臍（へそ）のところに朱い舌を出した蛇の文身（いれずみ）

腕のところに二本の白い線が入っていて、私はいつも「江戸時代の罪人の入れ墨のようだな」と思った。

（真っ赤な牡丹の入れ墨）すべすべした脇腹の肌に吸いついて咲く牡丹は毒々しい。

新聞の青インクが生かわきなので、帯封をするたびに、腕から手がいれずみのように青くなる。

さす針、ぬく針の度毎に深い吐息をついて、自分の心が刺されるように感じた。

額から黒い脂汗がコールタールのように流れる

鼻の辺りにそばかすのある田舎っぽい少女

彼の額には冷汗が吹き出し、体はぶるぶると震えた。

（舌にできた発疹）十和子を驚かせたのは、赤いグロテスクな発疹がいつの間にか増殖して舌の表面を覆っていることだ。びっしりと寄り集まった舌先を中心に、ずっと奥の付け根の方まで、裏側のグチャグチャしたひだの間まで、よく見ると粒々が飛び火している。これから病変がひろがっていきそうな部分は、 舌苔 が薄くなって地肌が透けている。これが自分の舌だとは信じられない。 　自分の舌が以前はどんな状態だったか思い出せない。でも、こんなに赤い、ひとつひとつがこんなに大きい粒々などなかった。こんなに不気味な、腐った魚の卵みたいな肉塊ではなかった。《…略…》病んだハラワタみたいなこの舌が、ある種の 烙印 のように思える。何か口では言えないほどいけないことをした女の烙印。

毛穴の一つ一つに小さなあせも