幼児のころの記憶のように、そこだけ鮮明だった。

電話番号を空で言える

記憶がギッシリと頭の中に詰まっている

記憶はうらぶれた細胞みたいにどんどん遠ざかっていく

面影が、塩を焼く煙のようにゆらゆらと消えずに立つ

瞼に描いた。

泡のように浮かび出てくる昔の思い出

「思い出っていうやつは、どんな時も哀れなもんだ。時間がたてばたつほど、美化されるから、余計、始末に負えない。たとえ、キスしながらニンニクくさいゲップをしてくるようなやつだったとしても、そいつは思い出の中では、屁もこかない王子様になるのさ」

ひとつの年号が歴史的事実を思い起こさせるよう（思い出す）

視界を失った。 　疲れてる。そう思った時、ふっと暗い場所に心が引きずり込まれた。 　納屋の中だった。小さな体の自分が見えた。震えながら一人、膝を抱えていた。