TOP > 人物表現 > 性格・態度 > 生きづらい・世間に馴染めない
TOP > 感情表現 > 気分が晴れない・落ち込む
陣治は信じられないほど不器用でだらしがない。一種の病気だ。便器を汚さずに小便もできない。洗面所に取り付けたタオルかけは斜めになってネジ山の溝が全部つぶれている。十和子でもできる簡単な組み立て椅子が、何時間かかっても組み上がらない。持って出た傘の半分以上は置き忘れてくるし、たとえ大切なことをメモしたとしても、たいていはそのメモを失くす。挙句には自分の 唾 を飲み込むのさえしくじって、しょっちゅう苦しげに噎せている。 便器や、タオルかけや、椅子や、傘や、メモや、唾や、ともかく物という物と陣治との間には不可解な断絶がある。物たちは陣治を嫌っている。だから陣治が触れるとなんでも汚れる、なんでも壊れる、なんでも失くなる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:10% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
生きづらい・世間に馴染めない
怠ける・だらける・努力しない
不器用
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......さすがに怒る気にもなれない。十和子は生理的な快不快に極端に弱い。十和子が揉まれながら単純な気持になるにつれて、揉んでいる陣治も楽々と呼吸しはじめるのがわかる。 陣治は信じられないほど不器用でだらしがない。一種の病気だ。便器を汚さずに小便もできない。洗面所に取り付けたタオルかけは斜めになってネジ山の溝が全部つぶれている。十和子でもできる簡単な組み立て椅子が、何時間かかっても組み上がらない。持って出た傘の半分以上は置き忘れてくるし、たとえ大切なことをメモしたとしても、たいていはそのメモを失くす。挙句には自分の唾を飲み込むのさえしくじって、しょっちゅう苦しげに噎せている。 便器や、タオルかけや、椅子や、傘や、メモや、唾や、ともかく物という物と陣治との間には不可解な断絶がある。物たちは陣治を嫌っている。だから陣治が触れるとなんでも汚れる、なんでも壊れる、なんでも失くなる。 不思議なのは、そんな陣治がこれほど巧みに人の身体を揉むことだ。ネジ釘一本まともにとめられない手が、疲れた筋肉の奥に潜む凝りを、こうも自然に易々と探り当てるのは......
ここに意味を表示
生きづらい・世間に馴染めないの表現・描写・類語(性格・態度のカテゴリ)の一覧 ランダム5
現実についていけない不器用な男
小林 信彦 / 世界でいちばん熱い島 amazon
このカテゴリを全部見る
怠ける・だらける・努力しないの表現・描写・類語(気分が晴れない・落ち込むのカテゴリ)の一覧 ランダム5
教室のイスにとろけた飴みたいにだらしない格好で、座っていた。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
スターティング・ゲートに入るのを嫌がる馬のように、なかなか仕事にかからない
高橋 治 / 女たち amazon
このカテゴリを全部見る
不器用の表現・描写・類語(才能・技量のカテゴリ)の一覧 ランダム5
サランラップだってうまく切れない
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon
明治の男だから愛情の表現は下手だった
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「性格・態度」カテゴリからランダム5
幼稚園のこどもにするような労 り方
岡本かの子 / 母子叙情
「気分が晴れない・落ち込む」カテゴリからランダム5
もう、これが私の人生の終りなのかもしれない。私は死にたいと思う。もう、こんな風な生きかたがめんどうくさいのだ。独りでいるには淋しいし、二人になればもっと辛いのだと思うと、世の中が妙にはかなくなって来る。
林芙美子 / 新版 放浪記
眼球が陰気な光を放つ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
「才能・技量」カテゴリからランダム5
彼奴のアタマは聖徳太子と同様二重三重に働く
夢野久作 / ドグラ・マグラ
身体全体が一度に機能を失ったようにがたがたになる
新田 次郎 / 芙蓉の人 amazon
同じカテゴリの表現一覧
性格・態度 の表現の一覧
気分が晴れない・落ち込む の表現の一覧
気分が晴れない・落ち込むのレベル
気分が晴れない・落ち込むの感覚、精神的な反応
気分が晴れない・落ち込むの表情、リアクション
その他の気分が晴れない・落ち込むの表現
次の文字を含む「気分が晴れない・落ち込む」の表現を検索 |
鬱 暗 胸 心 涙 泣 |
才能・技量 の表現の一覧
人物表現 大カテゴリ