目的地に向けてアクセルを一定に保ち続ける

速いスピードで走り続ける車は、とうに町を出て、山間の地形に沿って曲がりくねる国道をどんどん進んでいく。奈々絵の視界にはフロントガラス越しに暗い、先は何も見えない闇が次から次へと現れ、そこを切り裂くように街灯の光が一定の間隔で現れては過ぎていき、自動車のライトはわずか先の道とその路面とを照らし続けた。

車の列が光の河になって夜を流れる

アクセルを床まで踏み込まれたエンジンは回転速度を上げる

軽快なハンドル捌きで車を新宿方面へと向けて

（汽車）ごっとん、ごっとん、と、まさぐりながら歩いているような機械ののろさ

クラクションがかすれて錆びついたような音を出す

ガラスに張られたスモークフィルムのせいで車内は見えない

美しい東洋の満月のさしこむ硝子張りの水族館のような箱（自動車）の中でいつの間にか眠ってしまった。

田畑の上を、電信柱や人や森が、スイ、スイ、来ては飛び去る。