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(思い出の本をきっかけに失われた記憶がよみがえる)母は、前の夫と別れてそれが秋ごろで、飲んで泣いて純子さんを困らせて、その後純子さんがうちに 居候 するようになって……。  言葉にするとそういう感じの、でもそれはこんなふうにあらすじでおえるようなものでなく、もっとたくさんの、言葉ではなくてある種の情報の洪水だった。あるデーターを封じていたのに、何かの手違いでまとめて呼び出してしまったような塊が、まとめてどかんと入ってきた。  私は動揺した。なんでこんなきっかけでこんなことになってしまうのだろう?  それらはどんどん流れを作り、筋道にそってあっという間に並べかえられてひとつの物語を作ろうとしていた。その処理は勝手にどんどん行われ、私はただ見ているしかなかった。それが何を創るのか。  私、という物語、自分史、といわれているもののもっと高度で、もっと 完璧 なもの。完成されていて丸くて立体で、私の情の入る 隙間 もないほど厳密なもの。  大きな渦巻き、まわりじゅうの人々や、出来事を海みたいに取り込んで、満ちて引いて私独自の色に染め抜かれた世界に一つしかない、あるいは皆と共通の一つのシルエットを 創る流れのらせんを感じた。  アンドロメダみたいによく知っていて、きれいで遠い姿をしていた。  そして、本から目をあげると。  ありとあらゆるものが、歴史をたたえてそこに存在していた。  さっきまでとは、世界が違ってみえた。  私の記憶の欠けていた所が戻ってきたということなのだろうか。  私は声に出してそう言ってみたけれど、何よりもさっきまでそういうのが思いだせない、混乱していた部分を自分が持っていたというのがもう感覚としてわからなかった。  ただ、何一つ変わっていないように見える部屋のものが、突然ひとつひとつ別のデーターを表現しているように感じられた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 ページ位置:33% 作品を確認(amazon)
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失われた記憶がよみがえる
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前後の文章を含んだ引用
......百六十二センチくらいだったろうか。弟はちびすけで、ロンパースを着ていた。その次は半ズボンをはくようになって、幼稚園に行って、初めていじめられて泣いて帰ってきて、母は、前の夫と別れてそれが秋ごろで、飲んで泣いて純子さんを困らせて、その後純子さんがうちに居候するようになって……。 言葉にするとそういう感じの、でもそれはこんなふうにあらすじでおえるようなものでなく、もっとたくさんの、言葉ではなくてある種の情報の洪水だった。あるデーターを封じていたのに、何かの手違いでまとめて呼び出してしまったような塊が、まとめてどかんと入ってきた。 私は動揺した。なんでこんなきっかけでこんなことになってしまうのだろう? それらはどんどん流れを作り、筋道にそってあっという間に並べかえられてひとつの物語を作ろうとしていた。その処理は勝手にどんどん行われ、私はただ見ているしかなかった。それが何を創るのか。 私、という物語、自分史、といわれているもののもっと高度で、もっと完璧なもの。完成されていて丸くて立体で、私の情の入る隙間もないほど厳密なもの。 大きな渦巻き、まわりじゅうの人々や、出来事を海みたいに取り込んで、満ちて引いて私独自の色に染め抜かれた世界に一つしかない、あるいは皆と共通の一つのシルエットを創る流れのらせんを感じた。 アンドロメダみたいによく知っていて、きれいで遠い姿をしていた。 そして、本から目をあげると。 ありとあらゆるものが、歴史をたたえてそこに存在していた。 さっきまでとは、世界が違ってみえた。 私の記憶の欠けていた所が戻ってきたということなのだろうか。 私は声に出してそう言ってみたけれど、何よりもさっきまでそういうのが思いだせない、混乱していた部分を自分が持っていたというのがもう感覚としてわからなかった。 ただ、何一つ変わっていないように見える部屋のものが、突然ひとつひとつ別のデーターを表現しているように感じられた。 順番に、そしていっぺんに。 本棚は私が小学校にあがる時に、母が買ってくれた。父が死んだ夜、この角を見つめてただすわっていた。この傷は幹子が高校の時、窓辺に立と......
単語の意味
渦巻く(うずまく)
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵(すがた)
渦巻く・・・1.水や煙がグルグルと回って渦になる。ある感情が心の中に渦のようにグルグルと存在する。
2.気持ちや考えが次から次へと起こって、ごちゃごちゃになる。
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵・・・1.身体の形。からだつき。人のからだの格好。衣服をつけた外見のようす。
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
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