ほぼ一直線だった獣道は、ここへ来て、斜面に「つ」の字を書く形で大きくまわりこんでいた。

カーブを曲がるたびに揺れ、遠心力がかかって身体があっちやこっちに投げ出される車に、酔ってしまった。

カーブにはたしかに不吉なところがあった。まず体が漠然とした不吉さを感じ取り、その漠然とした不吉さが頭のどこかを叩いて警告を発していた。川を渡っている時に急に温度の違う淀みに足をつっこんでしまったような感じだった。

自動車教習所のコースみたいにくねくねと曲った道

なだらかなカーブ

交通量の少ない、何の刺激もない道

峠が突き挙げた拳固のように肩を張って構えている

歩行者用信号が青になり、足を踏み出すと、それとほぼ同時に、他の歩行者もいっせいに歩きはじめた。交差点を埋め尽くす、ちょっとした陣取りの争いにも見えた。

建物の明るみから前へ逆に照り返されて威厳を帯びた銅像が、シルエットになって見える。銅像の検閲を受ける銃剣の参差（しんし）のように並木の梢（こずえ）が截（き）り込みこまかに、やはりシルエットになって見える。

軒先の表札がサイドミラーに触れてしまうような道