山の表現・描写・類語

明るい横日で山肌が紫色に輝く

山のおいしい空気

山頂に霧のような薄雲がゆるく流れる

山に、鳥の翼のように影を落とす雲の流れ

煙のような雲が山々の狭間を去来する

川の左に聳（そび）える荒削りされたような山

道も谷も見分けがつかないほど荒れた山

ナイフの刃のような岩稜

海に向かって開いた奥深い谷の真ん中をめがけて、牛がのさばりでたような格好をしている峰

影絵のように向こうの白い山はだに影が映る

山々の黒い影が闇よりもずっしりと重い

山が乳色の春霞の中に溶け込む

山の姿が額縁に収められたようにストンと極（きま）る

鋭い剣のような山々

両肩が見事な曲線を描いている霊峰

雨滴と見間違えるほどの大粒の霧が山を包む

山の姿が、淡墨で刷いたように霧につつまれる

雲の影が斜面の上に落ちると、その部分だけ獣の肌のように、くすんだ滑らかさに変わる

夕日を受けると少し冷たい鉱石のように鈍く光る山

陽を受けた山の際が白っぽく粉を撒いたように見える

稲穂の実り豊かに垂れている田の彼方に、濃藍色に聳（そび）える山々の線

周囲に山をめぐらした盆地そのものが、冷たい藍色の大気を湛えた水槽のよう

ひんやりとした山の静寂が冷え冷えと身肌に迫る

しっとりした湿気で山が匂う

波濤のように起伏した皺の多い山の麓

美しい斜線が遠い裾まで伸びている山の端

なだらかな山頂を持った山の光景

山のひだひだから煙のように白い靄がたちのぼり

無口な温情をもって見守ってくれる　「お山」

空は赤白く曇って、山の端だけが、剥げたように透明になっていた。

硯を立てたような山容である。

浅間山が眠れる獅子の静けさに居る。

灰色に曇った空のなかに象嵌したような雪の浅間山が見えて来た。

（山が）ドッシリ腰を下したといった感じでそびえている。

麗らかに昭る午（ひる）さがりの冬の日を真正面に浴びた愛宕（あたご）の山が金色に輝く大気の彼方にさながら藍霞のように遠く西の空に渡っている。

バケツを伏せたような峯が聳えている。

嶮岨（けんそ）な峰と峰とが襟を重ねたように重畳している。

夜が更けて来るにしたがって黒い山々の尾根が古い地球の骨のように見えて来た。

臥した牛の背のように悠揚として空に曳くながい稜線

赤い火の色が麓の方へ降りて行って、山の姿の半分位までが、明るく光り出した時分には、要の頂上は、瑪瑙（めのう）を磨き立てた様な色になっていた。

父の額らしい山襞

丘をひとつ越すと、夢のようなうつくしい山間がある。

櫛を並べたように稜線を透かした立ち木

山全体が夢見るような多彩な美しさでした。

上信越道に乗ってしばらくすると、連なる山々が見えた。秋晴れの空がこれでもかというほど青く高いせいで、山並みの輪郭がくっきりと浮かび上がり、目の前にずんずん迫ってくるようだった。

朝もやの中に、頂点の高いピラミッドを思わすシルエットが不気味に佇んでいる。

大きい鏃（やじり）に似た槍（やり）ヶ岳（たけ）の峯

民家の向こうにこんもりとした山の輪郭が重なり、そのさらに向こうに、青に霞む山の稜線がある。

山は見る間に迫ってきて、とうとう山だと認識できないぐらいに山肌が接近した。

揺れは最高潮に達した。ドーンと重く山が鳴り、鳥が姿を見せないままけたたましく囀った。斜面の木が激しく梢を揺らし、杉の花粉が豪雪地帯もかくやとばかりにいっせいに降り注ぐ。 　ふ、腐海！ 　俺は思わず、ナウシカを連想した。「午後の胞子を飛ばしている……」ってやつだ。こんな幻想的な光景に、まさか現実でお目にかかれるとは思ってなかった。 　音が消えた。黄金色に輝く小さな粒が、視界を舞って地面に降り積む。

山の生き物は、山のもの。山での出来事は、神さまの領域。お邪魔してるだけの人間は、よけいなことには首をつっこまない。

（植林した山）ひとつの山でも、日当たりや土の状態を見て、杉とヒノキの両方を植林することがある。土が瘦せていて日当たりが多少悪いほうが、杉にとってはいい。だからたいてい、八合目より下に植える。反対にヒノキは、山のうえのほうに植える。水はけと日当たりがいい場所を好み、杉よりは寒さや雪に強いからだ。

植林された山とはちがう、混沌とした秩序のもとに、多種多様な木がむせ返るほどの緑の空間を作っていた。

あやまって海に落ち込んだ悪魔が、肉付きのいい右の肩だけを波の上に現わしている

一連の山波が、地平から力強く伸び上がってだんだん高くなりながら

朝の山には朝の命が、昼の山には昼の命があった。夕方の山にはまたしめやかな夕方の山の命がある。山の姿は、その線と陰日向（かげひなた）とばかりでなく、色彩にかけても、日が西に回るとすばらしい魔術のような不思議を現わした。峠のある部分は鋼鉄のように寒くかたく、また他の部分は気化した色素のように透明で消えうせそうだ。夕方に近づくにつれて、やや煙り始めた空気の中に、声も立てずに粛然とそびえているその姿には、くんでもくんでも尽きない平明な神秘が宿っている。

幾度見てもあきる事のない山のたたずまい

山の緑は満足そうにたっぷりと六月の雨を吸い込んでいた。

（駅のプラットホームから見た山あいの町）方向を異にするふたつの山なみが町の眼前で合流し、マッチの炎を風からまもるためにあわせられた手のひらのように町をすっぽりと包んでいた。細長いプラットフォームはそびえ立つ巨大な波にまさにつっこんでいこうとする貧弱なボートだった。

山々の黒い影が、闇よりもずっしりと黒く街を見つめている。

目も届かないような遠くのほうに、大島（おおしま）が山の腰から下は夕靄（ゆうもや）にぼかされてなくなって、上のほうだけがへの字を描いてぼんやりと空に浮かんでいた。

青々とした美しい山肌がその遠目鏡で見ると、樹木がまばらで野猪の皮膚のようであった。

どこまでも撫（な）で肩（がた）の柔かい線

去年の落葉が堆肥（たいひ）のように腐っている山の尾根

峡谷（たにあい）の山村に、春が過ぎ夏が過ぎ、山そのものが色絵錦（いろえにしき）の陶器（すえもの）のような秋になった。

二つの溪の間へ楔子（くさび）のように立っている山

十二単衣（ひとえ）のような山褶（やまひだ）が交互に重なっていた。

向こう岸には闇よりも濃い樹の闇、山の闇がもくもくと空へ押しのぼっていた。そのなかで一本椋（むく）の樹の幹だけがほの白く闇のなかから浮かんで見える

夜が更けて来るにしたがって黒い山々の尾根が古い地球の骨のように見えて来た。

夜空を劃（くぎ）って爬虫（はちゅう）の背のような尾根が蜿蜒（えんえん）と匍（は）っている。

夕方になって陽がかなたへ傾くと、富士も丹沢山も一様の影絵を、茜（あかね）の空に写す

蜜柑山に照りかえった黄いろい陽を浴びて村道に出た。

灯のついたようなレモンの山

（雪をまとった山）くもの巣のように白をまとった山々がしんと存在していた。

（山が）象の 頭 に似ている

向うの山々が鋭い剣のような姿をみせ

夕靄 の中、山は 蒼あお 黒ぐろく、まるで女のふくらんだ胸のような形で拡がっている。