口の粘くなるような不快さを感じながら、厭なものを見たと思った。

どうにもならない重苦しい不快感

殺したいほど鬱陶しい

苦る

厭わしい

体は重たい泥のように弾力なく崩折（くずお）れてゆくのだった。

乾からびた茸のような疲労を覚える

（遊び疲れる）ぼろぼろになるまで遊んだ

疲労のはて、欲も得もなく眠りこけた。

グロッキー

膝（ひざ）から下は義足に触るより無感覚になり、ひょいとすると膝の関節が、蝶（ちょう）つがいが離れたように、不覚にヘナヘナと坐り込んでしまいそうになった。

噛みつくようにこう云った。

綿のように疲れはてた。

食って掛かる

ぎこちない沈黙がしばらくそこに続いた。

シャツの袖が噛み裂かれ、腕に深く刻まれた歯形から、濃い血が滲み出ている

熱病患者が冷たいものに触れた時のような不快な悪寒（おかん）

ザクロのようなあかぎれ

百パーセント健康な人なんて、いやしない。

時間にして十秒ほどのその鮮明な映像は、前触れもなしにやってくる。予兆もなければ、猶予もない。ノックの音もない。《…略…》無音の津波のように圧倒的に押し寄せてくる。気がついたとき、それはもう彼の目の前に立ちはだかり、手足はすっかり痺れている。時間の流れがいったん止まる。まわりの空気が希薄になり、うまく呼吸ができなくなる。まわりの人々や事物が、すべて自分とは無縁のものと化してしまう。その液体の壁は彼の全身を呑み込んでいく。世界が暗く閉ざされていく感覚があるものの、意識が薄れるわけではない。レールのポイントが切り替えられるだけだ。意識は部分的にはむしろ鋭敏になる。恐怖はない。しかし目を開けていることはできない。まぶたは固く閉じられる。まわりの物音も遠のいていく。そしてそのお馴染みの映像が何度も意識のスクリーンに映し出される。身体のいたるところから汗がふきだしてくる。シャツの脇の下が湿っていくのがわかる。全身が細かく震え始める。鼓動が速く、大きくなる。