空には雲ひとつない。それでいて全体がぼんやりとした春特有の不透明なヴェールに被われていた。その捉えどころのないヴェールの上から、空の青が少しずつ滲み込もうとしていた。日の光は細かな埃のように音も無く大気の中を降り、そして誰に気取られることもなく地表に積った。
村上春樹 / 1973年のピンボール ページ位置:6% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
春の空
春の日差し・光
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......っとマシだ。 煙草を吸ってしまうと僕は体を伸ばして空を眺めた。空を眺めるのは久し振りだった。というより何かをゆっくり眺めるという行為自体が実に久し振りだった。 空には雲ひとつない。それでいて全体がぼんやりとした春特有の不透明なヴェールに被われていた。その捉えどころのないヴェールの上から、空の青が少しずつ滲み込もうとしていた。日の光は細かな埃のように音も無く大気の中を降り、そして誰に気取られることもなく地表に積った。 生温かい風が光を揺らせる。まるで木々の間を群れとなって移ろう鳥のように、空気がゆっくりと流れる。風は線路に沿ったなだらかな緑の斜面を滑り、軌道を越え、木々の葉......
単語の意味
ベール
被・被衣(かずき・かつぎ)
被・被衣・・・武家時代、身分のある婦人が外出する際に頭からかぶった衣服。
ここに意味を表示
春の空の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
春の日差し・光の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
「春」カテゴリからランダム5
桜吹雪が、夥しい数の蝶の乱舞に思えてくる
飯田栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
同じカテゴリの表現一覧
春 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ