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埋め立てでほとんどの海岸線を奪われたあと、辛うじて残った小さな漁港には、小型の漁船が数艘停泊している。波止めで囲まれた湾内はおだやかで、漁船を繋ぐロープの軋む音だけが、ときどき思い出したように辺りに響く。
吉田修一「悪人」に収録 ページ位置:24% 作品を確認(amazon)
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漁港・波止場
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......岡を順番に降ろすと、憲夫は祐一の実家へと車を走らせた。 国道から狭い路地に入り、軒先の表札がサイドミラーに触れてしまうような道が、くねくねと漁港のほうへ伸びる。埋め立てでほとんどの海岸線を奪われたあと、辛うじて残った小さな漁港には、小型の漁船が数艘停泊している。波止めで囲まれた湾内はおだやかで、漁船を繋ぐロープの軋む音だけが、ときどき思い出したように辺りに響く。 漁港の周囲にはいくつかシャッターを下ろした倉庫がある。一見、漁業関係の倉庫に見えるが、中にはペーロンと呼ばれる競技用ボートが収納されている。 この地域はペーロ......
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