言葉を交わすこともなく別れた。 しばらくして振り返ってみると、宮本さんのお母さんがとにかく静かに、静かに、同じ速度で夜の中を歩いて行くのが見えた。私とすれちがったことなどわかっていないような静けさだった。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:31% 作品を確認(amazon)
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すれ違う
老人
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前後の文章を含んだ引用
......は、宮本さんにそっくりなやり方で、静かに頭を下げた。習慣的な、かすかな笑顔で。 真由が死んだころの母を思いださせる何かがあった。同じような硬さがあった。 そして言葉を交わすこともなく別れた。 しばらくして振り返ってみると、宮本さんのお母さんがとにかく静かに、静かに、同じ速度で夜の中を歩いて行くのが見えた。私とすれちがったことなどわかっていないような静けさだった。こんな時刻にどこに行くのか、私は知らない。家の中にさまよう過去の幽霊の面影からただ息をつめて逃げてきたのだろうか。 私は月と街灯と暗がりと横切る猫と住宅街の影の......
単語の意味
暫く・姑く・須臾(しばらく)
暫く・姑く・須臾・・・1.長いと感じるほどではないが、すぐともいえないほどの時間。ちょっとの間。一時的。
2.ちょっと待った!
2.ちょっと待った!
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すれ違うの表現・描写・類語(動作・仕草・クセのカテゴリ)の一覧 ランダム5
ランデ・ヴウの男女が燕のように閃いてすれ違う。
岡本かの子 / 巴里祭
車が通り過ぎる度、かすかな乱気流に右半身を吹かれ、サテン地のピンクのポロシャツがなびく。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
僕の肩をこすって行った。
芥川竜之介 / 歯車
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老人の表現・描写・類語(中年・老人のカテゴリ)の一覧 ランダム5
こんな若い人達ばかりの間に混って芝居なんかしているのが、気の毒に思えて仕方がなかった。
林芙美子 / 新版 放浪記
老いて憔悴 している
林芙美子 / 新版 放浪記
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「中年・老人」カテゴリからランダム5
白髪と、 頰骨のあたりの、生気のない老いた 皺 のある皮膚の色
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon
鏡に自分の顔が映ったのに気がついて、巻子の話す声に相槌を打ちながら近づいてって自分の顔をじっと見てみた。口元が、こんなにゆるかったか、と思うほどに何かが減っており、思わず顎から頬を手のひらで包むようにして持ち上げて、手を離す、持ち上げて手を離す、を繰り返してると、わたしは母の顔のことを思い出す
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
一緒に住んでいた頃に比べてしわが増えて、少し小さくなっていた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
彼はまだ六十四歳だったが、それよりはずっと年老いて見えた。誰かがうっかり間違えて、その男の人生のフィルムを先の方まで回してしまったみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
「動作・仕草・クセ」カテゴリからランダム5
私は絃のあぐらをかいた脚のなかにうしろむきで腰を下ろして、絃が手と足で作り出す空間にしっかりと収まる。絃の腕がうしろからまわってきて肩を抱くと、抱きしめられているというより、暖かい木枠のなかに収まった、という感じがする。ここが私の居場所。もし絃の心が冷めきっていたとしても、彼の身体はいつも温かい。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
餅を呑み込むように大きく頷いた。
獅子 文六 / てんやわんや amazon
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