埋め立てでほとんどの海岸線を奪われたあと、辛うじて残った小さな漁港には、小型の漁船が数艘停泊している。波止めで囲まれた湾内はおだやかで、漁船を繋ぐロープの軋む音だけが、ときどき思い出したように辺りに響く。
吉田修一「悪人」に収録 ページ位置:24% 作品を確認(amazon)
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漁港・波止場
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前後の文章を含んだ引用
......岡を順番に降ろすと、憲夫は祐一の実家へと車を走らせた。 国道から狭い路地に入り、軒先の表札がサイドミラーに触れてしまうような道が、くねくねと漁港のほうへ伸びる。埋め立てでほとんどの海岸線を奪われたあと、辛うじて残った小さな漁港には、小型の漁船が数艘停泊している。波止めで囲まれた湾内はおだやかで、漁船を繋ぐロープの軋む音だけが、ときどき思い出したように辺りに響く。 漁港の周囲にはいくつかシャッターを下ろした倉庫がある。一見、漁業関係の倉庫に見えるが、中にはペーロンと呼ばれる競技用ボートが収納されている。 この地域はペーロ......
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漁港・波止場の表現・描写・類語(店・施設のカテゴリ)の一覧 ランダム5
桟橋と船に渡した渡し子
林芙美子 / 新版 放浪記
港では船がはいって来たのか、自動車がしっきりなしに店の前を走って行く。
林芙美子 / 新版 放浪記
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日の射し込んでいる郵便局は絶えず扉が鳴り、人びとは朝の新鮮な空気を撒 き散らしていた。
梶井基次郎 / 冬の日
(地下街)駅舎内の連絡通路に入り、最初に目についた階段から地下街に下りる。両側にテナントショップの並んだ路は先が見えないほど長く、途中で複雑に分岐している。何種類もの音楽と、電子音と、無数の足音と、どこかで動いている巨大な空調機器のゴーっという音と、もっと深いところからくる地下鉄の地鳴りとが、入り混じって反響し合う通路を進んでいく。ところどころに地上への階段の開口部があって、そこからは剥きだしのクラクションやエンジン音が、前世の記憶みたいに流れ込んでくる。しゃべりながら歩いている者は誰もいない。膨大な音のなかに、そういえば人間の肉声だけが含まれていない。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
むかしと少しも変らぬ商売をしている店
池波 正太郎「むかしの味 (新潮文庫)」に収録 amazon
(小さな病院の)昔風の 磨りガラスの 嵌った窓口
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
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