（素晴らしい演奏）細部が全体を活気づけ、また全体が細部に於いて生き生きと精彩を放っていた。通人ほど退屈するアランフェス協奏曲の第三楽章でさえ、きびきびとした音符の筋肉の 陰翳 まで見えそうな躍動感で、誰が弾いてもなかなか立派に聞こえないこの難物も、こんなに良い曲だったろうかと、これ見よがしに苦笑し、首を 傾げる批評家の姿さえあった。 　要するに、その説得力を前にしては、好き嫌いを超えて、もうケチのつけようがなかった。

痺れるほど素晴らしい

倫（りん）を絶（ぜっ）したでき栄（ばえ）

構想は花束のように見事

素晴らしすぎて有頂天になる

ときどき彼は、彼女がこの東京にいるのだということを、何かの拍子にふと思い出しどうしているだろうかなどと考えることがあった。がそれがまるで溝の中から浮かび上ってくる水泡のように、彼の意識に上ってきては、すぐさま、跡形もなく、消えて行ってしまうのであった。

絶体絶命の暴れ方をしだした。

遠い昔の記憶のように朧げにしかわからない

そのありさまが影絵のように 髣髴ほうふつ と私の心に浮かんだ。

忙しさにかまけて忘れる