的皪（てきれき）として、午後の日を受けた近江（あふみ）の湖が光つてゐる。

あたりは夕日に近い真昼の陽で丹霞（たんか）の中に籠められたようである。

庇をくぐり、廊下を通って、ようようそこまで辿り着いた庭の陽光は、もはやものを照らし出す力もなくなり、血の気も失せてしまったかのように、ただ障子の紙の色を白々と際立たせているに過ぎない。

桃色真珠をばらまいたような暖かい光が広がる

冬も過ぎて、梅が咲き椿（つばき）が咲くようになった。太陽の生み出す慈愛の光を、地面は胸を張り広げて吸い込んでいる。

ぼんやりとした灰色に夜のブルーが混じり、注意して見なければそこに雲があることすらわからないほどだったが、それはあいかわらずじっと身をひそめた盲目の巨大な獣のように空にかぶさり、月や星の姿を背後に覆いかくしていた。 　まるで海底を歩いているみたいだな、と僕は思った。

西日が小箱の口のように、たった一方に開いた縁側からさしこんで来た。

朝の光に白い帆をかがやかした船

月はいよいよ明るさを増し、小屋の床に一筋の帯となって差し込んでいた。星もたくさん出ているようだった。

スコールは右手の西南に去って、市街の出岬の彼方の海に、まだいくらか暗沫（あんまつ）の影を残している。