(喫茶店内)客席には喧しい話声は一筋もなく、室全体として静物の絵のしとやかさを保っていた。ときどき店の奥のスタンドで、玻璃盞 にソーダのフラッシュする音が、室内の春の静物図に揮発性を与えている。
岡本かの子 / 母子叙情 ページ位置:11% 作品を確認(青空文庫)
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室内(空間)が静か
店内の雰囲気
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前後の文章を含んだ引用
......ヴを止めたあとも人の薀気で程よく気温を室内に漂わしていた。季節よりやや早目の花が、同じく季節よりやや早目の流行服の男女と色彩を調え合って、ここもすでに春だった。客席には喧しい話声は一筋もなく、室全体として静物の絵のしとやかさを保っていた。ときどき店の奥のスタンドで、玻璃盞 にソーダのフラッシュする音が、室内の春の静物図に揮発性を与えている。 人を関 いつけないときは、幾日でも平気でうっちゃらかしとくが、いざ関う段になるとうるさいほど世話を焼き出す、画描き気質 の逸作は、この頃、かの女の憂鬱 が気になって......
単語の意味
揮発(きはつ)
揮発性(きはつせい)
喧しい・囂しい(かまびすしい)
静物(せいぶつ)
淑やか・婉やか(しとやか)
玻璃・頗梨・玻瓈(はり)
玻璃杯・玻璃盞(はりさかずき)
揮発・・・常温で液体が気体になること。
揮発性・・・常温で液体が気体になる性質。
喧しい・囂しい・・・やかましい。
静物・・・静止して動かないもの。絵を書く際のモデルとしての花や果物、器物など。また、それが描かれた絵。
淑やか・婉やか・・・性質や言動が落ち着いていて、好ましい感じを与えるさま。慎み深いさま。
玻璃・頗梨・玻瓈・・・1.仏教の七宝(しっぽう)のひとつで、水晶のこと。
2.ガラスの異称。
2.ガラスの異称。
玻璃杯・玻璃盞・・・コップ。グラス。玻璃(はり)はガラスのこと。
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室内(空間)が静かの表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
柱時計が止まったままなので、家の中は物音ひとつなかった。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
誰も喋らなくなると、室内は窮屈なくらいに静まり返った。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
ざわめきが一瞬氷の世界に閉ざされたように凍りついて静まり返る
高橋 三千綱 / 涙 amazon
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(パリのカフェ)部屋一ぱいの男客、女客の姿態は珈琲 の匂いと軽い酒の匂いに捩れ合って、多少醗酵しかけている。
岡本かの子 / 巴里のキャフェ
テーブル席は疎らに埋まっていて、奥の個室からは、扉が開く度に、何やら騒々しい声が漏れてきた。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
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(ラーメン店の)カウンターの向こう側では、まるで生まれたての命のように、様々な具材がほかほかと輝いている。
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon
流し台の隅で、野菜の皮やコーヒー豆の滓やパンの耳がぐったり重なり合っている。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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夜に入っても続く修復作業の鉄の音、工事の人の声が遠い祭のように聞えていた。
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon
走らせばひなびた鈴のような音を立てる杼(ひ)
宮尾 登美子 / 楊梅(やまもも)の熟れる頃 amazon
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