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(アル中患者が、)シラフでいることはおれにとって異様な体験なのだ。すがるもの、杖とするものがない不安。おれは重度の近視なのでわかるのだが、この不安な感じは、極度の近視の人間がメガネを失くしてしまったときのあせりによく似ている。メガネを探さねばならないのに、メガネがないからうまく探せない。入り組んで出口のない不安だ。アルコールが抜けたときのこの心もとなさは、メガネを失くした不安を何十倍か強烈にした感じだ。おれはずっと酩酊がもたらす、膜を一枚かぶったような非現実の中で暮らしてきた。酔いがもたらす「鈍さ」が現実をやわらげていたのだ。それがいま、尖端恐怖症の人間に突きつけられたエンピツの先にも似た、裸で生の世界が鋭角的に迫ってくる。メガネを失くしたのとは逆で、くっきりと鮮明な現実が、アル中の濁った五感を威圧するのだ。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで 作品を確認(amazon)
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アルコール中毒
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単語の意味
心許ない(こころもとない)
異様(いよう)
近視(きんし)
心許ない・・・頼りにならなそうで不安。心配。
異様・・・様子が普通とは変わっているさま。他とあまりに違っていて、変に思われるさま。
近視・・・1.近くを見ること。
2.近くしか見えず、遠くの物体や風景がはっきり見えない目。また、その状態。近眼(きんがん)。 ⇔ 遠視(えんし)。
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(恋をしていた時の気持ちを思い出す)はっと気づくと、突如頭がクリアーになっていた。ずーっと目の前を 覆っていた霧が晴れたような感じだった。なにが起こったのかわからなかったけれど、ああ、昔は世の中がこんなふうに見えていたのか、と私は思った。  昔?  そう、彼に出会ったころ、私は人生のすべての味をかみしめるような気持ちでいつもいた。  デートの約束をした晴れた朝の切なさ。  2人でいられる短い時間の風の匂い、歩く速度すら速すぎて、流れていくようだった街並の角度。  ガラス、アスファルト、ポスト、ガードレール、自分の 爪。店のショーケース。  ビルの窓に光る 陽 の光。すべてを細胞に刻み込む勢い、何もかもに勝てる確信。  勝つために、忘れてしまわないために時の一粒一粒を 慈しみ、情報として体に取り込もうとする働き。  恋によってあふれたエネルギー、見開かれた 眼。  あのときそのままに美しかった。美しい。何もかもがよく見えて、はっきりしている。一つ一つのものが、香り立つようにその存在の輪郭を 際立たせる。  おなかのほうからわくわくした気持ちが 湧いてくるのが感じられた。目を閉じると目の前にマーブルのように 渦巻くエネルギーの流れが見えた。
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