上品にこんがり揚がったコロッケはおいしい

コロッケはビールが相手ではダメだが、ゴハンということになると生彩を放ってくる。

店先でじゅじゅっとその場で揚げてくれる手作りコロッケのお店。「お客さんと揚げながらのおしゃべりは楽しいです」と、その店のおばあちゃんは言う。ほかほかを、紙にくるんでくれて、はふはふと食べながら帰る。

アツアツで食べるとそらもうたまらない

ちょっと手間をかけたコロッケ

私はだいたい夜おそくまで仕事をしているので、夕食をすませていても、ねる前にちょっと何かたべたい時が多い。そんな時は、あまり胃にもたれないものがよいので、スープ類をよくつくる。

フランスではラタトゥイユという野菜のごった煮がよく食卓にのる。

フォークに押し出されて肉汁がじゅわ～っとあふれ出す

ぐつぐつぶつぶつ、テーブルの上にのってさえ、グラタン皿の中のクネルは、少し踊るように上下にゆれていた。

（コロッケはフライの中で）一番地味な存在である。風貌、性格、容姿、いずれにも派手さはなく、万事ひかえめ、ひっそりしている。 　その地味さかげん、陰影のある面ざし、生活感のあるたたずまい、いずれをとってもゴハンの正妻という感じがする。それもただの正妻ではなく、〝糟糠の妻〟なのである。 　ゴハンと長く連れ添い、互いの裏も表も知りつくした仲といえる。 　ゴハンとコロッケ、これほど貧しく、これほど哀切で、これほど清々しい取り合わせが他にあるだろうか。