(闇に消える人影を見て)そのとき私は『何処 』というもののない闇に微かな戦慄 を感じた。その闇のなかへ同じような絶望的な順序で消えてゆく私自身を想像し、言い知れぬ恐怖と情熱を覚えたのである。
梶井基次郎 / 蒼穹 ページ位置:88% 作品を確認(青空文庫)
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暗い・闇
立ち去る
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前後の文章を含んだ引用
......たのである。その人影は背に負った光をだんだん失いながら消えていった。網膜だけの感じになり、闇のなかの想像になり――ついにはその想像もふっつり断ち切れてしまった。そのとき私は『何処 』というもののない闇に微かな戦慄 を感じた。その闇のなかへ同じような絶望的な順序で消えてゆく私自身を想像し、言い知れぬ恐怖と情熱を覚えたのである。―― その記憶が私の心をかすめたとき、突然私は悟った。雲が湧き立っては消えてゆく空のなかにあったものは、見えない山のようなものでもなく、不思議な岬 のようなもので......
単語の意味
情熱(じょうねつ)
戦慄(せんりつ)
情熱・・・感情が熱を持っている心理状態。燃え上がるような激しい感情。ある目標や物事に向かって忍耐強くいちずに打ち込むさま。また、そういう気持ち。熱情(ねつじょう)。
戦慄・・・怖くて震えること。おののくこと。「戦」も「慄」も訓読みで「おのの(く)」と読める。
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暗い・闇の表現・描写・類語(光と影のカテゴリ)の一覧 ランダム5
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
川端康成 / 雪国 amazon
闇が躰(からだ)の輪郭すれすれまで、ひたひたと押し寄せてくる
落合 恵子 / 夏草の女たち amazon
完璧な闇が狡猾な水のように音もなく僕らを包んだ
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
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立ち去るの表現・描写・類語(動作・仕草・クセのカテゴリ)の一覧 ランダム5
そう言って、夜に消えていった。 ガードの向こうに弱い後ろ姿が消えていく。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
シンデレラのように十二時になると、私の傍らから身を滑らせて消えて行く
中村 真一郎 / 遠隔感応 amazon
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真っ暗で、一筋の灯りさえ漏れていない。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
光の加減で、男の顔はよく見えなかった。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
「動作・仕草・クセ」カテゴリからランダム5
眼尻に涙が溢 れて来る。何の思いもない、水みたいなものだけれど、涙が出て来るといやに孤独な気持ちになって来る。
林芙美子 / 新版 放浪記
口は嘴みたいに尖り、もうイカに向かって開いている。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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