る年の夏 amazon
疲労した巨大な河馬のように横たわった大工場
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
光と音楽とざわめきの洪水を掻き分けて表へ出る
原田 宗典 / 十九、二十 amazon
ウィッチがたくさん棲んでいそうな中世の古城のようなホテル
原田 康子 / 挽歌 amazon
変電所の鉄塔群が蜃気楼のように見える
後藤 明生 / 挾み撃ち amazon
ボーイはにっこりして、賢い猫のようにそっと部屋を出て行った。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
秒単位で発着する長い列車は、よく訓練された我慢強い家畜のようにシステマティックに人々を吐き出し、そして吸い込み、ドアを閉めるのももどかしく次の駅へと向かう。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
松本行きの特急列車はプラットフォームを離れた。彼はベンチに座ったまま、その明かりが線路を遠ざかり、スピードを上げながら夏の夜の奥に消えていくのを最後まで見届けた。最終列車の姿が見えなくなってしまうと、あたりは急にがらんとした。街そのものが輝きを一段階落としたようにも見えた。芝居が終り、照明が落とされた後の舞台のようだ。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
暗い廊下の奥に羊の剥製やら、埃だらけの毛皮やら、黴臭い資料やら、茶色く変色した古い写真やらが積みかさねてある(略、)果たされざる想いが乾いた泥のように隅々にしっかりとこびりついているようなホテル
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
見るからにホテル・ビジネスのプロという雰囲気の男だった。@略@彼らは大体いつも笑みを浮かべているのだが、状況に応じて笑顔を二十五種類くらい使いわけられるのだ。丁寧な冷笑から、適度に抑制された満足の笑みまで。その笑顔のグラデーションには全部番号が振ってある。ナンバー1からナンバー25まで。そういうのを、彼らは状況に応じてゴルフ・クラブを選ぶみたいに使いわける。そういうタイプの男だった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
「スター・ウォーズ」の秘密基地みたいなあの馬鹿気たハイテク・ホテル
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
その音はすごく遠くから聞こえるようでもあり、近くのようでもあった。僕の知らないうちに地球がいくつもの行き来できない細かい絶望的な層に分かれていて、その近接した層のどこかからもれ聞こえてくるような感じの音だった。物哀しくて、手が届かなくて、そしてリアルだった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
ここでは人々があらゆる手段を使って人間の自我や感情や誇りや信念を圧殺しようとする。目に見える傷が残らないように心理的にこづきまわし、蟻の巣のような官僚的迷路を引きずり回し、人が抱く不安感を最大限に利用する。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
有刺鉄線に囲まれ湯気を上げ喘ぎ震えている変電所
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
規則正しく並んでいる机と椅子は、無名戦士の共同墓地を思わせる
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
見下ろす水面は、波と波紋が交錯し、ちょうど番組が全て終了した後のテレビそっくりに、雷を反射して光り輝いている
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
工場の外の壁には無数のパイプがまとわりつき、体内の筋肉を這い回る血管を思わせた。しかも、表面を覆う無数のイルミネーションは夜光虫に似て、グロテスクな景観も見ようによっては美しい。
鈴木 光司 / リング amazon
教室の中は、蜂の巣をつついたような騒音に満たされていた。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
ぬくもりをおびた人工の闇を、襟巻のようにしっかり掻き合わせていた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
旅館の中庭に、萩が絵のように咲き乱れていた。
田山 花袋 / 蒲団 amazon
野薔薇の花が星のように咲く古城の壁
永井荷風 / 歓楽 amazon
さすが床屋のねこだけあって、そのぴかぴかつやのいいこと、香水でもふりかけたよう
松谷 みよ子 / 黒ねこ四代「黒ねこ四代・火星のりんご ほか (松谷みよ子全集)」に収録 amazon
鮪(まぐろ)は計画を貯えた砲弾のように落ちつき払って並んでいた。
横光 利一 / 花園の思想 amazon
病舎では一疋の蠅は一挺のピストルに等しく恐怖すべき敵であった。
横光 利一 / 花園の思想 amazon
(フランス料理のメニュー表を見る)あゆみは腕きき弁護士が重要な契約書を読むときのような鋭い目つきで、メニューに書かれている内容を隅々まで二回ずつ読んだ何か大事なことを見落としていないか、どこかに隠された巧妙な抜け穴があるのではないか。そこに書かれている様々な条件や条項を頭の中で検討し、それのもたらす結果について熟考した。利益と損失を細かくはかりにかけた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
本館のロビーは広々として天井が高く、ほの暗く、巨大で上品な洞窟を思わせた。ソファに腰をおろして何ごとかを語り合う人々の声は、臓腑を抜かれた生き物のため息のようにうつろに響いた。カーペットは厚く柔らかく、極北の島の太古の苔を思わせた。それは人々の足音を、蓄積された時間の中に吸収していった。ロビーを行き来する男女は、何かしらの呪いで大昔からそこに縛りつけられ、与えられた役割をきりなく繰り返している一群の幽霊のように見えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
光景にはそれなりに幻想的なものがあった。そこは都市の生活を地下で支える冥界のような場所なのだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
煙突の林が夜の闇の中にそびえ、まるで蛇が長い舌を突き出すように赤く火を吐いていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
窓の外には防風の役目を果たす松林が広がっている。密に茂った松林はその療養所を、活気のある現実の世界と隔てる大きな仕切り壁のようにも見えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
水銀灯の光が(夜の)小さな児童公園の風景を青白く照らし出している。その風景は青豆に夜の水族館の無人の通路を連想させる。目に見えない架空の魚たちが樹木のあいだを音もなく泳いでいる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
無人の滑り台は氷河期に死滅した大型動物の骨格のように見える
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
世界の終わりを何度となく照らしてきたような水銀灯がひとつ
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
厳しい夜間の単独飛行を終えた飛行士のように、いかにも寡黙に滑り台を降りた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
いつのまにか雪が降り始めていた。滑走路のライトがあたる部分にだけ斜めに、白い雪が落ちていくのが見える。それだけ切り取られた、まるで芝居の書き割りのような雪景色だった。
林 真理子 / 最終便に間に合えば「最終便に間に合えば (文春文庫)」に収録 amazon
バリウム検査は、ローリングするボードの上に寝て、さまざまな角度からレントゲン写真を撮る。この、うねうねとグラインドする床部は、遊園地の機械仕掛けの装置のようでなかなか楽しい。@略@ラブホテルの回転ベッドによく似ている。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
番台ではしおれたじいさんが、つまらなそうに小型テレビを観ている。番台の横に置いてあるアサガオまで、じいさんの真似をしてしおれている。
さくら ももこ / もものかんづめ amazon
小さい湯舟の湯は、薬湯になっており、アオミドロやクンショウモなどが浮遊している、季節はずれのプールみたいな色なので、底が全く見えずに、中央からは何やらポコポコと奇怪な気泡が発生していた。
さくら ももこ / もものかんづめ amazon
この小さな劇場では毎日のように、お笑いライブが開催されてきた。劇場の歴史分の笑い声が、この薄汚れた壁には吸収されていて、お客さんが笑うと、壁も一緒になって笑うのだ。
又吉 直樹 / 火花 amazon
勢い良く通っていく。 川の堰が切れて濁流が流れていくような、騒々しさだった。激流が、目前を通過していく。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
生まれたばかりの亀の子供さながらに、海を目指して駆ける。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
黒く錆び果てた巨大な金無垢の碇のように沈んでいた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
夜桜を見る人で山の上は群がった蛾のように賑わった。
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
船のような大きな賽銭箱(さいせんばこ)
永井荷風 / 歓楽 amazon
地鳴りのように、ものうい、ジャズの音色が、そのキャバレーから響いていた。
林 芙美子 / めし amazon
玉の井停車場の跡が雑草に蔽われて、こなたから見ると城址(しろあと)のような趣をなしている。
永井 荷風 / ぼく東綺譚 amazon
黒い田を越して法隆寺の伽藍が灰屑のように淡く望まれた。
岡本 かの子 / 落城後の女「岡本かの子全集 (第3巻)」に収録 amazon
病院の窓々にはうるんだ灯がともり、港にはいる満艦飾の船のように見えた
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
納屋は南向きの一面の日なたに、万石や唐箕や殻臼(からうす)などこれから使う農具を、まるで臓物のように孕んでいるのであった。
和田伝 / 和田伝全集 第2巻 amazon
美容院の前を通ると、女たちが白い兜のようなドライヤーをかぶっている。
梅崎春生 / 幻化 amazon
白い角砂糖のような病院の建物
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
ブランコの軋り音は、たえず歯ぎしりのように、東屋へ昇ってきた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
金閣そのものも、時間の海をわたってきた美しい船のように思われた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
錐(きり)も立てられぬほどの賑わしさ
山田 美妙 / 武蔵野 amazon
行く手には監獄が壁のように立ち塞がっている。
平林 たい子 / 施療室にて「こういう女・施療室にて (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
夏というのに白々と雪をおいたかと思われるほど、結(ゆわ)えられる限りの場所に無数に残された古いおみくじの残骸
曽野 綾子 / 遠来の客たち amazon
注文が殺到し、金が洪水のようにはいって来る
宇野 千代 / 刺す amazon
巨大な鋼鉄製の軍艦のように武装した工場
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
ホテルは新式の建築で、道路に面した壁は、高い城壁のように窓のないものだった。
伊藤 整 / 氾濫 amazon
潮の満干のように、時々待合室の出入りが、激しくなる。
林 芙美子 / めし amazon
煎餅のような生木の薄いバラック旅館
林 芙美子 / 浮雲 amazon
半分扉をおろしたようながらんとした静けさである。
佐多 稲子 / くれない amazon
枝々に紙がいくつも白い蝶のやうに結びつけられてゐる
丸谷 才一 / 初旅「横しぐれ (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
町も破れるような繁昌(はんじょう)
宇野 千代 / おはん amazon
水に放たれた魚のように、息をしやすいように感じるのだ。
大岡 昇平 / 花影 amazon
白樺荘に移って来たと云うのは、驢馬(ろば)を豚に乗り替えたも同然
小沼 丹 / 白孔雀のいるホテル (1955年) amazon
幼稚園の子どもたちが、まるでメダカか、オタマジャクシみたいに見える
小出 正吾 / ジンタの音「小出正吾児童文学全集 (3)」に収録 amazon
夜更けの寄宿舎の中は朽廃したお寺のような感じだった。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
不器用な刈り方ではあったが、それでも頭のなかを風が吹き抜けてゆくような爽やかさである。
林 芙美子 / 夜猿「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
高柏寺の五重塔が森の上へ抜け出して針のようにとんがってる。
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
大地震からこちらへばったり火が熄(き)えたように寂れた。
森田草平 / 初恋 amazon
行き届きすぎた衛生管理が@略@街全体を病院のような感じに変えていた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
まるで大きな墓みたいだ。
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
この大工場は、それ自身鳴動し・唸り・泣き叫び・怒号している一つの暗い宗教のように思われた。
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
折り曲げたナイフのような姿勢でそっと(プールに)飛び込み
庄野 潤三 / プールサイド小景・静物 amazon
堂内は、気味の悪い海峡のように、幾つもの暗流が、渦巻き流れていて
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
牢から出てきたばかりの今日の高杉は、まるで鞘からぬけでた瞬間の名刀のようだ。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
映画館は、長い無限につづくトンネルのようだった。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
粒子の荒い霧にさえぎられて、道路をへだてた商店街の裏は、黒々とした森のように見えた。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
私の愛する着物が(質屋で)かくまで優待されているかと思って、ちょうど親たちが、養子にやった息子、嫁にやった娘がそれぞれ行く先で豊かに暮らしているのを見た時に覚えるにちがいない、それに似た満足を私は感じました。
宇野浩二 / 蔵の中 amazon
ラーメンに入っているナルトみたいなデザインのネオンで目まぐるしく色を変えながら光っている観覧車
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
ジェイズ・バーは久し振りに客で込みあっていた。@略@まるで夏の盛りがもう一度巡ってきたような夜だった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
診察室をのぞくことができた。先生も看護婦もいなかった。そこは放課後の理科室のように薄暗かった。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
泳げないわけですから、頼りなくうつろにゆらゆらと。@略@プールの底を死にかけた魚のように漂うか細い足
小川洋子 / 妊娠カレンダー
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