女の汗ばんだ、なまぬるい体温からは容易に離れられなくなった。彼は微温に満ちた女の部屋で堕ちてゆくような陶酔に浸った。
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 ページ位置:75% 作品を確認(amazon)
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セックス
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前後の文章を含んだ引用
......奮が彼女の感性をよびさましたといってよかった。 いちどそういうことを知った雅子は欲望の強い女になっていた。桑木もそれにひきずられた。自分でも激しくなっていった。女の汗ばんだ、なまぬるい体温からは容易に離れられなくなった。彼は微温に満ちた女の部屋で堕ちてゆくような陶酔に浸った。 が、そうした間も彼は絶えず時計の針を気にした。徹底した虚無にはなりきれなかった。全部が孝子に知られている今、彼の行先が雅子のもとだと孝子に分っているいま、ここ......
単語の意味
陶酔(とうすい)
陶酔・・・気持ちよく酔うこと。心を奪われてうっとりと気持ちのいいこと。
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恋に落ちるの表現・描写・類語(好きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
彼女の、もうあまり燃えやすい部分は残っていなかったはずの心の中で、唐突に燃え立ち始め、勢いを増してゆく火だった。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
わたしはやはりこの人に恋をしているのだ《…略…》そしてこの恋はわたしをどこかに運び去ろうとしている。しかしその強い流れから身を引くことはもはやできそうにない。わたしには選択肢というものがひと切れも与えられていないからだ。わたしが運ばれていくところは、これまで一度も目にしたこともないような特別な世界であるかもしれない。それはあるいは危険な場所かもしれない。そこに潜んでいるものたちがわたしを深く、致命的に傷つけることになるかもしれない。わたしは今手にしているすべてのものをなくしてしまうかもしれない。でもわたしにはもうあと戻りすることはできない。目の前にある流れのままに身をまかせるしかない。たとえわたしという人間がそこで炎に焼き尽くされ、失われてしまうとしても。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
彼女の顔に面と向ったとき、日没前の風景の中で、くっきり浮かび出た山頂の線や地平線のきらめきが、一瞬光度をたかめ静けさにみちた空気の中に消えんとする最後の異常に強い光を放つときのような、美のエネルギーが彼女の顔から彼の方をめがけて、放出されるのを感ずるのであった。
野間 宏 / 顔の中の赤い月「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
彼女は平原の竜巻のような激しい恋に落ちたのだ。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
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セックスの表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
それからまた二人はしゃべらなくなる。あらゆる種類の体液で互いを汚し合いながら、離脱のための激しいダンスを踊る。さっきよりもっと強い刺激を必要としている水島の、あらゆる望みをかなえようと夢中になる。十和子なしでは生きられないと、水島に骨の髄までそう感じさせるためには、どんなことをすればいいのか? 二つの肺から吐き出される湿った息で、部屋全体が白く霞んでいく。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
快楽にのけぞった顎の可憐さ
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
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恋愛・恋する・恋心の表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
嵐を好きになってから私は、恋というものを桜や花火のようだと思わなくなった。 たとえるならそれは、海の底だ。 白い砂地の潮の流れに揺られて、すわったまま私は澄んだ水に透けるはるかな空の青に見とれている。そこではなにもかもが、悲しいくらい、等しい。 目を閉じて走っても、全く違う所を目指したつもりでも、気持ちはいつの間にかくり返しそこへたどり着く。そこはいつもとても静かで、いつも彼の面影に満ちているので、私は目を覚ますことなく、ずっと、そこでそのまま眠っていたくなる。
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
夏目漱石 / 吾輩は猫である
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「恋愛」カテゴリからランダム5
サユリは彼の顔の前で足を開いた。彼は、そこに顔を埋め、そのものわかりのよい生き物に、何度も何度も口づけた。たくさんのキスが隙間なく重なり合い、サユリは満足そうに溜息をついた。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
「好き」カテゴリからランダム5
僕の子供を産んでほしい、必ず産んでくれるね、懇願され抱きしめられると、それだけで十和子は、下腹に抱え込んだ臓器に暗い血潮が充ちてくるような、すでに何かがそこで育ちはじめているような熱感を覚えた。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
やさしさが膜を張ったような瞳
朝井 リョウ / ひーちゃんは線香花火「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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