あの頃の私にもいろいろなことがあったんだなあ、と私は思った。十五年以上前のこととなると、思い出はひとつのトーンの中に沈んでいた。

（いく度と回想されることになる運命の人との最初の出会い）この出会いの長い夜は、特別なものとして、この後、何度となく回想されることとなったからだった。 　最後に名残惜しく交わした眼差しが、殊に「繊細で、感じやすい」記憶として残った。それは、絶え間なく過去の下流へと向かう時の早瀬のただ中で、静かに孤独な光を放っていた。彼方には、海のように広がる忘却！　その手前で、二人は未来に傷つく度に、繰り返し、この夜の闇に抱かれながら、見つめ合うことになる。

（嫌な思い出）彼にとって、小学校での日々は好んで思い出す人生のひとコマではない。

セピア色の思い出

感傷の気分で染めあげた嘘八百の美しい追憶

（旅の思い出話を）話している間じゅう水島の目は、幻を追うようにうっとり見開かれている。

掌から零（こぼ）れ出すほどの過去を一筋一筋と摘み上げては、歩いて来た道を憶（おも）い出す

信じていていいと言ったあのひとの言葉が胸に来る。

古傷

頭の中に過去を再現する