試食(コーナー)の表現・描写・類語

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試食(コーナー)の表現・描写・類語
たいていの人は、試食コーナーでぎごちなくなる。急に重厚になってしまう。  特におじさんは、試食を男女問題と同じように考えてしまうようだ。 「一度手をつけたら、それなりの責任をとらねばなるまい」  と考えてしまう。  だから態度が重厚になる。 「どうぞ」と試食の小皿を突き出されると、本心は食べてみたいのに急にムッとした態度をとり、 「オレをなめるのか」  とばかりに、険しい表情でおばさんを睨みつけるおじさんもいる。  試食は、食べてみておいしかったら購入するという正常な商取引である。  しかし見た目には、なにかこう、食べ物をタダで恵んでもらっているように見えないこともない。  おばさんのほうの態度にも、わずかではあるが、恵んでやっているという態度がほの見える。  そこのところが、おじさんのプライドをいたく傷つけるようだ。 「オレはそこまで落ちぶれてない」  という思いに駆られ、急に口惜しくなり、激しく手を振って居丈高になったりするのである。  楊子の先の、食べ物屑のようなものに、いちいち責任をとったり居丈高になったりする必要はないのだが、おじさんというものは事を重大に考えてしまうのである。
東海林 さだお「タコの丸かじり (文春文庫)」に収録 amazon
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