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一突きにおれの胸へ刺 した。何か腥 い塊 がおれの口へこみ上げて来る。が、苦しみは少しもない。ただ胸が冷たくなると、一層あたりがしんとしてしまった。ああ、何と云う静かさだろう。この山陰 の藪の空には、小鳥一羽囀 りに来ない。ただ杉や竹の杪 に、寂しい日影が漂 っている。日影が、――それも次第に薄れて来る。――もう杉や竹も見えない。おれはそこに倒れたまま、深い静かさに包まれている。
芥川龍之介 / 藪の中 ページ位置:96% 作品を確認(青空文庫)
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刃物で人を切る(刺す)
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前後の文章を含んだ引用
......る声だったではないか? (三度 、長き沈黙) おれはやっと杉の根から、疲れ果てた体を起した。おれの前には妻が落した、小刀 が一つ光っている。おれはそれを手にとると、一突きにおれの胸へ刺 した。何か腥 い塊 がおれの口へこみ上げて来る。が、苦しみは少しもない。ただ胸が冷たくなると、一層あたりがしんとしてしまった。ああ、何と云う静かさだろう。この山陰 の藪の空には、小鳥一羽囀 りに来ない。ただ杉や竹の杪 に、寂しい日影が漂 っている。日影が、――それも次第に薄れて来る。――もう杉や竹も見えない。おれはそこに倒れたまま、深い静かさに包まれている。 その時誰か忍び足に、おれの側へ来たものがある。おれはそちらを見ようとした。が、おれのまわりには、いつか薄闇 が立ちこめている。誰か、――その誰かは見えない手に......
単語の意味
胸(むね)
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銃剣の先が胸に入る。先端が肋骨のあいだへ喰いこんだ。力をこめた。数センチのめり込む。筋肉がショックで縮み、刃先が前へ進まない。強引に突き続ける。ここで断念するわけにはゆかない。ねじり込むように体重をかけて数ミリずつの感じで進めた。不意に敵の抵抗がゆるむ。銃剣が相手の体内に、チーズに突き立てた果物ナイフのように、奥深くめり込んでいった。
拓殖久慶 / ラオス内戦 amazon
くすんだ茶のセーターの、肩甲骨の膨らみの真ん中あたりを狙って刃を突きたて、肉の内部に消えた刃先をじっと見つめている。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
後ろから近づきながらナイフを取り出し、何も考えずに刺した。血濡れた刃を抜いてもう一度、夢でないことを確かめるためだけに何度も何度も……。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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