（乱れたヒゲ）元来から行儀のよくない髯でみんな思い思いの姿勢をとって生（は）えている。いくら個人主義が流行（はや）る世の中だって、こう町々（まちまち）に我儘（わがまま）を尽くされては持主の迷惑はさこそと思いやられる、主人もここに鑑（かんが）みるところあって近頃は大（おおい）に訓練を与えて、出来る限り系統的に按排（あんばい）するように尽力している。その熱心の功果（こうか）は空（むな）しからずして昨今ようやく歩調が少しととのうようになって来た。今までは髯が生（は）えておったのであるが、この頃は髯を生やしているのだと自慢するくらいになった。

豊かな髪を整える。柔らかな髪がヘアブラシに絡みつく。

ふかえり（人名）はまっすぐな黒い髪に手をやり、少しのあいだ指ではさんで梳く（す）いていた。素敵な仕草だった。素敵な指だった。細い指の一本一本がそれぞれの意思と方針を持っているみたいに見えた。

赤味がかった髪を数えるように、ブラシですき上げて、上の方でたばねた。

セルロイドの歯のかけた櫛（くし）で髪をときつける。

髪は起きぬけのぼさぼさのまま

（寝相が悪い）いったいどういう寝方をするとそんな寝癖がつくのか

髪はライオンの毛のように、寝癖がついている。

寝不足の顔をし、生涯、ブラシをあてたことなどなさそうな、もじゃもじゃした髪の毛が、いっそう絡まり合い、こんがらがった汚い糸のようになってはいた

寝癖であちこち突っ立った剛毛

薄くなり始めた頭髪をカバーするかのように、頬から顎にかけて髭を長く垂らしている

銀のような白い髭

濃い髭の剃り跡の青々しさが何やら悲しい思いを誘う

毛穴の中にヒゲの種が埋まっている。

美しい茶褐色の髭

先の跳ね上がってるひげ

受け口で下顎が長く、それを隠すために山羊髭を蓄えて

ありもしない威厳を出そうと口のまわりに髭をたくわえ

思慮深そうな趣のある口髭

ひげの中でかすかに微笑（わら）いながら

豊かに両耳をおおう髪の毛

先が上方向と後ろ方向へ飛び散っている。鳥類を思わせた。

亜麻色の髪

（ポンパドール）今日の碧は、くるんとカールさせた前髪をアップにしている。ステージ上ではいつも、絶対に崩れまいとする前髪の下で息をひそめている額が、すうはあと思いきり呼吸をしているように見える。

寝不足の顔をし、生涯、ブラシをあてたことなどなさそうな、もじゃもじゃした髪の毛が、いっそう絡まり合い、こんがらがった汚い糸のようになってはいた