なんて傷つきやすい襞だろう みんな何をしているんだろう この孤独の海を どうやって泳いでいるんだろう 遊びすぎて炒めすぎて日々の油が焦げついてきた 倦怠は焦げついた油 慣れれば慣れるほど歪む 川の中で魚がいくら身をよじっても 川の流れる方向までは変えることはできない 本当はもう、どうでもいい。本当にもう、どうでもいい。 心のふちが乾いていく。ふちの薄い皮はめくれあがってきて、まんなかのジェル状のたまりだけが、まだなんとか透明な水色を保ってかさぶたとくっついているけれど、もう少ししたら真ん中の部分もすっかり乾いて、たまりがあったことさえ忘れてしまうのかもしれない。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 ページ位置:76% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
倦怠期
孤独・一人ぼっち
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......隅々まで明かりの行き届いた店内を思い浮かべていた。店員は立ちつくし、あくびしながらも起きている。昼と変わらない平和な世界にいる店員だけが、夜の私の仲間だった。 なんて傷つきやすい襞だろう みんな何をしているんだろう この孤独の海を どうやって泳いでいるんだろう 遊びすぎて炒めすぎて日々の油が焦げついてきた 倦怠は焦げついた油 慣れれば慣れるほど歪む 川の中で魚がいくら身をよじっても 川の流れる方向までは変えることはできない 本当はもう、どうでもいい。本当にもう、どうでもいい。 心のふちが乾いていく。ふちの薄い皮はめくれあがってきて、まんなかのジェル状のたまりだけが、まだなんとか透明な水色を保ってかさぶたとくっついているけれど、もう少ししたら真ん中の部分もすっかり乾いて、たまりがあったことさえ忘れてしまうのかもしれない。 一人暮らしのころの、夜の寄せ集めの記憶が、急に気温の下がる夜明け前の肌寒さと共に身体に染みこんでいる。どの夜もいつも本当に似ていた。布団に入っても眠れず、ゆっ......
単語の意味
倦怠(けんたい)
倦怠・・・1.同じ物事が長く、もしくは何度も続いて、いやになる。飽きて嫌気が差すこと。
2.体や心がだるいこと。「倦怠感」
2.体や心がだるいこと。「倦怠感」
ここに意味を表示
倦怠期の表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
サトウとの生活は錆付いた沼のようにひっそりと淀んでいた。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
孤独・一人ぼっちの表現・描写・類語(寂しい・喪失感のカテゴリ)の一覧 ランダム5
死にかけている老いぼれ犬の眼のような、絶望的な孤独感
安部 公房 / 他人の顔 amazon
身を噛むような孤独
梶井基次郎 / 闇の絵巻
このカテゴリを全部見る
寂しさを心で感じるの表現・描写・類語(寂しい・喪失感のカテゴリ)の一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
恋愛の比喩表現の例文 一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
寂しい・喪失感の比喩表現の例文 一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
「寂しい・喪失感」カテゴリからランダム5
邪慳(じゃけん)な風を浴びたような淋しい孤独の川に流される
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
泥沼に浮いた船のように、何と淋しい私達の長屋
林芙美子 / 新版 放浪記
「恋愛」カテゴリからランダム5
わたしはあの人のそばにいて、その身体のどこかにずっと手を触れていたいと望んでいる。それはただの「憧れ」とはちょっと違うものだ。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
吾々二人は妻戸一枚を忍んで開けるほどの智慧 も出なかった。それほどに無邪気な可憐な恋でありながら
伊藤左千夫 / 野菊の墓
彼女はここ最近、「男はいねえか」「男はいねえか」とナマハゲのように喚(わめ)いている
七尾与史 / 死亡フラグが立ちました! amazon
同じカテゴリの表現一覧
寂しい・喪失感 の表現の一覧
恋愛 の表現の一覧
感情表現 大カテゴリ