光線が斜に射す午後、その狭い並木、叢 の風景は、荒廃した園の趣と初夏の緑の活々した輝きとを相交え美しかった。
宮本百合子 / 伸子 ページ位置:94% 作品を確認(青空文庫)
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日差し・太陽光
木漏れ日
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前後の文章を含んだ引用
......て、テーブルを拵えた。廊下の外は庭、その奥は畑であった。障子についている小障子をあけると、庭と畑とを区切っている低い草堤と勢いよい梅の並木の一部分が眺められた。光線が斜に射す午後、その狭い並木、叢 の風景は、荒廃した園の趣と初夏の緑の活々した輝きとを相交え美しかった。 伸子の心持は、陰鬱で敏感で、しんががらんと寂しかった。先 、佃を恨んだり自分を鞭打ったりしてここにいた時分は、心がむらむらしていたから、周囲の自然など、そう深く......
単語の意味
光線(こうせん)
趣(おもむき)
荒廃(こうはい)
初夏(しょか・はつなつ)
草叢・叢(くさむら)
風景(ふうけい)
光線・・・光のすじ。光の線。差してくる光。
趣・・・しっとりと落ち着いて、心惹かれる特徴や雰囲気。そのものがもっている、自然とかもし出される(いい)雰囲気。ずいぶん昔のものなのに、手入れがされているさま。風情(ふぜい)。
荒廃・・・役に立たないほどボロボロな状態にあること。
初夏・・・ 夏の初め。陰暦4月の異名。孟夏(もうか)。首夏(しゅか)。
草叢・叢・・・草が群がり、生い茂った所。
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
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こずえの葉のあいだから、光のかけらが星のように光っていた。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
ここへは、しかし、日がまったく射して来ないのではなかった。梢の隙間を洩れて来る日光が、径のそこここや杉の幹へ、蝋燭 で照らしたような弱い日なたを作っていた。歩いてゆく私の頭の影や肩先の影がそんななかへ現われては消えた。
梶井基次郎 / 筧の話
風が吹くたび桜の花びらが舞い上がり、博士の横顔を照らす木漏れ日が揺れた。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
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陽射しをくぐるようにして池本邸に移る。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
木々のあわいが不規則な光と影に充たされる
大岡 昇平 / 野火 amazon
前夜の雨が大気の塵を洗い流し、透き通るような十一月の朝になった。
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
時間が止まってしまったように、陽の光はさっきから少しも衰えずにずっと空一面で弾けていた。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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