（蝋燭の火で）体の動きにあわせて壁の上の影が大きく揺れた。まるで黒い幽霊が頭上から僕に襲いかかろうとしているみたいに。

竈（へっつい）の影は斜めに揚板（あげいた）の上にかかる。

どこまで行っても空には雲ひとつなく、地上には終始飛行機の影が映っていた。正確に言えば我々は飛行機に乗っているのだから、その山野を移ろう飛行機の影の中には我々の影も含まれているはずだった。だとすれば、我々もまた地上に焼きつけられているのだ。

二人（ふたり）がその白い道を、肩（かた）をならべて行きますと、二人（ふたり）の影（かげ）は、ちょうど四方に窓（まど）のある室（へや）の中の、二本の柱（はしら）の影（かげ）のように、また二つの車輪（しゃりん）の輻（や）のように幾本（いくほん）も幾本（いくほん）も四方へ出るのでした。

黒いしかし透き通ったような影

薄日が軒先の物干し竿の影ごと、進藤の膝に射して、すぐ吸い取られるように消えた。

日は暮れ、雑踏は一様に鼠色になり、ただ影と影が重なりつつ動いているに等しい

時期はずれの蛍のように頼りない

等間隔の街灯

手を伸ばせば指先が黒く染まりそうなほど暗闇が立ちこめている