（漠然とした不安）得体の知れない不安が襲いかかってきて、身動きが取れなくなった。

不安が頭を擡（もた）げて来て、

不安で胸が悪くなる

身体の中は熱を帯びてざわついている。

心が一本の糸のように痩せていく

ついぞ感じたことのない、何かに烈しくせきたてられているような 焦りと不安に包まれながら、 人混みの中を 蹣跚まんさん と流れて行った。

後から冷水のかかるのを待つ様な不安に襲われながら

小百合は別人のようにやつれていた。不安。悲しみ。恐れ。そうした押し隠すことのできない幾つもの感情が混ぜこぜになって、べったりと顔に張りついていた。

漠然とした不安な自覚が、皆を不機嫌にだまらせていた。

不安の前には妙に嘔気（はきけ）が来る。嘔くものもない妙な不安な状態。

心臓が震えるくらいに怖い

えり子さんの死を告げられて以来、ずっと私が彼に感じているこの心細さは“〝電話”〟に似ている。あれ以来の雄一はたとえ目の前にいても電話の向こうの世界にいるように感じられた。そしてそこは、私の今生きている場所よりもかなり青い、海の底のようなところだという気がした。

狐疑（こぎ）は待ちかまえていたように、君が満足の心を充分味わう暇もなく、足もとから押し寄せて来て君を不安にする。

（開けてはいけないと感じる不吉なガラスビンを前にして起こる恐怖と好奇心の葛藤）息を詰めたまま金属製のねじ蓋に手をかける。蓋は強く締まっている。このおかしな感じ、まるでガラス壜ではない何かをこじ開けて、口で言えないほど不吉なものを解き放とうとしているような感じはどこからくるのだろう？ 　フレテハイケナイ――カンガエテハイケナイ――。 　声がまた聞こえる。頭のなかではなく、天井のあたりから降ってくる気がする。キョトキョトと周囲を見回す。部屋の空気が重く脈打っている。ベッドも衣類も壁もどくんどくんと脈打っている。蓋にかけた手が震える。震えが背筋を伝い、正座したまま上半身が他愛なく揺れる。《…略…》頭のなかにも部屋のなかにも動悸が響き渡る。嵐のようなその音のほか何も聞こえなくなる。まるで自分自身の心臓の内部にいるみたいだ。視界全体が拍動する。どくんどくんと叫ぶ。イケナイ、イケナイ、イケナイ、イケナイと叫ぶ。頭が割れる！　壜から手を離し、両側から強く 頭蓋 を挟みつける。

悔恨の心に両足がすくむ

貧困の脅威は曇天のように信輔の心を圧しはじめた。

そら恐ろしい気持ちが稲妻のように走る

ぐらつく椅子に座っているように心許ない

心にぽっかり穴が開いたような頼りなさ

道に迷った犬のように戸惑う

眠るようにおとなしく気を失って、ひょろひょろとよろめくと見る間に、くずれるように胴の間にぶっ倒れてしまった。

寄附帖や檀徒名簿などが板敷きの上に散乱し、音もないこの静寂な寺の無気味さは却って幽鬼の息づかいが聞えるような恐ろしさであった。

日下は、一歩近づく。 　すると、 気圧されたように、理恵が身を引いた。

課長の声が聞こえた瞬間、事務所の空気はさっと青ざめる

「ふん」と言った数馬の眉間（みけん）には、深い皺（しわ）が刻まれた。