鋭利な刃は十五センチ近くある。柄のかたちも、握った手のなかにしっくりなじむ気がする。これを、背後からまっすぐに突き立てれば、陣治の心臓に届くだろうか。 　そのときのことを想像すると、ステンレスの冷たさを押し当てられたかのように背筋が粟立つ。しかし、心の芯は不思議と静まり返って、揺るがない決意が充ちてくるのを感じる。

挺身隊（ていしんたい）を一人で引受けたような決心の意気に燃えて

方針を決定し、二度と変更しない覚悟を決めた様子だった。

日本橋の真ん中で、裸で大の字になる覚悟がなけりゃ小説は書けない

それはたとえはたから見てただの旅行で、命をかけるほどのことじゃないとしても、母にとって、この事件は人生哲学の琴線に触れる何かなのだろう。

陣治を殺してしまおう。自然に気持ちが固まる。

わずかに顎をあげて微笑していたが、それには決意した人間がみせる妙な冷たさがあった。

そういう決意が顔に出てた

どうしても動かすことの出来ぬほど堅固な決心

演説口調できざな大見得を切ってやりたいくらいの決心を秘める