森の上部の線のあたりが暗く、それに比べて空が明るくなって月が後の森を出てその半月形の一部を森の上に現わすと、辺りの松や熊笹や穂のある雑草の上に、冷気の層が、音をたてて下りてくるかのように思われた。

輝く月光の行きわたった空

雲の奥に月光の気配がわずかにうかがえる

庭を月が照していた。八つ手や梧桐（きり）の広い葉の面が、濡れたように光った。反対の側の樹陰、枝の奥は異様に暗く、庭がいつになく迫る力を持って見えた。

草原が月に照されて傾き、道は草の影を 孕んで黒かった。

愁雲

線香の煙のような雲が、透きとおる底の上を静かにのしていったと思ったら、いつしか底の奥に流れ込んで、うすくもやをかけたようになった。

猫の目のような雲の切れ目

ひっそりと静まり返って、窓外の淡い月光に照らされた植込みはまるで永遠そのものに繋がっているかのようだ。

月が数々の葉末を剣のように光らす