山道・峠道の表現・描写・類語

バスは突然ひやりとした杉林の中に入った。杉はまるで原生林のように高くそびえたら、日の光をさえぎり、うす暗い影で万物を覆っていた。開いた窓から入ってくる風が急に冷たくなり、その湿気は肌に痛いばかりだった。谷川に沿ってその杉林の中をずいぶん長い時間進み、世界中が永遠に杉林で埋め尽くされてしまったんじゃないかという気分になり始めたあたりでやっと林が終り、我々はまわりを山に囲まれた盆地のようなところに出た。

どうして我々のバスが峠の上でもう一台のバスが来るのを待っていたかといいう理由はすぐに明らかになった。山を少し下ったあたりから道幅が急に狭くなっていて二台の大型バスがすれちがうのはまったく不可能だったからだ。バスは何台かのライトバンや乗用車とすれちがったが、そのたびにどちらかがバックして、カーブのふくらみにぴったりと身を寄せなくてはならなかった。

馬の背のような峠を行く

山の裾を切り取るようにして、路が細い帯のように捲く

崖のように勾配が急な道

峠が突き挙げた拳固のように肩を張って構えている

峠の向こう側からやっと匍（は）い上がってきたように見える濃霧が、峠の上方一面にかぶさる

月夜の峠でのそよ風が、自由なはばたきへの誘いをひそめている

ペンションに到る山道はやけに細く、このまま行き止まりになってしまいそうなほど心細い

対向車が来てもすれ違うスペースはない

背の高い草の茎が両側から道の方にしな垂れかかり、狭い道をより先細りさせる

伸び放題の枝や枯れ葉が、道の両側から車の腹を撫で、耳ざわりな音を立てる

この辺は、ワラビ、ウド、アザミ、タケノコなど山菜の宝庫らしい。

尾根道ときたら、まるで痩馬（やせうま）の背をあるくようなもので、二人ならんでは歩けない。

この頂をちょうど巨大な擂鉢のふちをたどるように半周して

蛇が皿を巻いたような丘の小道をぐるぐると下りて行く。

まっ黒にしげった森のなかをひとすじの路が縫うようにうねって

中腹に帯のようにひろがった道

踏みならされた登山道

両側の視界を遮るブナ林が空気を濃密なものにしている。

山々のまっただなかを電車で走ると、森を走るのとほとんど変わらない光景になる。

枯れ葉が積もった地面はふかふかだ。水分と養分をたっぷり含んでいることが地下足袋ごしに伝わってくる。

絶壁のようにそそりたつ暗い原生林が道の両側を支配する

三十分ほど進んだところでアスファルトの舗装が突然消え失せ、道幅も半分になった。両側の暗い原生林が巨大な波のように車に向ってどっと押し寄せてきた。空気の温度が何度か下がった。

車が円錐形（の山）の上に近づくにつれて右手のスロープは険しい岩山へと姿を変え、やがて垂直な岩の壁に変った。そして我々はのっぺりとした巨大な壁に刻まれた狭いはりだしに辛うじてしがみついているような格好になった。

峠道の冷たいアスファルトを、車のライトだけが青白く照らしていた。カーブを曲がるたびにライトがガードレール先の藪を照らし、複雑な模様をした樹肌がくっきりと見てとれた。

（夜の峠に止まった車）真っ暗な闇の中、赤いテールランプが、まるで巨大な森の赤い眼光のようだった。 　祐一はハンドルを握ったまま、じっと森の赤い眼を見つめていた。峠だけが呼吸しているようだった。

北山の峰々にすっぽり抱きこまれたかのような山道

山桜がほころびかけた道