地下鉄、国電、私鉄、市電、バス、扇の要のように、この大阪駅へ、群衆は、押し寄せては、また、四方へ流れ出てもいる。

活気を帯びた雑踏の音が津波のように寄せてくる

大勢がただ泥のようになって動いているのでどれがどうとも識別（みわけ）がつかない

人波の中に吸い込まれて判別がつかなくなる。

人に肩を衝（つ）かれ、またぱったり出会って同じ除（よ）け方をして立竦（たちすく）み合う逆コースを、だんだん煩わしく感じて来た。

（杉林は）風のせいなのか、左右に揺れていた。そのたびに葉が音を立てる。巨大な動物が足踏みをして、体毛を震わせるかのようだった。

我々の前には湖のような広い草原が開けていた。

堤の上を冷たい風が吹いて行く。

（夜の山）四方の山々は 蠑螈いもり の背のように黒かった。

（ハワイ）みんな特に美しいわけでもかっこいいわけでもなく、単なる薄汚れた人間たちが集って浜辺でごろごろしているだけだ。ちっともすてきではないはずだ。 　でもこの島の魔法はそんなこと全てにきらきらした粉をかけてくれる。みんなすばらしい人で、世界は美しく、人生はよいものだと思わせてくれる。その考えはまぼろしではなくって、もしかして泥の上に咲いた 蓮 のようなものなのかもしれない。